てこクランク機構の使用例
身近な装置からロボットまで:てこクランク機構
1. はじめに:てこクランク機構って何?
「てこクランク機構」は、回転するクランクと、**支点を中心に動くてこ(レバー)**を、**リンク(棒)**でつないで、 回転運動 → 揺れる運動(揺動)や往復運動に変えるための仕組みです。
- クランク:回転軸から少しずれた位置にピン(接続点)があり、回すと円運動をします。
- てこ(レバー):支点を中心に、行ったり来たり揺れます。
- リンク(連結棒):クランクとてこをつなぎ、動きを伝えます。
中学校の「技術」で扱う**リンク機構(リンク装置)**の代表例として登場することが多いです。てこクランク機構の使用例を一緒に見ていきましょう。
2. どうして使われる?(便利ポイント)
てこクランク機構が使われる理由は、ざっくり言うと次の4つです。
- 🔁 回転を“行ったり来たり”に変えられる(モーターの回転を揺れる動きへ)
- ↔️ 動く向きを変えられる(横回転 → 左右の往復、など)
- 💪 力のかけ方を工夫できる(てこの作用で、押す力・引く力を調整しやすい)
- ⚙️ 単純な部品で作れて丈夫(ギアだけより構造が分かりやすいことも)
3. まずはイメージ図(超シンプル)
※本当は形がいろいろありますが、考え方は同じです。
回転(クランク) リンク 揺れる(てこ)
●───◯──────────●
↑回転軸 支点
クランクの接続点(◯)が回る → リンクが押したり引いたりする → てこが支点まわりに揺れる、という流れです。
4. てこクランク機構の使用例(身近なもの中心)
ここからが本題です。どこで使われているかを、用途別にたっぷり紹介します。
A. 自動車・交通での使用例
1) フロントワイパー(代表例)
車のワイパーは、モーターの回転を、ワイパーアームの**左右の往復(揺動)**に変えています。
- モーター:回転を作る
- リンク:回転を押し引きに変えて伝える
- ワイパー軸側:レバーのように揺れる
観察ポイント:ワイパーの根元のあたり(カウル下)にリンクが入っています。
2) 鉄道・バスなどのワイパー
基本の考え方は車と同じです。大きな窓ほど、しっかり往復させる仕組みが必要になります。
B. 家庭・学校で見つかる使用例
3) ミシン(針の上下・布送りの一部)
ミシンは、モーターの回転を利用して、
- 針を上下運動させたり
- 布を一定ピッチで送ったり するために複数の機構が組み合わさっています。
※ミシン内部では「クランク」や「リンク」が使われ、 仕組みとしては「回転 → 往復/揺動」変換がたくさんあります。
4) 工作・教材の“動くおもちゃ”(からくり玩具)
手でハンドルを回すと、
- 人形が手を振る
- 魚が口をパクパクする
- 鳥が羽ばたく など、揺れる動きが作れます。
学校の技術や図工で作る「動く模型」は、まさにこの分野の王道です。
5) 扇風機の首振り機構(※タイプによる)
扇風機の首振りは、
ただし製品によって、
- クランク+リンク系
- ギア(カム)系 など方式が違うこともあります。 「これはどっちだろう?」と観察すると勉強になります。
C. 工具・機械での使用例
6) 往復運動が必要な装置(切る・押す・叩く)
モーターの回転を、
- 押し引き
- 振り子のような揺れ に変えると、作業がしやすくなります。
たとえば、
- 研磨や振動を利用する工具(※内部機構は機種で異なる)
- 単純な往復動を作る装置 などで、似た考え方のリンク機構が使われます。
7) 小型プレス・ポンプの駆動部(※構造例)
「回して押す」「回して引く」が必要な装置では、 リンクで力を伝える設計がよく出てきます。
D. エンジン・発電での“親戚”例(理解を深める)
ここは大事な注意点があります。
8) 内燃機関(ピストンエンジン)は「クランク機構(クランク・スライダ機構)」が代表
車やバイクのエンジンは、 ピストンの往復運動 ↔ クランクの回転を変換します。
これは多くの場合、
- 「てこ(レバー)」というより
- 「スライダ(直線運動する部品)」 が中心です。
つまり、
- てこクランク機構:回転 → てこの揺れ(揺動)
- クランク・スライダ機構:回転 ↔ 直線往復(ピストン)
と、似ているけれど別物として区別すると理解がスッキリします。
E. ロボット・機構設計での使用例(応用編)
9) 歩行ロボットの“足を振る”仕組み(簡易モデル)
モーターの回転だけで足を動かすには、 リンクとレバーを使って
- 足を前に出す
- 後ろに戻す
- 膝っぽい動きを作る といった工夫が必要です。
てこクランク機構は、単純な部品で周期的な動きが作れるので、 ロボットの入門教材や簡単な自作ロボットに向いています。
10) 産業用の搬送・選別の“首振り”動作
工場の装置では、
- 物を左右に振って落とす
- アームを一定角度で往復させる など「揺れる動き」が必要な場面が多くあります。 そうしたとき、リンク機構が採用されることがあります。
5. てこクランク機構を見つけるコツ(観察ガイド)
身の回りで探すときは、この順番で見ると見つけやすいです。
- 🔌 回転源を探す:モーター、手回しハンドル、回転軸
- 🔩 軸からずれた接続点を探す:クランクの“偏心”部分
- 🦴 細い棒(リンク)を探す:押したり引いたりしている棒
- 🧷 支点で揺れている部品を探す:レバー(てこ)
「回転→押し引き→揺れ」という流れが見えたら、かなり近いです。
6. よくある混同(テストで差がつくポイント)
| 名前 |
主役の動き |
何に変える? |
例 |
| てこクランク機構 |
クランク回転+てこ揺れ |
回転 → 揺動(往復) |
ワイパー、からくり模型 |
| クランク・スライダ機構 |
クランク回転+直線部品 |
回転 ↔ 直線往復 |
ピストンエンジン |
| カム機構 |
カム回転 |
回転 → 押す/持ち上げる |
自動機械の押し込み |
「ワイパーはカムだっけ?」となりがちですが、 ワイパーはリンクで揺らすタイプが代表的で、てこクランク系として説明されることが多いです。
7. ミニ工作:紙と割りピンで作る“てこクランク”
家でできる超かんたんモデルです(安全にできる範囲)。
用意するもの
- 厚紙(段ボールでもOK)
- 割りピン(または画びょう+消しゴム、紙ファスナー)
- ストローや竹ひご(リンク用)
- はさみ、定規、鉛筆
作り方(概要)
- 厚紙に「回転軸」と「てこの支点」を作る
- 回転軸から少しずらした位置に「クランクの接続点」を作る
- ストロー(または竹ひご)でリンクを作り、クランクとてこをつなぐ
- 手でクランクを回して、てこが揺れるか確認
うまくいかない時のチェック
- クランクのずれが小さすぎる → 揺れが小さくて動きが分かりにくい
- リンクが短すぎる/長すぎる → 引っかかる・動きがカクカクする
- 支点がゆるい/きつい → ガタつく、または回らない
「どこを変えると動きが変わるか」を試すと、機構の理解が一気に深まります。
8. まとめ
- てこクランク機構は、回転を“揺れる動き”や“往復”に変えるリンク機構の代表。
- 代表的な使用例は 自動車のワイパー、教材のからくり模型、機械の往復・首振り動作など。
- 似た仕組みとして クランク・スライダ機構(ピストン) や カム機構 があるので、混同しないのがコツ。
9. 追加:テスト前チェック(覚えるキーワード)
- クランク:偏心した回転
- リンク:押す・引く
- てこ(レバー):支点で揺れる
- 変換:回転 → 揺動(往復)