ふるさと納税「ポイント廃止」なぜ起
背景・理由・影響・いつまで・これから
要点サマリー
- 2025年10月1日から、仲介ポータルサイト(楽天など)による独自ポイント付与を通じた寄附募集が事実上禁止に。9月末で各サイトのポイント施策は終了が相次ぎます。
- 総務省は「過熱した寄附獲得競争が制度の趣旨(地域応援)を損なう」と判断。併せて“募集費用の透明化”や“地場産品基準の明確化”など、指定基準の見直しを公表しています。
- クレジットカードの“通常”ポイントやマイルは対象外(=今後も付与される)。禁止の主対象はポータル独自の上乗せポイント/ギフト券です。
- 2025年7月、楽天グループは総務省告示の無効確認を求めて提訴。ただし政府側は「10月から適用」の姿勢を維持し、9月には楽天も「10月からポイント付与終了」を発表。
1. 何が「廃止」されるのか?対象の整理
今回の見直しで禁止されるのは、ポータルサイト(仲介事業者)側が付与する独自ポイント等を“テコ”にした寄附募集です。たとえば楽天ポイント・PayPayポイント・サイト内コイン、Amazonギフト券コードなど金銭等価の特典が想定されます。総務省は**「寄附に伴いポイント等を付与する者を通じた募集を禁止」**と明記(2025年10月1日適用)。
一方で、クレジットカード会社が通常付与するポイントやマイルは対象外と案内されています(寄附決済の通常付帯分)。つまり、ポータルの上乗せはNGだが、カード会社の通常ポイントは引き続き付与、という理解でよいでしょう。
2. いつから?今年(2025年)の“駆け込み”が起きている理由
- 発効日:2025年10月1日
- 実務上の区切り:多くの大手ポータルが2025年9月末でポイント付与を終了(申込完了ベース)。ITmediaやImpressなどでも「9月がピーク」との見出しが並びます。
具体例:楽天は9/1時点で、10/1以降はポイント付与終了を公式発表。
3. なぜ廃止するのか?──総務省の論点
(1) 制度の趣旨が損なわれる(過熱競争の抑制)
ふるさと納税は「地域の応援」が趣旨。ところが高率ポイント・ギフト券合戦が寄附の意思決定を大きく歪め、自治体間やポータル間の“過熱競争”を招いた、と総務省は評価。「制度の趣旨を損なう」との理由から事実上の禁止に踏み切りました。
(2) 募集費用の透明化(“見えないコスト”を抑制)
2025年6月公表の見直しでは、募集費用の透明化が掲げられました。返礼品コストや送料、システム・広報費等の合算が寄附額の5割以内という枠組みは既存(2019~/2023年の厳格化)ですが、ポイント原資が事業者負担でも、結局は手数料設計に転嫁されうるとの指摘が強く、費用の見える化と行き過ぎた販促の抑制が狙いです。
(3) 地場産品基準の明確化(返礼“モノ/体験”の地域性を厳格に)
同じ見直しパッケージの中で、地場産品基準や付加価値の算出方法の明確化も実施。**“地域で価値の過半が生じているか”**を厳しく問うことで、本来の地域振興へ資源を戻すねらいがあります。
4. 反発と訴訟──楽天の提訴と政府の姿勢
- 2025年7月10日:楽天グループが総務省告示の無効確認を求め提訴。「委任の範囲逸脱・裁量権濫用」などを主張。
- ただし政府側は**「10月から適用」**の方針を維持し、スケジュールは動かず。9月1日には楽天自身も10月以降のポイント付与終了を発表。
訴訟の帰趨は未確定ですが、2025年10月施行という“足元の実務”は変わらない前提で各社が動いています。
5. 生活者への影響:何が変わり、何が残る?
変わること
- ポータル経由の上乗せポイントやギフト券が不可に。
- **「ポイント〇%還元だからこのサイトで」**という選び方のインセンティブが大幅に縮小。
残る/引き続き可能なこと
- クレジットカードの“通常”ポイント/マイルは対象外(=今後も付与)。決済手段の選択での“通常”メリットは継続します。
※一部の“倍率キャンペーン”等の扱いは、各社の実務運用と告示解釈に左右されます。最新告知をご確認ください。
6. 今年(2025年)の寄附の作戦
- 9月末までにポイント活用を終える(サイト告知に従って締切・対象条件を確認)。
- 10月以降は、**返礼品の内容・自治体の使途・手続きのしやすさ(ワンストップのオンライン化など)**でサイト/自治体を選ぶ視点がより重要になります。
7. 歴史的な流れ(ざっくり年表)
- 2019年~:返礼割合3割以下・地場産品などの原則を制度に明確化。
- 2023年10月:経費5割ルールの厳格化や地場産品の取扱い厳格化。自治体の“募集経費”の定義も広がり、返礼率調整が進む。
- 2025年10月:ポータルの独自ポイント付与を禁止へ。加えて、募集費用の透明化・地場産品(付加価値)基準の明確化など、総務省が指定基準の見直しを公表。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 10月以降、すべてのポイントが一切もらえなくなるの?
A. いいえ。ポータル独自の上乗せポイントが主な禁止対象です。クレジットカード会社の“通常”ポイント/マイルは対象外とされています。
Q2. 9月末までに申し込めばポイントは必ず付く?
A. 各サイトごとに適用条件(申込完了/決済完了/寄附受付日)が異なるため、必ず公式告知の条件・期日を確認してください。多くの大手は9月末終了を告知。
Q3. なぜここまで厳しくなった?
A. 高率ポイント合戦などの過熱競争が制度の趣旨(地域応援・地域経済の活性化)を損なうと判断され、募集費用の透明化や地場産品基準の厳格化とセットで適正化が進んだためです。
Q4. 今後は何を基準にサイト/自治体を選べばいい?
A. ポイント依存が薄れる分、返礼品の品質・地域性、寄附金の使途の透明性、ワンストップ申請のしやすさなど本質的な価値で比較する時代になります。
9. これからのふるさと納税の“良い使い方”
- **地域性(地場産品/付加価値の所在)**を重視
- **寄附の使途(子ども・防災・福祉・環境)**が自分の関心に合う自治体を選ぶ
- 手続き負担の軽さ(オンラインワンストップ、証明書の発行方法など)をチェック
- 決済手段の通常ポイント/マイルは引き続き活用(ただし“特例キャンペーン”の扱いは各社発表に従う)
ひと言まとめ
「ポイントで選ぶ時代」から「地域の価値で選ぶ時代」へ。
ふるさと納税は原点回帰します。9月以降は、地域のストーリーや使途をじっくり見て“推し自治体”を育てるのが、いちばん賢い楽しみ方になりそうです。