火山は、地球の内部にたまったマグマが地表近くまで上がってきて、噴火することでできる地形です。火山活動は、ときに大きな被害をもたらしますが、一方で長い時間をかけて土地の形をつくりかえ、豊かな自然や観光地も生み出してきました。
ここでは、火山活動によって土地がどのように変化するのか、そのしくみと具体的な例をわかりやすく整理していきます。

地球の内部はとても高温で、一部はどろどろにとけた岩石「マグマ」になっています。このマグマが、地表に向かって上昇し、火口からふき出す現象が「噴火」です。噴火がくり返されると、火口のまわりに溶岩や火山灰が積み重なり、「火山」という山がつくられます。
火山活動には、次のようなものがあります。
これらの活動は、土地の高さや形、土の性質、水の流れなどに、さまざまな変化をおよぼします。

噴火によってマグマや火山灰が何度も積もると、火口のまわりに円すい形の「火山錐(かざんすい)」と呼ばれる山ができます。日本では、富士山のような円すい形の山が代表的です。
火山錐のおもなタイプ
火山錐ができることで、周辺の地形は大きく変わり、新しい山が突然現れたような景観が生まれます。
大きな噴火で、大量のマグマが地中から出ていくと、地下が空洞のような状態になり、上にある地面が一気にくずれ落ちることがあります。こうして、広くて深い「カルデラ」とよばれるくぼ地ができます。
カルデラの中には、湖ができたり、町や温泉地が発展したりすることがあります。日本では、阿蘇山のカルデラがとても有名です。
さらさらとした溶岩が広い範囲に流れ出し、そのまま固まると、「溶岩台地」と呼ばれる平らな土地ができます。また、流れた跡が筋のように残り、「溶岩流」として地図上で確認できる場合もあります。
溶岩台地は、地面がかたく、川が深い谷をけずりながら流れることが多いため、滝ができやすいという特徴もあります。
海底で起きた噴火によって、海底にたまった溶岩や火山灰が積もり上がり、水面より上に出ると、新しい「火山島」が誕生します。
海底火山の噴火は、はじめは海の色の変化や、海面の白い泡、軽石がたくさん浮かぶ様子などで気づかれることがあります。その後、噴火が続けば、地図にのる新しい島になることもあります。
噴火やマグマの動きによって、土地は次のように変化します。
また、火山活動にともなう地すべりや山体崩壊(山の一部が大きくくずれ落ちること)によって、谷がうまる、川の流れが変わるといった変化も起こります。
火山からふき出した火山灰や火山れき(小さな石)が地面に積もると、その土地の土の性質が変わります。
そのため、火山の周辺には、やがて畑や草原が広がり、農業がさかんになる地域もあります。
火山活動によって、川や湖も姿を変えることがあります。
このように、火山活動は「水の通り道」にも大きな影響をあたえます。
火山の周辺では、地下に熱いマグマがあるため、地中の水があたためられ、温泉や間欠泉(一定時間ごとに熱水がふき出す泉)が見られます。また、地熱発電所がつくられる地域もあります。
温泉地は観光地として発展し、その地域の重要な産業になることもあります。「土地の変化」が、生活や産業の変化にもつながっている例といえます。

火山活動は、土地を豊かにする面がある一方で、大きな災害を引き起こすこともあります。
しかし、その後の長い年月のあいだに、火山灰や火砕流の堆積物が風雨によってけずられたり、植物が根を張ったりして、ゆっくりと新しい地形や土壌へと変化していきます。
火山の斜面にたまった火山灰や軽石が、大雨や雪どけ水によって一気に流れ出すと、「土石流」や「火山泥流」となり、川にそって流れ下ります。
土石流は、谷をうめて土地の高さや形を変え、下流の平地に厚く堆積して、新しい扇状地をつくることもあります。こうした土地は、時間がたつと農地や住宅地として利用されることもありますが、再び土石流が起こるおそれがあるため、危険性をよく考えた土地利用が求められます。
火山活動によって変化した土地は、人々のくらしと深く関わっています。
火山灰が時間をかけて変化してできた土壌は、保水力が高く、養分も豊富な場合があり、畑作や酪農に適しています。火山周辺では、野菜や果物、牧草などの生産がさかんな地域も多く見られます。
火山によってできた山やカルデラ湖、溶岩台地などは、迫力ある景観となり、観光資源として活用されています。また、温泉や地熱地帯も観光地として人気があり、宿泊業やサービス業などの産業を支えています。
火山活動は、突然大きな噴火を起こすことがあります。そのため、火山の周辺では、ハザードマップの整備や避難経路の確認など、防災対策が重要です。
土地の利用計画を立てるときには、過去の噴火の歴史や土石流の記録、地形の特徴などをもとに、危険な場所を避けたり、被害を小さくする工夫をしたりする必要があります。
火山活動は、
といった形で、土地の姿を大きく変えてきました。一方で、噴火や土石流、火砕流などの災害を引き起こし、人々のくらしに大きな被害をあたえることもあります。
火山活動による土地の変化を学ぶことは、地球のダイナミックなしくみを理解するだけでなく、安全に暮らしながら自然の恵みを生かしていくためにも大切です。長い時間の中で変わり続ける土地の姿に注目すると、身近な山や温泉地も、これまでとは少し違って見えてくるかもしれません。