2019年、当時環境大臣に就任したばかりの小泉進次郎氏がニューヨークで行った発言「気候変動問題はセクシーであるべきだ」が、日本中に衝撃と話題を巻き起こしました。
「なぜ“セクシー”?」「中身がない」といった批判が飛び交いましたが、実はこの表現には国際的な文脈があったことをご存じでしょうか?この記事では、その背景を丁寧にひも解き、真意や国内外での反応も含めて詳しく見ていきます。
2019年9月、小泉進次郎環境大臣は国連の「気候行動サミット」関連イベントで記者団に対し、以下のように発言しました。
「気候変動のような大きな問題は、楽しく、クールで、セクシーであるべきだと思う」
この「セクシー(sexy)」という単語に多くの日本人が驚き、「軽率だ」「意味がわからない」と批判が殺到。しかし、実はこの表現は彼自身が考えたものではありませんでした。
一見突飛にも思えるこの言葉ですが、国際政治の舞台では比喩的に使われることも多く、背景を理解することで印象は大きく変わってきます。
この「セクシー」という表現、元をたどると**国連の元幹部クリスティーナ・フィゲレス氏(コスタリカ出身)**が使っていた言葉です。
フィゲレス氏は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の事務局長を務めた経験を持ち、気候変動の議論をより多くの人に興味を持ってもらうために「climate change must be sexy(気候変動はセクシーであるべき)」というフレーズを使っていました。
小泉氏はこのフィゲレス氏と国連会議の場で接触しており、その際の対話や文脈からこの言葉を引用したと後に明かしています。つまり、この表現は国際的に共有されている考え方の一部だったのです。
さらに、欧米ではこうした表現が「政治的に魅力あるテーマにすべき」という意味で使われることも多く、直訳的に「性的な」意味としてとらえるのは適切ではない場合が多いのです。
英語圏における「sexy」には、単に性的な意味だけでなく、
といった比喩的な意味もあります。フィゲレス氏の使った“sexy”もこうした意味合いであり、小泉氏もそれを意図して使ったと考えられます。
しかし、日本語では「セクシー=性的に魅力的」というイメージが強いため、発言が浮いて聞こえたのも事実。
この文化的なギャップが、炎上の大きな要因となったのです。
また、小泉氏が発言後すぐにこの引用の出典や意図を十分に説明しなかったことも、混乱に拍車をかけたといえます。政治家の発言は一言一句が注目される中、説明責任の重さがあらためて浮き彫りになりました。
また、一部では「逆に注目を集めることができたという意味では発信力があった」という見方もあります。炎上も話題性の一つであるという点では、ある意味“セクシー”な効果を発揮したのかもしれません。
小泉進次郎氏の「セクシー発言」は、元をたどれば国連の幹部が使った国際的な表現を引用したものであり、決して突飛な造語ではありませんでした。
しかし、日本のメディアや大衆の受け取り方には文化的なギャップがあり、「引用の意図」や「本来の意味」が十分に伝わらなかったのが、混乱と炎上の原因でした。
政治家に求められるのは、たとえ引用であってもその背景を分かりやすく伝える説明力。
また、異文化間の言葉のニュアンスの違いを理解し、適切にローカライズする力も重要です。
「セクシー発言」は、言葉選びの難しさと、国際政治における“翻訳される文化”の課題を浮き彫りにした事例と言えるでしょう。