テレビやニュース記事でよく耳にする「書類送検された」という言葉。ときに有名人の名前とともに報じられることもあり、インパクトのある言葉として目に留まります。しかし、「逮捕」とは違うようで、でも「罪に問われている」感じもあり…実際にはどんな意味なのでしょうか?
本記事では、書類送検の意味、法的な流れ、逮捕との違い、実際の事例、誤解されがちなポイントなどについて、できるだけわかりやすく解説します。
「書類送検(しょるいそうけん)」とは、警察などの捜査機関が捜査を終えた事件について、被疑者を逮捕せずに、事件に関する書類や証拠物件などを検察官に送致することを意味します。
刑事訴訟法第246条には以下のように記載されています。
「検察官は、犯罪があると思料するときは、犯人を検察庁に送致しなければならない。」
これは、逮捕の有無にかかわらず、犯罪の捜査を行った場合には、最終的に検察官にその事件を「送致」しなければならないという意味です。逮捕がない場合に送致される形を特に「書類送検」と呼んでいます。
「送検」という言葉自体は、「事件を検察へ送る」ことを意味します。
つまり、「書類送検」とは「身柄を拘束していないが、事件は検察に送った」という意味であり、法律用語としては「通常送致」「在宅送致」とも言われます。
以下は、逮捕されないまま捜査が進み、書類送検に至る一連の流れです。
項目 | 書類送検 | 逮捕 |
---|---|---|
拘束の有無 | 拘束なし(在宅) | 身柄を拘束(留置場等) |
強制力 | 基本的に任意 | 強制力あり |
社会的印象 | 比較的軽い | 重く報じられることが多い |
法的手続き | 任意で捜査を進めた後、送検 | 逮捕後、48時間以内に送検 |
逮捕された場合でも、その後不起訴になることはあります。同様に、書類送検された場合も、必ず起訴されるわけではありません。
書類送検が適用されるケースには、比較的軽微な犯罪や、逃亡・証拠隠滅の恐れがないと判断されたケースが多いです。
書類送検されたからといって、必ずしも裁判になるわけではありません。検察が起訴・不起訴を決めるため、ここから先の流れが重要です。
いいえ、書類送検=前科ではありません。
「前科」とは、「裁判で有罪判決を受けたこと」を指します。
有名人や社会的影響が大きい事件では、書類送検の段階でも報道されることが多いです。
これは、
という意味です。
報道されても不起訴になることも多く、「名前だけが世に出て風評被害が残る」ことも社会問題となっています。
観点 | メリット | デメリット |
社会的影響 | 逮捕よりも小さい | 報道されることもあり、名誉毀損の恐れ |
身柄拘束 | 拘束されず、生活への影響が少ない | 緊張状態が長引く可能性 |
手続きの簡易性 | 任意出頭で済む | 検察判断に時間がかかることも |
ある一般男性が自転車で歩行者と接触しケガをさせてしまった。誠実に対応し示談が成立したため、逮捕されず書類送検→不起訴となった。
微量の薬物を所持していたとして捜査されたが、逃亡の恐れなしとして逮捕されず、書類送検。その後、略式命令で罰金刑が科された。
誤解 | 実際のところ |
書類送検=逮捕された | 逮捕とは別。書類送検は逮捕されていないケースが多い。 |
書類送検されたら前科がつく | 起訴されて有罪にならない限り前科はつかない。 |
書類送検されたら絶対に裁判 | 検察が不起訴にするケースも多い。 |
報道された=罪が確定 | 裁判で確定しない限り「無罪推定の原則」が適用される。 |
もしあなたや身近な人が書類送検された場合、次のような対応が求められます。
刑事事件の経験がある弁護士に相談することで、不起訴や略式命令に持ち込める可能性が高まります。
特に人身事故や暴行などの場合、被害者との示談が成立すれば、不起訴となることもあります。
反省文の提出や再発防止教育を受けることも、検察官の心証に良い影響を与えます。
最後に要点をまとめます。
書類送検という言葉にはインパクトがありますが、必ずしも重罪というわけではありません。冷静に事実を見極め、必要に応じて弁護士など専門家の力を借りて対応することが大切です。