二次関数・身近な例
二次関数( y = a x^2 + b x + c )は、グラフが放物線になる関数です。頂点(いちばん高い/低い点)、軸(左右対称の線)、開きの向き( a>0 なら上に開く、 a<0 なら下に開く)が特徴。頂点の x 座標は -b/(2a)。最大値・最小値や最適解を一発で見つけられるのが強みです。ここでは、学校の外でも役に立つ「二次関数=放物線」の実例と、すぐ試せる観察・ミニ実験、なぜ二次になるのかの直感まで、ギュッとまとめます。
1) 投げたボール/噴水の水の軌道(放物運動)🎯

- 現象:ボールを投げる、ホースの水を斜めに噴くと、軌道は放物線になります。
- モデル:水平距離を x、高さを y とすると y = -( g / ( 2 v0^2 cos(θ)^2 ) ) x^2 + x tan(θ) + h (初速 v0、角度 θ、初期高さ h、重力加速度 g)
- 直感:横方向は等速、縦方向は等加速度(重力)→合体すると二次。
- ミニ実験:スマホのスロー撮影で軌跡をフレームごとに点取り→近似放物線を描く。
2) 自転車・車の制動距離は速度の二乗にほぼ比例 🚲🚗
- 現象:同じ路面・ブレーキ条件では、止まるまでの距離 d は速度 v の二乗で増えます(空走距離は別)。 d ∝ v^2
- 直感:運動エネルギー (1/2) m v^2 を摩擦の仕事で吸収するから。
- 注意:実際は路面や ABS 作動でズレますが、目安として「速度2倍で停止距離は4倍」は覚えやすい。
3) 価格と売上:収益関数は二次になることが多い 💹
- 設定:需要が「価格を上げると直線的に減る」なら q(p) = A – B p。 収益 R(p) = p × q(p) = – B p^2 + A p → 下に開く放物線。
- 使いどころ:頂点 p* = A/(2B) が 売上最大の価格。
- メモ:原価や固定費を入れると「利益」も二次で近似でき、最適価格が同様に求まります。
4) 周の長さが一定の長方形:面積は二次関数で最大が出る 📦
- 設定:周長 L 固定、片辺を x とすると他方は L/2 – x。 面積 A(x) = x (L/2 – x) = -x^2 + (L/2) x(下に開く放物線)
- 結論:頂点で最大 → 正方形が面積最大。
- 身近さ:紐やテープで囲う花壇・掲示スペースを最大化したいときの設計原理。
5) 正方形や円の「面積」は辺長や半径の二乗 📐
- 例:正方形 A = s^2、円 A = π r^2。
- 直感:長さスケールが2Dに広がるから二乗。拡大縮小の感覚に直結。
6) パラボラアンテナ・懐中電灯反射板・集音マイク🔦📡

- 現象:断面が放物線だと、平行光(電波・音)を焦点に集めたり、焦点からの光を平行に反射できる。
- 二次の役割:放物線の反射特性が要。設計図面は y = a x^2 型が基本。
7) 噴水の到達距離と高さの関係(最適角度は45°)💦
- 現象:同じ初速なら、到達水平距離(射程)は角度 θ の関数で R(θ) = ( v0^2 / g ) × sin(2θ) 近くで見ると二次近似でも扱えるし、θ = 45° で最大。
- 直感:上に投げすぎても横に投げすぎても距離が縮む=頂点で最大という二次的発想。
8) スポーツの弾道設計(サッカーのロングキック、テニスのロブ)⚽🎾
- 現象:空気抵抗を無視すると放物線。
- 応用:最小限の頂点情報(高さ・位置)から、必要な初速や角度を逆算する発想は二次関数の得意技。
9) カーテンのたわみ・ホースのたるみ(近似としての二次)🪟
- 厳密:つり下がり線は「カテナリー(双曲線関数型)」ですが、中央付近の小区間は放物線で近似できます。
- ポイント:多くの物理カーブは「頂点近くは二次近似が効く」。工学の基本テクニックです。
10) 調味料の入れ過ぎ問題=満足度の二次近似 🍳
- 現象:塩や砂糖は「少なすぎ×/ちょうど良い◎/多すぎ×」。
- モデル:満足度 S(x) は「ちょうど良い量」を頂点に下に開く二次関数で近似できる。
- 示唆:頂点位置=ベストの分量、左右に外れるほど満足度が落ちる度合いも“二次的”に大きく。
11) カメラの高さと撮影できる見おろし面積(俯瞰)📷
- 現象:高さを h とすると、一定の画角なら見える地面の面積は概ね h^2 に比例。
- 直感:遠くなるほど一辺が比例して伸び、面積は二乗で増える。
12) 折り紙の切り取り最適化🧩
- 設定:縦 L の帯から幅 x を切り取って別用途に回すと、残りの面積は A(x) = -x^2 + L x(=二次)
- 応用:切る幅の最適化・ロス最小化を「頂点」で判断。
なぜ「二次」になるの?——3つの直感キー
- 等加速度(重力・摩擦仕事)→ 位置や距離が時間や速度の二乗で決まる。
- 面積・エネルギーのように「二次元的に広がる量」は二乗で表れやすい。
- 最適化:左右に外れると損失が増える現象は、頂点を境に上下が対称な“放物線の形”がフィットしやすい。
受験でも仕事でも効く「二次関数の基本ワザ」
- 平方完成(頂点を出す): y = a x^2 + b x + c = a ( x + b/(2a) )^2 – ( b^2 – 4ac ) / (4a) → 頂点の座標は ( -b/(2a), – ( b^2 – 4ac ) / (4a) )
- 軸:x = -b/(2a)(ここを境に左右対称)
- 増減:a>0 なら最小値を頂点で取り、a<0 なら最大値を頂点で取る。
- 交点:y=0 の解は二次方程式。判別式 D = b^2 – 4ac で解の個数が決まる。
今日からできる観察・ミニ実験(安全最優先で)
- スロー動画で放物線:紙ボールを軽く投げ、フレームごとに座標を取り、近似式を作る。
- 価格と注文数の仮データを作って R(p) を二次で描き、頂点価格を読む。
- 折り紙の最適切り取り:式 A(x) = -x^2 + L x をグラフにし、最大面積の x を確かめる。
- (自転車は歩道で低速・安全に)速度と停止距離の感覚を確認:速度アップで距離が急増することを体で覚える。
まとめ
二次関数は「等加速度・面積(エネルギー)・最適化」の3ワードで覚えると、身の回りの現象が放物線に見えてきます。投げたボールの軌道、止まる距離、アンテナやライトの形、価格設定や切り取りの最適化まで——“頂点を読む”だけで最良解に近づけるのが、二次関数の最大の武器です。日常の“曲線”を見つけたら、「これ、二次で近似できるかな?」と考えてみてください。きっと数学が、ぐっと実用的に感じられます。