私たちが安心して暮らすために、「人権(じんけん)」はとても大切なものです。人権とは、人間が生まれながらにもっている「自由」や「幸せになる権利」のことです。
しかし、時代が進み、社会や生活のかたちが変わってくると、昔からある人権だけでは守りきれない問題も出てくるようになりました。たとえば、プライバシーの問題や、きれいな環境で暮らす権利など、昔は考えられなかったような新しい問題が出てきたのです。
こうした背景から登場したのが「新しい人権」です✨ これは法律や社会が変化に合わせて私たちの生活を守るために必要とされた新たな人権の形です。
「新しい人権」は、もともと憲法に書かれていなかったり、はっきりとした形では定められていなかった権利のことです。では、なぜこのような新しい人権が認められようになった、あるいは必要とされるようになったのでしょうか?
時代の変化によって生まれた問題は、従来の人権の枠組みでは十分に対応しきれないことが多くなってきました。以下で、新しい人権が認められるようになった主な理由をくわしく見ていきましょう。
昔はなかったインターネットやSNS、監視カメラ、顔認証などが使われるようになり、個人のプライバシーが簡単にさらされてしまう時代になりました。個人情報が知らないうちに使われたり、盗まれたりする問題も増えています。
➡️ だからこそ、「プライバシーの権利」などが重要になりました。たとえば、スマートフォンに記録された位置情報や会話の履歴が、知らないうちに収集されていることがあります。また、ネット上に一度公開された写真や投稿が、長く残ってしまうリスクもあります。
産業の発展や車の増加などにより、大気汚染や地球温暖化などの環境問題が深刻になってきました。安心して空気や水を使い、自然の中で暮らしていくためには、新しい形の権利が必要です。
➡️ 「環境権」が注目されるようになったのです。たとえば、騒音や悪臭などに悩まされている地域では、住民が行政に対して改善を求める運動が起きています。環境アセスメントという制度を使って、大きな工場や建物を建てるときに、周囲への影響を調べることも大切です。
女性や高齢者、障がいのある人、外国から来た人など、さまざまな立場の人たちが共に生きる社会になってきました。それぞれが差別なく生活できるように、新たな人権が求められるようになったのです。
➡️ 「知る権利」「自己決定権」「アクセス権」などが必要とされます。マイノリティの立場にある人たちが自分の意見を表明したり、社会に参加したりするための支援が求められています。また、ジェンダー平等や外国籍の人々への配慮、多文化共生といったテーマも、この中に含まれます。
新しい人権の種類にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここからは、「新しい人権」とされている具体的な例を紹介していきます。それぞれの権利が、どのような背景で生まれ、どんな意味を持つのかをていねいに見ていきましょう✨
また、これらの人権は、情報社会、環境問題、多様性、個人の尊重といったテーマに分けて分類することもできます。
📌 他人に知られたくないことを守る権利
この権利は、日常生活のさまざまな場面でとても重要になっています。たとえば、スマートフォンやパソコンの中には、自分の写真や会話、検索履歴など多くの情報が記録されています。これらが無断で利用されたり公開されたりすると、大きなトラブルになることがあります。
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📌 きれいな空気や水、自然に囲まれた環境の中で、健康的に暮らす権利
現代の社会では、工場から出る煙や車の排気ガス、さらにはごみの増加などが環境に大きな影響を与えています。特に都市部では、大気汚染や騒音、光害(こうがい)などに悩まされる人も多くなっています。
環境権とは、こうした悪影響から自分の健康や暮らしを守るために必要な権利です。この権利が認められることで、地域住民が工場や開発に反対したり、行政に対して改善を求めたりすることが可能になります。
🌟 関連例:
📌 政府や行政、企業などが行っていることについて、正しい情報を知る権利
私たちが社会の中で正しい判断をするためには、事実に基づいた情報が必要です。政治や災害、経済、教育など、暮らしに関係する重要な情報を得ることができるのは、この「知る権利」によるものです。
この権利は報道の自由とも関係があり、情報公開制度などを通じて、国民が情報にアクセスする仕組みがつくられています。
🌟 関連例:
📌 情報を受け取るだけでなく、自分の意見を社会に発信する権利
インターネットやSNSの発達により、誰でも自分の意見を多くの人に届けることができるようになりました。しかし、テレビや新聞などの伝統的なメディアでは、一般の人の声が取り上げられにくいこともあります。
アクセス権は、自分の考えを表現するチャンスを公平に得るための権利です。とくに、政治や社会問題について発言する場をもつことは、民主主義にとっても重要です。
🌟 関連例:
📌 自分の体や人生にかかわることを、自分で決める権利
誰かに強制されたり勝手に決められたりするのではなく、自分の考えに基づいて行動を選ぶことができるのが「自己決定権」です。特に医療や福祉の分野では、この権利がとても重視されています。
自分の体についての治療や、どのような生き方をしたいかを本人が選ぶことは、人としての尊厳を守ることにもつながります。
🌟 関連例:
📌 成長と発達に必要な保護や教育を受けることができる権利
子どもは身体的にも精神的にも未熟であるため、大人と同じように扱うだけでは十分に権利が守られません。そのため、特別な保護が必要だという考えから「子どもの権利条約」が国連で定められました。
この条約では、教育、医療、生活環境、意見表明の機会など、子どもが健やかに育つために必要な要素が保障されています。
🌟 関連例:
📌 障がいのある人もない人も、平等に生活し参加できる社会を目指す権利
バリアフリーとは、建物や交通機関、情報などの面で障がいのある人の不便をなくし、誰もが暮らしやすくする工夫のことです。ノーマライゼーションは、障がいがあっても社会の中でふつうに暮らせることを目指す考え方です。
この権利が保障されることで、社会の多様性を認める土台ができます。
🌟 関連例:
📌 自分の性別や好きになる相手の性にかかわらず、自分らしく生きることを認められる権利
性のあり方は一人ひとり異なります。自分の性別に違和感をもつ人や、同性を好きになる人もいます。そうした人々が差別や偏見を受けることなく暮らしていけるようにするのが、この人権の目的です。
🌟 関連例:
📌 年をとっても社会の一員として尊重され、安心して暮らす権利
日本は高齢化が進んでおり、今後ますますこの人権の重要性が増していきます。年齢による差別(エイジズム)をなくし、身体的に衰えても安心して生活できる社会をつくる必要があります。
🌟 関連例:
📌 ネット上でも現実社会と同じように人権が守られるべきという考え方
インターネットは便利で情報の宝庫ですが、その一方で誹謗中傷やデマ、個人情報の流出などの問題もあります。現実の世界と同じように、ネットの中でも他人の権利を尊重し、自分の権利も守ることが求められています。
🌟 関連例:
🔍 「新しい人権」は、科学技術の進歩や社会の多様化、環境問題の深刻化など、現代ならではの課題に対応するために生まれた新しいかたちの人権です。
🔑 これらの権利は、ただ新しいだけでなく、私たちが未来に向けてよりよい社会をつくるためのヒントにもなります。
🌱 これらの人権を正しく理解し、尊重することは、私たち一人ひとりの行動にもつながっていきます。誰かの権利を守ることは、結果的に自分自身の権利も守ることにつながるのです。
🌈 未来の社会をよりよくしていくために、これからも「新しい人権」について関心をもち、学び、実践していきましょう。