理科で学ぶ「エネルギー」は、少し抽象的で分かりにくいと感じることがあります。しかし、実は身の回りのあらゆる現象がエネルギーと関係しています。
・電球が光ること ・ご飯を食べて体を動かせること ・自動車が走ること ・発電所で電気がつくられること
これらは全て「エネルギーが別の形に変換されている」例です。この記事では、中学校の理科で学ぶ内容を意識しながら、エネルギーの種類と、具体的なエネルギー変換の例をていねいに解説します。
エネルギーとは、「物体や物質が、仕事をする能力」のことです。もう少し簡単に言うと、「何かを動かしたり、形を変えたり、温度を変えたりできる力」と考えると分かりやすくなります。
大切なポイントは次の2つです。
例えば、電気エネルギーが光や熱に変わったり、位置エネルギーが運動エネルギーに変わったりしますが、「どこかに消えてなくなる」のではなく、形を変えて存在し続けます。
中学校でよく扱うエネルギーの種類を整理しておきます。
これらのエネルギーは、単独で存在するだけでなく、互いに変換されながら利用されています。
エネルギーに関する学習で重要なのは、「どのエネルギーが、どのエネルギーに変わっているのか」を考えることです。
例えば、次のように整理できます。
・乾電池で動くおもちゃ → 化学エネルギー(乾電池) → 電気エネルギー → 運動エネルギーや音エネルギー
・電気ストーブ → 電気エネルギー → 熱エネルギー → 一部は光エネルギー
実際の現象では、エネルギーは1種類だけに変わるのではなく、複数の形に分かれて変換されることが多い点もポイントです。
ここからは、身の回りで見られるエネルギー変換を、できるだけ具体的に見ていきます。
懐中電灯の中では、次のようなエネルギー変換が起こっています。
まとめると、
化学エネルギー → 電気エネルギー → 光エネルギー+熱エネルギー
となります。
家庭のコンセントにつないで使う電気器具では、電気エネルギーがさまざまな形に変換されています。
・ヘアドライヤーの場合
まとめると、
電気エネルギー → 熱エネルギー+運動エネルギー+音エネルギー
となります。
・炊飯器 電気エネルギー → 熱エネルギー → 米と水が加熱され、でんぷんの状態が変化
・電子レンジ 電気エネルギー → 電磁波(マイクロ波) → 水分子が振動し、熱エネルギー
どちらも、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、食品を加熱している例です。ただし、電子レンジは一度「電磁波」という形を経由している点が特徴です。
人の体も、エネルギー変換のよい例です。
まとめると、
化学エネルギー → 運動エネルギー+熱エネルギー
となります。走ったり、ジャンプしたり、勉強したりできるのは、食べ物のエネルギーが体の中で変換されているからです。
自動車のエンジンでは、ガソリンが燃焼してエネルギーを取り出しています。
実際には、同時に音エネルギーや熱エネルギーとして周囲に失われるエネルギーもあります。
化学エネルギー → 熱エネルギー → 運動エネルギー+音エネルギー+熱エネルギー
となり、「有効に使われるエネルギー」と「失われるエネルギー」があることも重要なポイントです。
ダムを使った水力発電は、位置エネルギーと運動エネルギーの変換が分かりやすい例です。
まとめると、
位置エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
となります。
火力発電所では、石炭や天然ガス、石油などの燃料を燃やして電気を作ります。
化学エネルギー → 熱エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
という流れになっています。
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する仕組みです。
光エネルギー → 電気エネルギー
という、比較的シンプルな変換です。
風力発電は、風の持つ運動エネルギーを利用します。
運動エネルギー → 運動エネルギー → 電気エネルギー
という流れです。途中で形は変わりますが、元をたどると太陽からの光エネルギーが地表の温度差を生み、風を生じさせていると考えることもできます。
バネを縮めたり、ゴムを伸ばしたりすると、「弾性エネルギー」がたくわえられます。これも位置エネルギーの一種として扱うことがあります。
例:
弾性エネルギー → 運動エネルギー
となります。
両手をこすり合わせると、だんだん温かくなります。これもエネルギー変換の例です。
運動エネルギー → 熱エネルギー
となり、本来は他の形で利用できた運動エネルギーが、摩擦によって熱として失われているとも言えます。
スマートフォンや音楽プレーヤーのスピーカーも、エネルギー変換のよい例です。
電気エネルギー → 運動エネルギー → 音エネルギー
という流れになっています。
エネルギーの学習で混乱しやすいポイントとして、「エネルギーは失われるのか」という疑問があります。
結論から言うと、エネルギーの総量は保存されます。しかし、私たちが「有効に使える」エネルギーは減っていくことがあります。
例えば、自動車の例では、
・前に進むための運動エネルギー ・エンジンや排気ガスとして失われる熱エネルギー ・エンジン音として外に広がる音エネルギー
などに分かれます。ガソリンにふくまれていたエネルギーは、形を変えて周囲に広がってしまうため、すべてを「前に進む力」にはできません。
これを「エネルギーが無駄になる」と表現することもありますが、正確には「有効な形で取り出せなくなる」と考えるとよいでしょう。
エネルギー変換の仕組みを理解すると、環境問題や社会の仕組みとの関係も見えてきます。
こうした工夫も、エネルギー変換のロスを減らし、「有効に使えるエネルギー」を増やすための取り組みと言えます。
この記事では、中学理科で学ぶ「エネルギー変換」について、基本的な考え方と身の回りの具体例を紹介しました。
・エネルギーには、位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー、電気エネルギー、化学エネルギー、音エネルギーなど、さまざまな種類がある。 ・エネルギーは形を変えて利用されるが、総量は保存される(エネルギー保存の法則)。 ・身の回りの現象は、ほとんどがエネルギー変換として説明できる。 ・発電所や乗り物、家電製品、人の体など、あらゆるところでエネルギー変換が起こっている。 ・エネルギー変換のロスを減らすことは、環境問題の解決にもつながる。
エネルギー変換の視点を身につけると、「これはどんなエネルギーが、どんなエネルギーに変わっているのだろう」と日常の出来事を科学的に考えられるようになります。理科の学習だけでなく、将来のエネルギー問題や環境問題を考えるうえでも重要な視点です。