一次関数は、ものごとの「増え方・減り方」が一定のときに使える、とても扱いやすい道具である。式の形は y = ax + b
。ここで、x
は原因や入力、y
は結果や出力、a
は 1 増やすごとの増え方(傾き、変化の割合)、b
はスタートの値(切片)を表す。比例は b = 0
の特別な一次関数にあたる。
この文章では、身の回りの事例だけに絞って、一次関数をどう見つけ、どう使うかを整理する。現実の料金や制度は段階制・上限・割引などが入り込み、完全な一次関数にならないことも多いが、一定の範囲を切り出せば一次関数で近似できることが多い。そうした「近似のコツ」もあわせて紹介する。📊🔎💡
y = ax + b
a
(傾き)… x を 1 増やしたとき、y がどれだけ変わるか。単位は「y の単位 / x の単位」。b
(切片)… x = 0 のときの y。スタート値、固定費、初期量などとして解釈できる。y = ax
(b = 0
)。スタート値・固定費がない場面にあたる。a > 0
なら右上がり、a < 0
なら右下がり。b
は y 軸と交わる高さ。見つけ方の合言葉は「1 つ増やすと、いくつ増える?」と「0 のとき、いくつ?」📐🧮✨
以下では、それぞれに「式」「変数の意味」「a と b の解釈」「ミニ計算例」を付ける。💡📊🔢
金額 y = 単価 p × 個数 x + 送料 b
a = p
(1 個増えるごとに p 円増える)、b
は送料などの固定費。y = 350×3 + 500 = 1,550 円
。料金 y = 初乗り b + 加算単価 a × 走行距離 x
b
は初乗り、a
は 1 km あたりの加算額(近似)。y = 500 + 200×3 = 1,100 円
。料金 y = 基本料金 b + 1 時間あたり a × 利用時間 x
b
が小さく(ときに負に)なる。y = 100 + 200×2.5 = 600 円
。料金 y = 基本料 b + 1GB あたり a × 追加量 x
y = 2,000 + 500×3 = 3,500 円
。料金 y = 基本 b + 単価 a × 使用量 x(kWh)
y = 1,000 + 30×150 = 5,500 円
。料金 y = 基本 b + a × 使用水量 x(m³)
y = 1,000 + 150×10 = 2,500 円
。距離 y = 速度 v × 時間 x
(比例)b = 0
の一次関数。y = 4×0.75 = 3 km
。費用 y =(1/燃費)× ガソリン単価 × 距離 x + 駐車場の定額 b
b
に含められる。a = (1/15)×170 ≈ 11.33 円/km
、y ≈ 11.33×90 + 600 ≈ 1,619 円
。受取額 y = レート a × 両替額 x − 手数料 b
y = 150×1000 − 500
。費用 y = セットアップ費 b + a × 枚数 x
y = 1,200 + 8×80 = 1,840 円
。重さ y = 1 杯あたり a × 杯数 x
(比例)y = 12×2.5 = 30 g
。華氏 y = 1.8 × 摂氏 x + 32
a = 1.8
、b = 32
。y = 1.8×25 + 32 = 77 ℉
。総時間 y = 平均作業時間 a × 件数 x + 準備時間 b
y = 12×5 + 20 = 80 分
。ポイント y = 還元率 a × 利用額 x + ボーナス b
b
が正に。y = 0.01×10000 + 500 = 600P
。単価 1,280 円の本を x 冊、送料は 450 円固定。合計金額 y を一次関数で表し、5 冊のときの金額を求める。
y = 1280x + 450
x = 5
→ y = 1280×5 + 450 = 6,850 円
a = 1280
は 1 冊ふえるごとの増加分、b = 450
は送料。一定の速さ v = 4.5 km/h で x 時間歩く。距離 y を求め、1 時間 20 分歩いたときの距離を計算。
y = 4.5x
y = 4.5×(4/3) = 6 km
b = 0
)。傾きは速度そのもの。基本 200 円、1 時間あたり 180 円、2 時間無料の割引券(−360 円相当)を 1 枚使う。x 時間駐車の費用 y を表し、3 時間のときの金額を求める。
y = 180x + 200 − 360 = 180x − 160
x = 3
→ y = 180×3 − 160 = 380 円
y = 420x + 300
、x = 7
→ y = 3,240 円
。y = (175/14) x ≈ 12.5x
(円)。y = 12x + 800
、x = 150
→ y = 2,600 円
。y = 1.8x + 32
、25 ℃→ 77 ℉、−10 ℃→ 14 ℉。y = 18x + 24
、x = 9
→ y = 186 分
。y = ax + b
の形で表される関数。y = ax
(b = 0
の一次関数)。一次関数は「一定の増え方」を見抜くことで、様々な場面を短い式で表し、見通しよく考える助けになる。実際の制度や料金は複雑でも、限定した範囲の近似として一次関数を使えば、ざっくりとした見積もりや比較が素早くできる。まずは 傾き(1 増えるとどれだけ増えるか) と 切片(スタート値) を言葉で説明できるかを意識し、身の回りで直線の関係を探してみるとよい。📐🔎💡
多くの人にとって身近な摂氏(℃) と 華氏(℉) の換算式「」は、温度計の歴史と深く関係しています。この式は、ガブリエル・ファーレンハイトが水の凝固点(32°F)と沸点(212°F)の間を180等分するという独自の目盛りの付け方から生まれました。一方、アンデルス・セルシウスは水の凝固点を0℃、沸点を100℃として目盛りを付けたため、この2つのスケールはちょうど一次関数の関係で結びついているのです。
日本では中学校で「一次関数」と習いますが、英語圏では「linear function(リニア・ファンクション)」と呼ばれています。「linear」は「直線的な」という意味で、グラフが直線になるという特徴をそのまま表しており、非常に直感的な呼び名です。物理学や経済学など、多くの分野でこの言葉が使われています。
一次関数は「増える」というイメージが強いかもしれませんが、記事にあるように切片()が負になることもあります。 これは、スタート地点が「借金」や「割引」などのように、初期値がマイナスである場合によく見られます。例えば、プリペイドカードの残高や、借りたお金を返済していく場合の残金は、時間とともに減っていくためグラフの傾きは負になり、初期値(切片)は正になります。逆に、割引券の価値を「割引額」として考えると、その価値は負の切片として表せるのです。
音楽と一次関数: 一次関数は数学や物理だけでなく、意外な分野でも使われています。例えば、シンセサイザーなどで音の高さを時間とともに変化させる(ピッチベンド)場合、多くは直線的なピッチの変化()が使われます。音の周波数や音階を時間軸に沿って直線的に動かすことで、滑らかな効果を生み出すのです。このように、一次関数は音の波形をシンプルに制御するための強力なツールとなっています。