2026年3月、中東情勢の急激な悪化によって、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が大きなニュースになっています。原油価格の急騰、ガソリン価格の上昇、物流コストの増加などが連日報じられる中で、SNSや日常会話では
「トイレットペーパーは大丈夫なの?」 「トイレットペーパーの原料は石油なの?」
といった不安の声も聞かれるようになりました。
たしかに、オイルショックの記憶がある日本では、中東危機や石油不足という言葉を聞くと、トイレットペーパー不足を連想する人が少なくありません。2020年のコロナ禍でも、供給不安の噂からトイレットペーパーの買いだめが起きました。
しかし結論から言えば、
トイレットペーパーそのものの原料は石油ではありません。
トイレットペーパーの主な原料は紙、つまりパルプや古紙です。したがって、
「石油が止まる=トイレットペーパーの原料がなくなる」
という理解は正確ではありません。
ただし、ここで話が終わるわけではありません。トイレットペーパーは石油からできているわけではないものの、製造・包装・輸送の過程では石油価格の影響を受けます。つまり、
原料としてはほぼ無関係だが、コスト面では間接的に関係がある
というのが、最も正確な説明です。
この記事では、「トイレットペーパーの原料は石油なのか?」という疑問に答えながら、ホルムズ海峡危機とトイレットペーパー不足の不安がどう結びつくのかを、できるだけわかりやすく解説します。
最初に一番大事な点をはっきり書いておきます。
トイレットペーパーの主な原料は、次のようなものです。
つまり、トイレットペーパーは紙製品です。原料の中心はあくまで繊維質であり、石油を直接原料にしてロール状にしているわけではありません。
このため、
「トイレットペーパーの原料は石油」
という言い方は基本的に誤りです。
ここはまず、はっきり区別しておく必要があります。

原料が紙なのに、なぜ「トイレットペーパーと石油は関係がある」と思われやすいのでしょうか。
理由は大きく分けて4つあります。
1970年代のオイルショックの際、日本ではトイレットペーパーの買いだめが社会問題になりました。
このとき、多くの人の頭の中で
石油危機 = トイレットペーパー不足
という印象が強く残りました。
しかし、実際には「石油がトイレットペーパーの原料だからなくなった」というより、社会不安が連鎖して買いだめが起きた面が大きかったのです。
トイレットペーパーは紙そのものですが、外側の包装にはビニールやプラスチックフィルムが使われることが多いです。
この包装材は石油由来です。
そのため、
「商品全体としては石油と全く無関係ではない」
という印象が生まれます。
工場の機械を動かす電力、原料や製品を運ぶトラック、倉庫、配送センターなど、製造から販売までの仕組み全体ではエネルギーが必要です。
そのエネルギーコストは、原油価格の影響を受けます。
紙製品にはいろいろな種類があります。中には吸収材やフィルム、化学素材が多く使われる製品もあります。
そのため、トイレットペーパーも「石油製品に近いもの」と誤解されやすいのです。
トイレットペーパーの原料をもう少し具体的に見ると、主に次の2系統があります。
パルプは、木材を細かい繊維にほぐして作られる紙の原料です。新品のパルプから作られたトイレットペーパーは、やわらかく、白く、品質が安定しやすい傾向があります。
回収された紙を再利用して作る再生紙タイプのトイレットペーパーも多く流通しています。環境配慮型商品として選ばれることも多く、国内の古紙活用は日本の家庭紙生産にとって重要です。
つまり、トイレットペーパーの本体は
木材由来の繊維
をベースにした製品だと言えます。
ここに石油そのものが主原料として入っているわけではありません。

ここはとても大事なポイントです。
「トイレットペーパーの原料は石油ではない」と言うと、
「じゃあ石油危機とは完全に無関係なのですね」
と思われることがあります。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
正確には、
原料としては石油ではないが、製造コストや流通コストでは石油価格の影響を受ける
ということです。
たとえば次のような場面です。
このため、ホルムズ海峡危機のように原油価格が大きく上がると、トイレットペーパーにも値上がり圧力はかかります。
ただしそれは、
石油がないからトイレットペーパーが作れない
という意味ではありません。

それでは、今回のようにホルムズ海峡の事実上の封鎖が起きると、トイレットペーパーには何が起こりやすいのでしょうか。
最も現実的なのは次の3つです。
原油価格が上がると、物流費や包装材コスト、工場コストが上がりやすくなります。そのため、メーカーや小売が価格改定を検討する可能性があります。
つまり、最初に起きやすいのは
不足より値上がり
です。
もし消費者の不安が急速に広がれば、実際の供給力に問題がなくても、短期間に需要が集中して店頭の棚が薄くなることがあります。
これは2020年のコロナ禍でも起きた現象です。
最も危険なのはここです。
社会全体で「なくなるかもしれない」という心理が広がると、本来は足りるはずの供給でも一気に店頭から消えて見えます。
つまり、トイレットペーパー不足の最大の原因は、原料不足よりも
不安心理による需要の急増
になりやすいのです。
2020年には、「トイレットペーパーが中国から来なくなる」「紙が不足する」といった不正確な情報が広まり、日本各地で買い占めが起きました。
しかし実際には、日本のトイレットペーパーの多くは国内生産で、供給そのものが崩れたわけではありませんでした。
それでも棚が空になったのは、
という連鎖が起きたからです。
今回も、ホルムズ海峡封鎖そのものより、
そのニュースを見て人々がどう行動するか
のほうが、店頭在庫には大きく影響する可能性があります。
トイレットペーパーと似た不安は、ティッシュペーパーや紙おむつにも向きやすいです。
ただし、ここは少し整理が必要です。
ティッシュペーパーも基本は紙・パルプ製品なので、主原料は石油ではありません。ただし包装材や物流コストの影響は受けます。
これらは紙だけでなく、吸収ポリマー、不織布、フィルムなど、石油由来の化学素材がより多く使われます。
そのため、トイレットペーパーよりは石油との関係が強い製品と言えます。
つまり、同じ「紙っぽい日用品」でも、石油との距離はそれぞれ違うのです。
「トイレットペーパーの原料は石油?」という疑問に対して、消費者が覚えておくと良いポイントは次の通りです。
この4点を押さえておくと、不安なニュースを見たときも冷静に判断しやすくなります。
トイレットペーパーの原料は石油なのか、という問いに対する答えは、
「いいえ。主な原料は石油ではなく、パルプや古紙です」
となります。
したがって、ホルムズ海峡封鎖や石油危機が起きたからといって、
石油が原料だからトイレットペーパーが作れなくなる
という理解は正確ではありません。
ただし、トイレットペーパーは製造・包装・物流の段階で石油価格の影響を受けるため、危機が深まれば値上がり圧力は強まります。また、人々の不安が広がると買いだめが起き、一時的に棚が空になる可能性もあります。
つまり最も正確に言えば、
トイレットペーパーは石油製品ではないが、石油価格の影響を間接的に受ける商品
です。
ホルムズ海峡危機のニュースを見ると不安になりやすいですが、まず大切なのは、
「原料」と「コスト」と「買いだめ」を分けて考えること
です。そこを整理して理解するだけでも、過度な不安や誤解はかなり減らせるはずです。