高校の生物では、生態系の中で生物どうしがどのように関わり合っているかを学びます。その中でも、少しイメージしにくいのが**「片利共生(へんりきょうせい)」**です。
この記事では、片利共生の定義を確認しながら、テストや入試でもよく登場する代表的な例を、海・陸・人間の生活に関わるものに分けてていねいに解説していきます。
**片利共生(commensalism)**とは、
一方の生物だけが利益を受け、もう一方の生物は利益も不利益もほとんど受けない
という関係です。
と表せるので、片利共生はよく 「+/0 の関係」 と呼ばれます。
高校生物では、生物どうしの関係を次のように整理して扱うことが多いです。
この中で、片利共生は **「一方だけ得をするけれど、相手にとっては“ほぼどうでもいい”関係」**だとイメージすると覚えやすくなります。
片利共生を理解するうえで、相利共生や寄生との違いをはっきりさせておくと混乱しにくくなります。
**相利共生(mutualism)**は、
おたがいに利益を受ける関係(+/+)
です。
例えば、
などは、どちらの生物も相手から得をしています。このような関係は「共生」と呼ばれ、教科書でもよく出てきます。
一方、片利共生では 片方はプラス、もう片方はほぼ0 なので、
という点を区別しておきましょう。
**寄生(parasitism)**は、
一方が利益を受け、もう一方がはっきりと不利益を受ける関係(+/−)
です。
などは、寄生の典型例です。
片利共生と寄生の境目は、
「もう一方の生物にとって、はっきりと不利益があるかどうか」
という点にあります。片利共生では、相手側にとって害が「ほとんどない」と考えられる点がポイントです。
まずは教科書や問題集にもよく登場する、海の生態系における片利共生の例を見ていきます。
もっとも有名な片利共生の例のひとつが、
サメとコバンザメ
です。
一方のサメ側は、コバンザメが付いていても基本的には不利益も利益もほとんどありません。このため、コバンザメが得をして、サメはほぼ影響なしという片利共生の典型例として紹介されます。
次に代表的なのが、
クジラの体表に付着するフジツボ
です。
一方のクジラは、多少の水の抵抗が増える可能性はあるものの、多くの場合フジツボの存在によって大きな利益も不利益も受けません。
そのため、これも**「フジツボだけが利益を得て、クジラはほぼ影響を受けない」**という片利共生の例として説明されます。
続いて、陸上で見られる片利共生の例をいくつか紹介します。身近な自然の中でも、注意して見ると片利共生に近い関係が見つかります。
熱帯雨林などでは、
樹木の幹や枝にランやシダなどの植物が張り付いて育つ
様子がよく見られます。これらは**「着生植物」**と呼ばれます。
ただし、着生植物が極端に増えすぎて枝が折れてしまうような場合には、樹木にとって不利益になることも考えられます。そのため、現実の自然界では「完全な 0(ゼロ)」ではなく、おおまかに見て片利共生と考えられる関係だと理解しておくとよいでしょう。
鳥が巣を作る場所としては、
など、さまざまな場所があります。このうち、
樹木の枝に巣を作る場合
は片利共生の例として挙げられることがあります。
ただし、人間の家の軒下に巣を作るツバメなどの場合、
このように、完全に片利共生と言い切れない微妙なケースもあり、実際の自然界では関係が重なり合っていることも、生態学の面白いポイントです。
アフリカのサバンナなどでよく見られるのが、
ウシやバッファローなどの草食動物のそばを歩き回るアマサギなどの鳥
です。
一方、草食動物の側は、
などのわずかなメリットがある可能性も指摘されています。そのため、文献や教科書によっては、
として説明されることもあります。
高校生物のレベルでは、
「鳥が得をして、草食動物はほとんど影響を受けない関係」として、片利共生の例として理解しておく
とよいでしょう。
身の回りの環境をよく観察すると、人間の活動と他の生物との間にも、片利共生に近い関係が見つかることがあります。
といった例では、
と、必ずしも「0」とは言い切れない複雑な関係が生じます。
このように、誰にとってプラスで、誰にとってマイナスかを考えながら生物どうしの関係を整理してみると、片利共生・相利共生・寄生などの区別がよりクリアになります。
実際の自然界では、「まったく影響がない 0」という状態を厳密に証明するのはむずかしく、
「ほとんど影響がないと考えられる」ので 0 とみなす
という形で整理されることが多いです。
そのため、片利共生の例を考えるときには、
を意識しながら考えるとよいでしょう。
最後に、高校生物のテストや入試で片利共生が登場するときのチェックポイントをまとめておきます。
この 3 つはセットで問われることが多いので、定義と記号を合わせて覚えると得点しやすくなります。
暗記しておきたい典型例として、次のものを押さえておきましょう。
これらは教科書・問題集・模試でよく出てくる定番の組み合わせなので、
「どちらが利益を受けているか」「もう一方はどうか」をセットで覚える
ようにしておきましょう。
記述問題では、次のような聞かれ方をすることがあります。
そのような場合には、
を簡潔に盛り込めると、点数を取りやすくなります。
教科書では単純な図で示されることが多い片利共生ですが、実際の自然界ではさまざまなグラデーションがあります。身の回りの自然やニュースで見かける生物を、「誰が得をしていて、誰が損をしているのか」という視点で観察してみると、生態系への理解が一段と深まっていきます。