宇宙空間はほぼ真空です。空気がほとんどないため、熱が伝わる代表的な方法のうち「伝導」や「対流」は、宇宙では基本的に使えません。それでも地球は、太陽から十分なエネルギーを受け取り、海や大気を温め、生命活動を支えています。
太陽の熱が地球に届く理由を考えてみましょう。
その鍵は、太陽が放つ**電磁波(光)による「放射」**です。言い換えると、太陽の「熱」は、空気のような媒質を必要としない形に変換されて地球へ運ばれ、地球側で再び「熱」として現れます。

日常では「熱いものが熱を持っている」「熱が移動する」と言いがちですが、物理ではより厳密に扱います。
つまり「太陽の熱が地球に届く」とは、
太陽から地球へ、エネルギーが移動している
という意味です。その移動を担うのが、次に述べる3つの伝わり方のうちの1つです。
熱の移動には、主に次の3つの方法があります。
宇宙空間はほぼ真空なので、
一方、
ここが決定的に重要です。

太陽は内部で核融合反応が進み、高温のガス(プラズマ)として強烈なエネルギーを生みます。その結果、太陽は電磁波を大量に放射します。
電磁波とは、たとえば次のようなものの総称です。
太陽から地球に届くエネルギーは、可視光と赤外線を中心とした電磁波で、媒質なしに宇宙を直進してきます。
太陽光が地球に届くまでの時間は約 8分20秒です(光速で約1天文単位を進むため)。この距離でも、放射ならエネルギーを運べます。
地球が受け取った電磁波は、地面・海・雲・大気などに当たります。ここで起こるのは大きく3つです。
このうち吸収が「温まる」ことにつながります。
電磁波を吸収すると、物質の内部で
結果として、物質の内部エネルギーが増え、温度が上がります。
たとえば黒い服が日なたで熱くなりやすいのは、黒色が光を反射しにくく吸収しやすいためです。
地球は太陽からエネルギーを受け取る一方で、温められた地球自身も赤外線(遠赤外線を含む)を宇宙へ放射しています。
ここで重要なのが、地球の温度が長期的に極端に変わりすぎない理由です。
この2つが、平均的にはおおむねつり合う方向に落ち着きます。これを地球のエネルギー収支と呼びます。
もし「入る量>出る量」が続けば、地球はさらに温まり、放射量も増えていきます。 逆に「入る量<出る量」が続けば、冷えて放射量が減っていきます。
このフィードバックによって、地球は一定の範囲の温度に保たれています(ただし、人間活動などによる要因で収支がずれると、気候は変化します)。

「太陽の熱が届く理由」は放射で説明できますが、地球の暖かさを理解するには大気も欠かせません。
地球が放射する赤外線の一部は、大気中の
などに吸収され、再びあらゆる方向へ放射されます。この働きがいわゆる温室効果です。
温室効果は「悪いもの」とだけ捉えられがちですが、自然の温室効果そのものは、地球が現在のように水を液体として保てることに関係する重要な仕組みです。

太陽から届くエネルギーは一定でも、地球上では場所やタイミングによって体感が大きく変わります。主な要因は次の通りです。
「夏が暑い」「砂漠が日中に熱い」「雪国は日が照っていても暖まりにくい」などは、これらの組み合わせで説明できます。
宇宙空間は確かに非常に低温に近い状態になりやすいですが(周囲の放射が少ないため)、それは「空気が冷たい」という意味ではありません。媒質がほぼないので、周囲と熱をやりとりしにくいのです。
しかし放射は真空でも進むため、太陽の電磁波は地球に届きます。
太陽は地球の火のように酸素を使って燃える「燃焼」ではありません。太陽の主なエネルギー源は核融合で、極めて高温・高密度の環境で進む反応です。
赤外線は吸収されると熱として感じやすい一方で、可視光も吸収されれば物質を温めます。要は、吸収された電磁波のエネルギーが、物質内部の運動に変わることが温度上昇につながります。
放射は、日常にもたくさんあります。
これらは「空気に触れていない面でも温まる」点が特徴で、真空でも成立するのが放射です。
太陽の熱が地球に届くのは、宇宙が真空に近くても進む 放射(電磁波) が、太陽から地球へエネルギーを運ぶからです。
この一連の流れを押さえると、「なぜ宇宙を越えて暖かさが届くのか」「なぜ場所や季節で暑さが違うのか」まで、筋道立てて理解できます。