みなさんは「遺伝子」や「DNA」という言葉を聞いたことがありますか?中学校3年生では、生物の体のしくみや遺伝の仕組みについて学び始める時期です。今回は、そんな「遺伝子」や「DNA」に関する最新の研究成果や、そのすごさについて、わかりやすく紹介していきます。
DNA(ディー・エヌ・エー)は、「デオキシリボ核酸」という物質の略です。生き物の体のすべての情報が、この細い長い物質の中に書き込まれています。人間はもちろん、犬や猫、植物や細菌にいたるまで、すべての生き物がDNAを持っています。
DNAの中には、「遺伝子(gene)」と呼ばれる部分があります。これは、体のある部分を作るための「設計図」のようなもので、たとえば「目の色」や「身長の高さ」、「血液型」などが、この設計図に従って決まるのです。
DNAが重要なものであるとわかったのは、20世紀の半ばです。
DNAの研究が進むことで、いろいろな病気の原因が「遺伝子の異常」から来ていることがわかってきました。
たとえば、ダウン症や筋ジストロフィーなどの遺伝病は、生まれつき特定の遺伝子に変化があることで起こります。今では赤ちゃんが生まれる前に、このような病気の可能性を検査できる技術も開発されています。
がんの中には、ある特定の遺伝子が突然変異することで発生するタイプもあります。自分のDNAを調べて、その変異があるかどうかを知ることで、がんになる前に対策を取ることができるようになってきました。
テレビドラマでもよく見かける「DNA鑑定」。これは、犯人が現場に残した髪の毛や血液などからDNAを取り出し、誰のものかを特定する方法です。
たった一本の髪の毛からでも、DNAは取り出せるんです。科学の力ってすごいですよね。
DNAのしくみを知ることで、人間にとって便利な農作物や家畜を作り出すことも可能になっています。
いくつかのイチゴの品種をかけ合わせて、より甘くて大きな実がなるような品種改良が行われています。どの遺伝子が「甘さ」や「色」に関係しているかを調べることで、効率よく品種を作れるようになっています。
日本では毎年台風や大雨がありますよね。そうした自然の変化にも負けないような、病気や天候に強いお米の品種も、DNAを使って開発されています。
最近では、マンモスやドードーなど、昔絶滅してしまった動物のDNAを復元しようとする研究も進んでいます。
たとえば:
これはまだ途中段階ですが、まるで映画の『ジュラシック・パーク』のようですね。
自分のDNAを調べることで、どこの国や地域の先祖がいるのかがわかる「遺伝子検査キット」が一般の人にも人気になっています。
たとえば:
これは「パーソナル・ゲノム解析」と呼ばれ、研究以外にも楽しみとして使われることも増えています。
DNAを研究することで、なんと「遺伝子を変える」ことすら可能になってきました。それが「ゲノム編集」と呼ばれる技術です。
しかし、命に関わる部分を人が自由に変えてよいのか?という「倫理(りんり)」の問題もあります。
簡単に言えば、「やっていいことか、いけないことか」を考えることです。科学の進歩と同時に、私たち人間がどう向き合うかが大切になります。
遺伝子やDNAに関する研究は、今も日々進化しています。そしてそれは、医療・農業・科学・社会と、私たちの生活すべてに関わってきます。
中学生の今は、「DNA」や「遺伝子」という言葉を覚えるだけかもしれません。でも、もしかしたら将来、みなさんの中から新しいDNAの研究者が生まれて、世界を救う発見をするかもしれませんよ!
今回は遺伝子やDNAに関する研究成果についてのお話しでした。
将来、みなさんが生きる世界では、DNA研究によって、今では考えられないようなことが当たり前になっているかもしれません。科学の面白さを、これからもぜひ楽しんで学んでくださいね!
DNAや遺伝子の世界は、まだまだ不思議と驚きでいっぱいです。ここでは、知っているとちょっと自慢できるかもしれない、トリビアを10個紹介します。
私たち1人ひとりの体の中には、約37兆個の細胞があります。もし、そのすべての細胞からDNAを取り出してつなげたら、なんと約200億kmにもなります。これは、地球を太陽まで約67回往復できる距離に匹敵します。たった1つの細胞に、2mほどの長さのDNAがぎっしり詰まっているなんて、驚きですよね。
人間と最も近いと言われるチンパンジー。体のつくりや行動は違いますが、実はDNAの98%以上が人間と同じです。このわずか数%の違いが、人間を人間たらしめている「知能」や「言語能力」などを生み出していると考えられています。
日本人のルーツを辿ると、古代のモンゴロイドにたどり着くと言われています。実は、このモンゴロイドは、アメリカ大陸の先住民とも共通のDNAを持っています。氷河期にシベリアからベーリング海峡を渡って、アメリカ大陸へ移動した人々の名残だと考えられています。
私たちのDNAは、両親から半分ずつ受け継ぎます。しかし、細胞の中には「ミトコンドリアDNA」という、お母さんからしか受け継がれないDNAも存在します。このため、母方の家系をたどるのに使われることがあります。
DNAは非常に安定した物質です。そのため、何千年もの間、形を保つことができます。エジプトのミイラや、シベリアの永久凍土から発見されたマンモスの骨からでもDNAを抽出できるのは、このためです。
DNAはマイナスの電気を帯びています。この性質を利用して、DNAを電気の力で移動させる「電気泳動」という技術が、DNAのサイズを調べたり、特定のDNAを分離したりするのに使われます。
かつては「1つの遺伝子は1つのタンパク質を作る」と考えられていました。しかし、最新の研究では、1つの遺伝子が複数のタンパク質を作ったり、タンパク質以外の機能を持っていたりすることがわかってきています。遺伝子の働きは、私たちが思っているよりもずっと複雑で奥が深いのです。
私たちの体は、ウイルスや細菌などの異物が侵入すると、免疫細胞がそれを攻撃して守ってくれます。この時、免疫細胞は異物のDNAを分析し、どんな敵かを認識します。DNAは、私たちの体を守るための、まるでセキュリティコードのような役割も果たしているのです。
すべての生き物はDNAを持つと紹介しましたが、例外もあります。たとえば、インフルエンザウイルスやノロウイルスなど、一部のウイルスはDNAの代わりに「RNA(リボ核酸)」という物質を遺伝情報として持っています。
「病気になる遺伝子」や「才能がある遺伝子」といった表現を耳にすることがありますが、遺伝子そのものに良い・悪いという区別はありません。遺伝子は、あくまで体の設計図。その設計図が、どのような環境でどのように使われるかによって、体の特徴や能力が決まります。遺伝子は、単なる可能性のスイッチにすぎないのです。