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ユニバーサルデザイン・シャンプー

ユニバーサルデザイン・シャンプー

ユニバーサルデザイン・シャンプー

〜誰にでも迷わず・安心して使えるお風呂へ〜


はじめに

日々の入浴で欠かせないシャンプーとコンディショナー(リンス)。ところが、浴室は湯気や水しぶきで視界が悪く、誰にとっても「ボトルの取り違え」が起こりやすい環境です。視覚障害のある方やご高齢の方、小さなお子さまにとってはなおさら負担が大きくなります。

ユニバーサルデザインのシャンプーは、こうした課題を“触ってわかる工夫”で解決する日用品の代表例です。本記事では、仕組み・歴史的背景・導入メリット・選び方・家庭や施設での実践まで解説します。本文中には実物写真も挿入しています。


写真で見るユニバーサルデザインの要点

1) ポンプ天面の「3本線」

 

左=シャンプー(天面に3本線の突起)/右=コンディショナー(3本線の突起なし)。

天面の**3本線(突起)**は触覚だけでシャンプーを識別できるサインです。目を閉じても、泡がついても、照明が暗くても、手触りで即判別できます。

2) ボトル側面の凹凸

シャンプー側面

左=シャンプー(側面に10本の井横線の突起)/右=コンディショナー(横線の突起なし)。

左ボトルの側面に縦の凹凸(リブ)。握った瞬間に違いが伝わります。またこのメーカーさんのポンプはシャンプーとリンスで高さがかなり違います。

3) ポンプ形状そのものの差

左=広い天面のシャンプーポンプ/右=細長い注出口のコンディショナー。形の違いで迷いを減らします。


ユニバーサルデザイン(UD)とは

ユニバーサルデザインは「年齢・能力・状況に関係なく、できるだけ多くの人が最初から使いやすいデザイン」を目指す考え方です。アクセシビリティ(後から配慮を追加する発想)と違い、最初から“みんな”を前提に設計するのが特徴です。

シャンプーにUDが必要な理由

  • 🫧 浴室は視認性が低い:曇り、湯気、石鹸カスでラベルが見えにくい。
  • 🧴 ボトルが似ている:同ブランドのシャンプー/コンディショナーは形・色が近いことが多い。
  • 👀 視覚情報に頼れない瞬間がある:目に泡が入った時や、暗い浴室でも安全に使いたい。
  • 👵 加齢や病気で視力・握力が変化:誰もが一生のうちに経験しうる変化です。

仕組みの詳解:触覚で「間違えない」設計

触覚サインの代表例

  • ポンプ天面の3本線(シャンプー)
  • 天面に突起なし(コンディショナー)
  • 側面の縦リブドット(握ったときの触覚差)
  • ポンプの形状差(広い天面 vs 細長い注出口など)

重要なのは「一貫性」。家庭内・施設内で“シャンプー=3本線”などのルールを統一すると、迷いが劇的に減ります。

触覚サインが便利なシーン

  • 目を閉じて髪をすすいでいる最中
  • シャンプーが目に入って痛いとき
  • メガネを外して入浴している方
  • 低照度の浴室(夜間・省エネ照明)
  • 子どもが自分で洗髪に挑戦するとき

設計のコツ(メーカー視点)

  • 触覚のコントラスト:突起高さ・数・ピッチを明確に差別化する。
  • 濡れた手でもわかる摩擦:滑りにくいマット調やサテン調の仕上げ。
  • 詰め替えやすさ:ねじ径やポンプストロークは軽すぎず重すぎず。
  • 視覚補助の併用:色、アイコン、文字サイズの拡大も有効(多様な利用者に合わせて多層化)。

歴史・普及の背景

日本では2000年代以降、日用品分野で触覚識別の取り組みが広がり、シャンプー=天面に3本線という共通ルールが多くの国産ブランドで定着しました。高齢化社会への対応、公共の場での事故防止、誰もが安全に使える浴室環境づくりが、普及を後押ししてきました。

開発秘話:一つの声から始まった物語

「シャンプーの3本線」が生まれた背景には、消費者の声と、それに応えようとした人々の熱い思いがあります。

  • 始まりは消費者からの電話: 1980年代後半、ある大手メーカーの消費者相談窓口に、視覚に障がいのある方から「シャンプーとリンスを間違えてしまう。何とか工夫してほしい」という声が届き始めました。当初は年間数件の小さな声でしたが、メーカーはその声に真摯に向き合いました。
  • 試行錯誤と調査の繰り返し: 開発チームは、盲学校を訪問して視覚障がいのある人たちがどのようにボトルを識別しているかを調査しました。輪ゴムを巻いたり、点字シールを貼ったり、各自でさまざまな工夫をしていることが分かりました。そして、彼らが最も頼りにしているのが「触覚」であることを確信します。
  • デザインを業界標準へ: 試作品が完成した後、開発チームは「このデザインを自分たちだけのものにしてはいけない」と考えました。シャンプーの3本線というルールがバラバラだと、消費者がかえって混乱してしまうからです。そこで、特許や実用新案を無料で公開し、同業他社にもこのデザインの採用を呼びかけました。この異例の行動が、現在の「共通ルール」を生み出すきっかけとなったのです。

 進化するユニバーサルデザイン:シャンプーからさらに広がる配慮

シャンプーの3本線は、日本のユニバーサルデザインの始まりに過ぎません。この成功が、他の製品にも影響を与え、私たちの身の回りのデザインを静かに変え続けています。

  • ボディソープの「1本線」: シャンプーとリンスに加えて、ボディソープが広く使われるようになったことで、新たな混乱が生まれました。そこで、ボディソープのボトルには**「1本線」**の触覚サインを付けることが業界内で合意されました。
  • 詰め替えパックへの展開: 環境への配慮から詰め替えパックが普及すると、今度は「中身を間違えてボトルに入れてしまった」という問題が浮上しました。これに対応するため、詰め替えパックの右上隅などに、シャンプー用には凹みや突起を付けるといった工夫が広まっています。
  • 国際的な評価: シャンプーの触覚識別表示は、日本の取り組みが評価され、2011年に**ISO(国際標準化機構)**の規格にも採用されました。これは、日本発のユニバーサルデザインが世界に認められた証であり、私たちの暮らしの工夫がグローバルスタンダードになった誇るべき事例です。

ユニバーサルデザインのシャンプーは海外にもあるの?

日本のメーカーが始めたシャンプーのユニバーサルデザインは、世界に広がりつつありますが、国や地域によって普及状況に差があります。

海外における普及状況

  • 広がり始めた共通ルール:シャンプーの天面にある3本線という触覚サインは、日本発祥のデザインとして、ISO(国際標準化機構)の規格にも採用されました。これにより、国際的なガイドラインとなり、徐々に海外のメーカーにも採用される例が増えています。
  • 各国の独自のアプローチ:すべての国で日本の3本線が標準になっているわけではありません。欧米のメーカーなどでは、ボトルの形状そのものを大きく変えたり、色やイラストをより明確にしたりする独自のアプローチが見られます。たとえば、ボトルを握ったときの感触の違い(側面のリブなど)で識別する製品は、比較的多くの国で見られます。
  • 統一ルールの課題:日本のようにメーカーの垣根を越えて共通の触覚サインが定着している国は、まだ少数です。海外の多くの地域では、ユニバーサルデザインの取り組みは個々の企業に委ねられているため、ブランドによってデザインがバラバラで、消費者が混乱する可能性があります。

海外で普及を後押しする要因と課題

普及を後押ししているのは、グローバルな市場での競争や、企業の社会的責任(CSR)への意識の高まりです。ユニバーサルデザインの製品は、視覚障がいのある方だけでなく、多様な消費者層にアピールできるため、国際的なブランドにとって重要な差別化要因となっています。

一方で、課題としては、文化や市場の違いが挙げられます。例えば、シャンプーやボディソープの種類が多い国では、単純な「3本線」や「1本線」だけでは識別が難しくなる場合もあります。また、開発コストや金型変更の負担も、普及の障壁となることがあります。

日本のシャンプーにみられる統一された触覚サインは、日本のメーカーが協調して社会的な課題に取り組んだ独自の成功例であり、その精神が国際的に評価され、少しずつ世界に広がりつつある状況と言えます。


家庭ですぐできる実践アイデア

  • 🏷️ ラベルに頼らない配置:シャンプーは常に“手前・右”など、置き場所を固定。
  • 🔘 触覚シールの活用:100円ショップの半球シールや点字シールを天面に貼る。
  • 🧴 色での補助:ポンプカラーを変える、ボトルバンドを付ける。
  • ♻️ 詰め替え時のルール化:詰め替え後“必ず触って確認する”を家族共通の合図に。
  • 🧼 滑り止め対策:ボトル底に滑り止めパッドを貼り、落下事故を防ぐ。

失敗しがちなポイント

  • 触覚サインが小さすぎる/浅すぎる
  • 家族内でサインの意味が統一されていない
  • 詰め替え時に別商品の中身を入れてしまう(ラベルだけで判断しない)。

施設・ホテル・介護の現場での導入ポイント

  • 🧳 ブランドを統一:同一シリーズで触覚ルールを揃えると事故率が下がります。
  • 🚿 浴室内の表示:シャワー壁面に“シャンプー=3本線”の掲示を小さく設置。
  • 🧑‍🦽 多言語+ピクトグラム:外国人利用者・文字読字が難しい方にも届く配慮。
  • 🧯 衛生・詰め替え管理:ロット・日付管理、吐出量の定期点検をルーチン化。

よくある質問(Q&A)

Q1. 3本線は決まりですか?
A. 厳密な“法律の義務”ではなく、広く採用されている共通ルールです。メーカーや製品によっては別の触覚サインを採る場合もあります。家庭・施設内でルールを一本化することが重要です。

Q2. DIYで触覚サインを追加しても良いですか?
A. 可能です。半球シールや点字用シール、グルーガンの盛りなどで天面に3点以上の突起を作ると効果的です。剥がれやすい素材は衛生面に注意してください。

Q3. 色の違いだけでは不十分?
A. 浴室は低照度・曇りで色の識別が難しくなるため、触覚サインの併用が望ましいです。

Q4. 子どもにはどんな教え方が良い?
A. 「3本線=シャンプー」と短い合言葉で覚えましょう。お風呂の前に目を閉じて触って当てる“練習”も有効です。

Q5. 詰め替えパックの中身を間違えないコツは?
A. 開封前に大きな文字で油性ペンを書き、詰め替え後に触って最終確認をする二重チェックが安心です。


さらに深く:人間工学・認知の観点

  • 多重手がかり(触覚・形状・色・文字)を組み合わせるほど、誤操作率は下がります。
  • 記憶より知覚:入浴時は注意資源が分散。覚えるより“触れば自動でわかる”設計が強い味方になります。
  • 学習容易性:3本線のような“単純・一貫”の符号は、一度覚えると忘れにくいという利点があります。

まとめ

ユニバーサルデザイン・シャンプーは、視力や年齢に関係なく誰もが迷わず安全に使えることを目指したデザインです。天面の3本線、側面の凹凸、ポンプ形状の差といった触覚の工夫が、毎日の入浴体験を快適に変えます。ご家庭でも施設でも、ルールの一貫性触覚サインの明瞭さを意識して導入すれば、取り違えは大幅に減らせます。


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