6月30日トランプ政権は、ロサンゼルス市が【聖域都市条例】により不法移民に対して寛大な政策をとっているため連邦政府による移民法の執行が妨害されているとして同市を提訴しました。
アメリカのニュースや国際報道で頻繁に登場する言葉に「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」があります。移民政策をめぐる政治的対立の象徴ともいえるこの概念、一体どんな意味があるのでしょうか?本記事では、サンクチュアリ・シティー条例の基本的な内容や背景、そして現在進行中の訴訟問題まで詳しく解説します。さらに、各都市の具体例や歴史的背景、影響についても深堀りします。
「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」とは、移民当局(ICE:移民・税関執行局)との連携を制限する都市や地方自治体を指す呼称です。例えばシカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコも聖域都市として知られています。これらの都市は、それぞれ独自の法律や政策で移民保護を行っており、文化的多様性の保護や経済的メリットを強調しています。
聖域都市には、教育機関や医療機関も移民の地位を問わずサービスを提供するなど、社会全体で移民を支える体制があります。また、警察が犯罪捜査に集中できるよう移民取り締まりを分離する狙いもあります。こうした背景から、移民政策における連邦と地方の対立が深まってきました。
背景には、不法移民の急増と、移民政策をめぐる激しい政治論争があります。移民コミュニティが警察を恐れて犯罪被害を届け出ないケースが増えることで、かえって治安が悪化するという懸念も大きいです。また、人道的立場から家族分断を避けるべきだという声も強まりました。
さらに、地方自治を尊重するフェデラリズムの考え方が影響しています。地方政府が独自に治安維持方針を決定する権限を主張し、連邦政府の移民取り締まり方針に反発する動きが各地で強まってきました。
聖域都市条例は都市によって内容は異なりますが、共通するポイントは以下の通りです:
これにより、移民コミュニティとの信頼関係を維持し、地域治安の安定を図る意図があります。一部の都市では移民向けの無料の法的支援やホットラインを設置する例もあり、移民保護の取り組みは多岐にわたります。
2025年6月30日、トランプ政権はカリフォルニア州ロサンゼルス市を連邦地裁に提訴しました。訴状によれば、ロサンゼルス市の聖域都市条例が連邦移民法に違反し、ICEによる移民摘発を妨げ、公共の安全を脅かすと主張しています。
トランプ政権は、憲法の「最高法規条項(Supremacy Clause)」に基づき、連邦法が地方条例より優先されると主張しています。これに対し、ロサンゼルス市は条例が合法であり、移民コミュニティを保護するために不可欠だと反論しています。この訴訟は、全米の聖域都市政策に大きな影響を与える可能性があり、今後の行方が注目されています。
ロサンゼルス市の聖域都市条例では、市警察が軽犯罪で逮捕した人の移民状況をICEへ報告することを禁止し、市の予算や人員を連邦の移民摘発活動に使わない方針が明記されています。市議会は移民コミュニティの信頼維持を最優先とし、移民が安心して暮らせる社会を目指しています。
市には多くの移民が居住し、地域経済を支える労働力ともなっています。今回の訴訟は、ロサンゼルス市の移民政策が連邦法に違反しているというトランプ政権の主張に基づいていますが、市側は強く反発しています。結果次第では、他の聖域都市にも波及する可能性があります。
この対立は、今後の大統領選や議会選でも大きな争点となるでしょう。
聖域都市政策は、1980年代の中南米からの難民保護運動に端を発します。当時、教会や市民団体が移民を保護する「サンクチュアリ運動」を展開し、連邦政府との対立が顕在化しました。その後、9.11テロ事件以降、移民政策が厳格化し、地方自治体が独自に移民を保護する動きがさらに強まりました。
今回のロサンゼルス市への提訴は、移民政策における連邦と地方の権限争いの最新の局面です。判決の行方は、全米の移民政策の方向性を左右する可能性があり、引き続き注視が必要です。
サンクチュアリ・シティー条例は、アメリカが抱える移民問題と地方自治のせめぎ合いの象徴です。人道的立場と治安確保の狭間で、都市や州ごとの対応は揺れ動き、今回のロサンゼルス市への提訴はその最新の表れです。
今後の訴訟の行方は、米国内の移民政策全体に大きな影響を与える可能性があります。引き続き注目していきましょう。