私たちが毎日使っている電気やエネルギーは、いったいどこから来ているのでしょうか?
テレビをつけるとき、冷蔵庫を使うとき、スマートフォンを充電するとき。これらのエネルギーは、石油や石炭、天然ガスといった「化石燃料」によって生み出されている場合がまだ多いのが現実です。
しかし、これらの化石燃料は地球に限りある資源であり、燃やすと二酸化炭素(CO₂)を排出して地球温暖化の原因にもなります。そこで近年、注目されているのが「再生可能エネルギー(さいせいかのうエネルギー)」です。
この記事では、再生可能エネルギーとは何か、そしてそれがどのように私たちの身近な場所で使われているのかを、できるだけ具体的な例を挙げながら紹介していきます。
再生可能エネルギーとは、太陽の光や風、水の流れ、地熱、植物など、自然界に存在するエネルギーのうち、使っても再び補充される「なくならないエネルギー」のことをいいます。代表的なものは以下の通りです。
これらは、エネルギーとして使った後でも、自然の力で元に戻る性質を持っています。そのため「再生可能(さいせいかのう)」と呼ばれています。
再生可能エネルギーは、研究所や発電所だけの話ではありません。実は、日常生活の中でもすでにさまざまな場面で使われています。ここからは、私たちの身の回りで見られる「再生可能エネルギーの身近な例」を一つ一つ丁寧に紹介していきます。
もっともよく見かけるのが、家の屋根やマンションの上に設置された「太陽光パネル」です。これによって家庭で電気をつくることができ、使わなかった分は電力会社に売ることもできます。
具体例:
夜になると自動で光る街灯の中には、昼間に太陽の光をためておいて、それを使って夜に照らすタイプもあります。これは「ソーラー街灯」と呼ばれ、電力を必要とせず、環境にもやさしい製品です。
具体例:
最近では、太陽光パネルを搭載した「ソーラー自販機」もあります。日中に電力をためておき、夜間や停電時にも飲み物を買うことができる仕組みです。
具体例:
スマートフォンやタブレットを外で充電したいとき、太陽光を利用して電気をつくる「ソーラーチャージャー」はとても便利です。登山やキャンプ、災害時の備えとしても注目されています。
具体例:
最近では、公共の施設でも再生可能エネルギーを積極的に取り入れています。学校では、理科や社会の授業の一環として、太陽光発電の仕組みや発電量を学べるシステムがあるところもあります。
具体例:
地面の中は、夏も冬も安定した温度を保っているため、その熱を利用して冷暖房を行う「地中熱ヒートポンプ」も再生可能エネルギーの一つです。
具体例:
電気自動車(EV)の場合、充電に使う電力が再生可能エネルギーであれば、走るたびにCO₂を出さない非常にクリーンな乗り物になります。
具体例:
再生可能エネルギーには、木くずや廃油、食品廃棄物などを使ってエネルギーを生み出す「バイオマスエネルギー」も含まれます。実はこのバイオマスは、製品としても身近に使われています。
具体例:
空港や大きな駅では、大量の電力が必要ですが、最近では再生可能エネルギーを一部に取り入れる施設も増えています。
具体例:
ビルの屋上に太陽光パネルを設置したり、建物全体の電力を再生可能エネルギーでまかなったりする企業も増えています。脱炭素経営の一環として注目されています。
具体例:
身近な場面で再生可能エネルギーが使われることには、次のようなメリットがあります。
再生可能エネルギーは、単に技術として優れているだけでなく、「持続可能な社会」を実現するために必要不可欠な要素となっています。
今後も身の回りにある再生可能エネルギーの例はどんどん増えていくでしょう。自分の暮らしの中でも「どんな場所で使われているか」「自分にも取り入れられることはないか」と考えてみることが、より良い未来への第一歩となります。
再生可能エネルギーは、決して遠い未来の技術ではなく、私たちのまわりにすでにたくさん存在しています。家の屋根、自動販売機、公園の街灯、携帯の充電器、学校や空港……どれも私たちがふだん目にしているものばかりです。
こうしたエネルギーの使い方を知り、身近なところから意識することが、地球にやさしい生活への第一歩となります。再生可能エネルギーは、未来を変えるだけでなく、今この瞬間の暮らしも豊かにしてくれる存在なのです。
A:
はい。再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスをほとんど出さないため、地球温暖化の原因となる大気汚染を抑えることができます。また、燃料が不要なものが多く、自然の力をそのまま利用するため、地球にやさしいエネルギーとされています。
A:
完全に「使えない」というわけではありません。曇りや雨の日でも、太陽光パネルは弱い光をとらえて発電しています。ただし、晴れの日よりも発電量は少なくなるため、蓄電池などと組み合わせて電力を安定して使う工夫が必要です。
A:
設置する規模やメーカーによって異なりますが、一般的な家庭用の太陽光発電システムでは、100万円〜200万円程度の初期費用がかかることが多いです。ただし、自治体によっては補助金制度があったり、リースやローンの制度も充実していたりするため、導入しやすくなってきています。
A:
可能です。太陽光発電と家庭用蓄電池を組み合わせたり、地中熱やバイオマスストーブを導入したりすることで、電力会社の電気に頼らない「オフグリッド生活」を送っている人もいます。ただし、初期費用や生活スタイルの調整が必要になるため、段階的に取り入れる人が多いです。
A:
日本では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を電力全体の36〜38%にするという目標が政府から示されています。世界的にも再エネの導入は年々進んでおり、今後ますます大きな存在になると考えられています。
A:
一部の地域では、地熱発電を行うと温泉のわき出る量が減るのではないかと心配されていることがあります。実際には、適切な技術と管理をすれば両立できるとされていますが、地域住民との信頼関係や事前調整がとても大切になります。
A:
はい。例えば、電気を無駄に使わないようにこまめに消すことや、自然光で過ごす時間を増やすことも、再エネの使用量を高めることにつながります。また、ソーラーカーをつくる工作キットなどを通じて、太陽光発電を体験することもできます。
A:
日本は島国で、周りを海に囲まれており、風が強い海域が多いためです。陸地が狭くて設置場所に限りがあるという課題も、洋上に設置すれば解決できます。現在、秋田県や千葉県沖などで実証実験が行われています。
A:
バイオマス発電では、木くずや家畜のふん尿、食品の残りなどの「生物に由来する有機物」を燃料として使います。ごみを単に燃やすのではなく、エネルギーとして再利用する仕組みです。焼却施設とは異なり、燃やすときにできる限りCO₂を抑えたり、熱やガスを有効活用したりする工夫がされています。
A:
国・地域や状況によって異なりますが、日本では「洋上風力」と「地熱発電」、そして「太陽光発電」が特に注目されています。さらに、蓄電池の技術が進むことで、これらを効率よく使えるようになると期待されています。
再生可能エネルギーは、私たちの生活の様々な部分に浸透しつつあります。ここでは、その技術や歴史に関する、知ればもっと面白くなるトリビアを10個ご紹介します。
かつては、太陽光パネルは発電効率が悪く、多くの設置面積が必要でした。そのため、日差しを遮るものがなく、広い面積を確保できるビルの屋上や住宅の屋根に設置されることが多かったのです。現在では技術が進み、壁面や窓ガラスなどにも設置できる「シースルー型」のパネルも開発されています。
風力発電の原型となる「風車」は、紀元前2000年頃からペルシャ(現在のイラン)で穀物を挽くために使われていたと言われています。風車の羽根は、風を効率よくとらえるために、円形で、大きな面積を持つ形をしていました。現代の風力発電機も、この原理を応用して、風の運動エネルギーを電気に変えています。
水力発電の原理は、古代ギリシャの時代から使われていました。当時は、水車の力で小麦を挽いたり、製粉したりする「水車小屋」が一般的でした。電気を生み出す仕組みは19世紀に発明されましたが、水の力を使うという考え方は、何千年も前から人類に利用されてきたのです。
地熱発電は、地下深くの熱水や蒸気を使ってタービンを回し、電気を生み出します。この仕組みは、かつての蒸気機関車が蒸気の力で車輪を動かしていた原理と非常によく似ています。日本の温泉地が多い地形は、この地熱発電に適していると言われています。
バイオマス(植物由来の有機物)は、燃料として使われるだけでなく、環境に優しいプラスチック製品の原料にもなります。サトウキビやトウモロコシなどから作られるバイオプラスチックは、一般的なプラスチックよりも分解されやすく、石油資源の節約にも貢献します。
国際宇宙ステーション(ISS)は、巨大な太陽光パネルを広げ、宇宙空間で太陽の光を受けて電力をまかなっています。宇宙では雲や大気に邪魔されることがないため、地上よりも効率よく発電できます。
「バイオマスエネルギー」の一種であるバイオエタノールは、植物から作られる燃料です。これを使って走る自動車も開発されていますが、実はバイオエタノールを燃料とする「自転車」も存在します。これは、環境に配慮した新しい移動手段として注目されています。
日本では、風力発電よりも地熱発電の方が先に実用化されました。1966年に岩手県にある松川地熱発電所が運転を開始し、日本は世界でも有数の地熱発電大国になりました。豊富な温泉資源に恵まれていることが、地熱発電の発展につながっています。
近年、技術開発が進み、見た目が普通の葉っぱそっくりで、光を電気に変えることができる「ソーラーリーフ(太陽光の葉)」が研究されています。この技術が実用化されれば、街路樹や公園の植え込みなど、あらゆる場所が発電所になるかもしれません。
水を電気分解すると、水素と酸素に分かれます。このときに再生可能エネルギーでつくった電気を使えば、CO₂を出さずに水素をつくることができます。この水素は、燃料電池車の燃料として使うことができるため、まさに「水」からつくるクリーンなエネルギーとして注目されています。