理科の授業で「電気分解」という言葉を学ぶと、少し難しく感じる人も多いかもしれません。
しかし実際には、電気分解は私たちの生活の中で、さまざまな形で利用されています。
この記事では、電気分解のしくみとともに、身近な電気分解の例をできるだけ多く紹介します。電気分解がどのように役立っているのか、具体的に知ることで、理科の学びをより深めることができるでしょう。
まず「電気分解」とは何かを簡単に説明します。
電気分解とは、電流を流すことで物質を構成するイオンを電極に引き寄せ、物質を分解する方法です。
例えば水の場合、電流を流すと水が水素と酸素に分かれます。これが典型的な電気分解の例です。
この性質を利用することで、さまざまな物質を取り出したり、製品の表面を加工したりすることが可能になります。
ここからは、電気分解が私たちの生活にどのように関わっているか、電気分解の具体例を挙げながら説明します。
理科の実験でおなじみなのが水の電気分解です。
水に電流を流すと、水は酸素と水素に分かれます。
発生した水素は、将来的にクリーンなエネルギー源として注目されています。燃料電池車や水素発電など、環境に優しい技術に使われる予定です。
金属製品やアクセサリーなどの表面を美しくしたり、サビにくくしたりするために使われるのが電気めっきです。
例えば:
電気分解を使って、金属の表面に薄い金属の膜をつくります。これにより、見た目が良くなるだけでなく、金属の強度や耐久性も向上します。
アルミニウムは軽くて丈夫な金属で、缶、ホイル、自動車や飛行機など多くの製品に使われています。
しかし、自然界では酸化アルミニウムという形で存在するため、そのままでは使えません。そこで電気分解を利用します。
酸化アルミニウムを高温で溶かし、電流を流すことでアルミニウムを取り出します。これを「ホール・エルー法」と呼び、現代のアルミ製造には欠かせない技術です。
食塩水を電気分解すると次の物質が得られます。
塩素は漂白剤やプールの殺菌に使われます。
水酸化ナトリウムは石けんや紙の製造に必要です。
銅は電気をよく通すため、電線や電子機器の部品として欠かせない金属です。
鉱山から取り出したばかりの銅(粗銅)は不純物を多く含んでいます。これを電気分解によって純度の高い銅に精製します。
方法としては:
この工程を通して、非常に高い純度の銅が得られます。
自動車のバッテリーは鉛蓄電池と呼ばれ、放電や充電の際に電気分解の原理が利用されています。
電気分解がなければ、鉛蓄電池は動きません。車のエンジンを始動させるための重要な装置です。
都市鉱山と呼ばれるように、電子機器などから金属を回収するリサイクルでも電気分解が役立っています。
例えば:
限りある資源を大切にするために重要な技術です。
最近では「水素水生成器」という家電も見かけるようになりました。
これは水に電気を流し、水素を発生させる装置です。
ただし、健康への効果にはさまざまな意見があり、科学的に完全に証明されているわけではない点も覚えておきましょう。
家庭や学校で使う消毒液の一つに「次亜塩素酸水」があります。
塩水を電気分解して作られ、除菌や消臭に利用されています。
アルミ製品に色をつける方法として「電解着色」があります。
などにカラフルな色がついているのは、電気分解によって表面に膜を作り、その膜に染料を染みこませているからです。
温泉や銭湯にある「電気風呂」も、間接的に電気分解が関わっています。
弱い電流を水に流すことで、微量のイオンが発生し、体に心地よい刺激を与えます。ただし電気分解そのものを目的としているわけではありません。
自動車やバイクの部品に使われる「クロムめっき」も、電気分解を利用しています。美しい光沢と耐食性が得られるため、装飾や保護のために重要です。
金属の表面をなめらかにする「電解研磨」という技術も電気分解を使います。
医療機器、厨房機器、精密部品などの製造で広く用いられています。
家庭用の電解水生成器では、水に電気を流すことで次のような水が作られます。
掃除や衛生管理に役立つ製品です。
現在は環境保護の観点から使われなくなった例ですが、過去には電気分解で塩化水銀溶液から水銀を取り出していました。このように、電気分解は昔からさまざまな産業に活用されてきました。
電気分解は、一見難しそうですが、私たちの暮らしの中に多く使われています。ものづくり、環境保護、新しいエネルギーなど、多くの分野で欠かせない技術です。
今回紹介したように、日用品やインフラ、工業製品に至るまで、電気分解は幅広い場面で利用されています。理科の学習を通して、こうした技術が社会や生活とどのように関わっているかを理解することは、とても大切です。
今回紹介した電気分解の例を、あらためてまとめてみます。
このように、電気分解は生活のさまざまな場面で活躍しています。理科を学ぶときは、ぜひ身近な例を思い出しながら理解を深めてください。