水溶液-身近なもの
身の回りには、ジュース、しょうゆ、おふろの入浴剤、お薬など、いろいろな「液体」があります。その中には水に何かがとけこんだ「水溶液(すいようえき)」もあれば、見た目は似ていても水溶液ではないものもあります。
この記事では、
- 水溶液とはどんなものか
- 身近な水溶液の具体的な例
- 見た目が似ていても水溶液ではないものの例
をていねいに説明していきます。
1. 水溶液とは?基本の考え方
まずは「水溶液」の意味をおさえておきましょう。
水溶液…水に、ほかの物質がとけた状態の液体
というのが基本です。
もう少しくわしく言うと、
- 水:とける“場所”になる液体(溶媒・ようばい)
- とける物:食塩や砂糖など(溶質・ようしつ)
この2つがよく混ざって、どこをすくっても同じような濃さになっている状態を「水溶液」と呼びます。
例えば、
- 食塩水(食塩が水にとけたもの)
- 砂糖水(砂糖が水にとけたもの)
は、とても代表的な水溶液です。
ポイントは、
とけた物が目に見えなくなり、上のほうでも下のほうでも同じような味・濃さになっていること
です。
2. 身近な水溶液の例
ここからは、家の中でよく見かける「水溶液」を、ジャンルごとに見ていきます。
2-1. 台所にある水溶液
台所(キッチン)には水溶液がたくさんあります。
- 食塩水
料理の下味をつけるときに使う、塩を水にといたもの。
例:野菜をゆでる前に、塩を入れたお湯(これも広い意味では水溶液)。
- 砂糖水
ゼリーやデザートを作るとき、砂糖を水にとかしてシロップを作ることがあります。これも水溶液です。
- しょうゆ
しょうゆは、大豆や小麦を発こうさせて作った液体で、塩分も多くふくんでいます。中身をよく見ると、
- 食塩
- アミノ酸
- さとう分
など、いろいろな物質が水にとけた水溶液だと考えることができます。
- みりん・料理酒
アルコールやさとう分などが水にとけた液体です。アルコールも水とよくまざるので、水溶液の一種と考えられます。
- だし汁(かつおだし、こんぶだしなど)
かつおぶしやこんぶから出てきたうま味成分が、水にとけた状態です。これも水溶液です。
2-2. 飲み物の中の水溶液
飲み物にも水溶液がたくさんあります。
- ジュース(透明なタイプ)
例:スポーツドリンク、透明なサイダー、レモンスカッシュなど。
砂糖やクエン酸、香料などが水にとけている、水溶液の代表的な例です。
- スポーツドリンク
ナトリウムやカリウムなどのイオン(電解質)、砂糖などが水にとけて、からだが水分を吸収しやすいように作られています。
- 炭酸飲料
コーラやサイダーなどには、砂糖や香料だけでなく、**二酸化炭素(炭酸ガス)**も水にとけています。ガスも水にとけるので、これも立派な水溶液です。
- コーヒー・紅茶
コーヒー豆や茶葉から出てきた成分(カフェイン、香りの成分など)が水にとけこんでいます。黒っぽい色のもとになっている物質も、水にとけて広がっているので、水溶液と考えられます。
※オレンジジュースでも、透明な部分は水溶液ですが、つぶつぶの果肉は「とけている」のではなく、細かい固体や液体がまざっている状態です。そのため、完全に一種類の水溶液とは言い切れないところがあります。
2-3. 洗剤や生活用品の水溶液
水まわりで使う道具にも、水溶液がたくさんあります。
- 食器用洗剤(中性洗剤)
原液を水でうすめて使うとき、その液体は「界面活性剤(かいめんかっせいざい)」などが水にとけた水溶液です。
- 洗たく用洗剤(液体タイプ)
ボトルに入っている液体自体が、水やアルコールにさまざまな成分がとけたものです。水溶液として考えられることが多いです。
- 掃除用クリーナー(ガラスマジックリンなど)
アルカリ性の成分やアルコールなどが水にとけていて、汚れを落としやすくしています。
- うがい薬
ポビドンヨードなどの成分が水にとけた液体で、これも水溶液です。
2-4. お風呂や健康にかかわる水溶液
- 入浴剤を入れたお湯
入浴剤の成分(色素、香り成分、炭酸、ミネラルなど)が水にとけ、全体が同じ色・同じ濃さになっている状態です。
- 生理食塩水(0.9%食塩水)
医療の現場などで使われる、食塩が一定の割合で水にとけたものです。目を洗ったり、点滴に使われたりすることがあります。
- スポーツ後に飲む経口補水液
ナトリウムやカリウム、ぶどう糖などが水にとけていて、体の水分と電解質をおぎなうための水溶液です。
3. 「水溶液ではないもの」の身近な例
ここまで見てくると、
「液体なら全部、水溶液なのでは?」
と思ってしまいそうですが、そうではありません。見た目はに benzer ても水溶液ではないものもたくさんあります。
3-1. 水にとけていないもの(ただの混ざり方)
- サラダ油・ごま油などの食用油
油は水とはまざらず、コップに入れると、水の上に油の層がうきあがります。油どうしはまざりますが、
- 「水にとけている」のではなく
- ただ「油のかたまり」があるだけ
なので、水溶液ではありません。
- マヨネーズ
卵黄や酢、油などが細かい粒になって水の中に分かれてまざっている「エマルション(乳化)」という状態です。全体としてはドロッとした液体に見えますが、物質が水に完全にとけたわけではないので、水溶液とは言いません。
- 牛乳
牛乳は、脂肪のこまかい粒が水の中にうかんだ「乳化液」であり、
- たんぱく質や糖の一部は水にとけていますが
- 脂肪はとけずに細かい粒としてまざっている
ため、「純粋な水溶液」とは区別されます。
- どろ水・にごった川の水
砂や土が水の中にうかんでいる「懸濁液(けんだくえき)」です。時間がたつと、下に土がしずんできて、上の水がすんでくることがありますね。これは、
- 砂や土が水に「とけた」のではなく
- 細かい固体が水にただまざっているだけ
なので、やはり水溶液ではありません。
3-2. 液体だけど水を使っていないもの
水溶液は「水」に何かがとけた液体でした。つまり、水が使われていなければ水溶液ではありません。
- 100%のサラダ油・エンジンオイル
これらは油そのものです。中に何か物質がとけている場合もありますが、
- 溶媒(とける場所)が「水」ではなく「油」
なので、水溶液ではなく、単なる油や「油溶液」と言えます。
- エタノールだけの液体(無水エタノール)
消毒などに使われるエタノールには、ほとんど水がふくまれていないタイプもあります。これはエタノールという物質そのもので、水が溶媒になっていないため、水溶液とは言いません。
3-3. 固体が完全にとけていない場合
4. 水溶液かどうかを見分けるポイント
身の回りの液体を見たとき、「これは水溶液かな?」と考えると、化学の目線で物事を見る練習になります。見分けるときのポイントをまとめておきましょう。
4-1. 水がベースになっているか
まず、
- 原料や成分表示に「水」が多くふくまれているか
- 水でうすめて使うタイプかどうか
を見ると、だいたいの見当がつきます。飲み物や料理、洗剤などは、多くが水ベースで作られています。
4-2. どこをとっても同じか(一様かどうか)
コップの上からでも下からでも、
がほぼ同じなら、水溶液である可能性が高いです。
逆に、
- 時間がたつと成分が分かれてくる
- 上に油の層ができる
- 下に土や砂がたまる
といった場合は、水溶液ではなく「混ざっているだけ」の状態だと考えられます。
4-3. すきとおっているかどうか
すべてではありませんが、
ことが多いです。しょうゆやコーヒーのように色がついていても、コップごしに光が通るものは、細かく見ると透明な水溶液です。
一方で、
- 牛乳のように、光が通りにくく白くにごって見えるもの
- マヨネーズのようにどろっとしたもの
は、水溶液ではない場合が多いです。
ただし、「すきとおっている=必ず水溶液」とは限らないので、他のポイントと合わせて考えるとよいです。
5. まとめ:身近な水溶液と、水溶液ではないもの
最後に、この記事の内容を整理しておきます。
● 水溶液とは
- 水にほかの物質がとけた液体
- とけた物質は目に見えなくなり、どこをすくっても同じ濃さになっている
● 身近な水溶液の例
- 食塩水・砂糖水
- しょうゆ、みりん、料理酒、だし汁
- ジュース(透明なもの)、スポーツドリンク、炭酸飲料
- コーヒー、紅茶
- 食器用洗剤・液体洗たく洗剤・掃除用クリーナー
- うがい薬、生理食塩水、経口補水液
- 入浴剤を入れたお湯
● 水溶液ではないものの例
- サラダ油・ごま油などの油(油は水にとけない)
- マヨネーズ(油の粒が水の中に分かれた状態)
- 牛乳(脂肪の粒が水の中にうかぶ乳化液)
- どろ水・にごった川の水(砂や土がただまざっている)
- 水ではなく油やアルコールだけでできた液体(無水エタノールなど)
身の回りの液体を「これは水溶液かな?」「これはただ混ざっているだけかな?」と考えてみると、普段の生活が少し科学的に見えてきます。飲み物や調味料を手に取ったとき、成分表示や様子をじっくり観察してみると、新しい発見があるかもしれません。