近年、「晴海フラッグは中国人だらけ」「チャイナタウン化している」といった強い言葉が、SNSや一部メディアで目につくようになりました。
しかし、実際のところ晴海フラッグは本当に“中国人だらけ”なのでしょうか。登記情報をもとにした調査や、現地の様子を伝える記事を丁寧に追っていくと、ネット上で語られているイメージとはかなり違う姿が見えてきます。
この記事では、
といった点を、なるべく感情論ではなく事実ベースで整理していきます。
まずは前提として、晴海フラッグがどのようなプロジェクトなのかを簡単に整理しておきます。
ところが、販売が始まると抽選倍率が非常に高くなり、「当選した人はラッキー」「宝くじマンション」といった言葉も飛び交う状態に。完成後は転売や投機目的の購入も相次ぎ、価格の急騰が大きなニュースになりました。
こうした経緯から、晴海フラッグは
「投資家に食い尽くされた街」
というイメージで語られることも多くなり、そのなかで「海外投資家」「中国人富裕層」といったキーワードが強調されるようになっていきました。
晴海フラッグに関して「中国人だらけ」といった表現が出てくる背景には、いくつかの要素が重なっています。
YouTubeやSNS上には、
といった、インパクトの強いタイトルやサムネイルの動画も多く見られます。
こうした表現は、事実を冷静に伝えるというよりも、視聴回数を稼いだり、危機感や怒りの感情を刺激したりすることに重きが置かれているケースも少なくありません。
晴海フラッグに限らず、豊洲・有明など湾岸タワーマンションでは、近年、中国人を含む外国人投資家の購入が増えたことは事実です。
といった要因が重なり、「中国人富裕層による都心タワマンのインバウンド購入」が話題になりました。
この“湾岸タワマン全体のイメージ”と、晴海フラッグの話題が混ざり合い、「晴海フラッグ=中国人だらけ」という単純化されたイメージが形成されている面があります。
中国の大型連休である「国慶節」の時期になると、日本各地で中国人観光客が増えますが、晴海フラッグ周辺でも多くの観光客が見られたと報じられています。
などを目の当たりにすれば、「中国人ばかり」という印象だけが強く残ってしまうのも無理はありません。
しかし、こうした現象は“ある時期に集中している”ことが多く、常にその状態が続いているとは限りません。
では、感覚ではなくデータベースに基づいて、所有者の実態を見てみましょう。
NHKなどの調査報道や不動産専門メディアによる登記簿調査では、晴海フラッグの一部棟(約1000戸規模)について、所有者の名義を一つひとつ確認しています。
その結果、
という構成が報じられています。
もちろん、調査対象の棟や時点によって多少の差はありますが、少なくとも
「ほとんどが中国人オーナーで、日本人は少数派」
といったイメージとはかなりかけ離れています。
また、「中国人オーナー=すべて投機目的」と決めつけるのも正確ではありません。実際には、
など、実需(自分たちが住む目的)で購入しているケースも存在します。
もう一つ大事なのは、
「登記上の所有者」と「実際に住んでいる人」は必ずしも同じではない
という点です。
日本人オーナーが投資目的で購入し、
もあるため、「外国人オーナーの数=外国人居住者の数」ではありません。
このように、所有者構成を冷静に見ると、「晴海フラッグは中国人だらけ」という言い方は、データとは整合しないことが分かります。
一方で、晴海フラッグを巡って本当に問題になっているのは、
といった“ビジネス”です。
日本では、住宅宿泊事業法や旅館業法などにより、
民泊であれば合法ですが、
といった形態は違法となります。
晴海フラッグでも、
などが報告され、「違法民泊ではないか」と住民が疑念を抱くケースが出てきました。
報道の中には、こうした違法民泊の一部が、
と指摘するものもあります。
しかし、ここで注意したいのは、
問題なのは「違法民泊というビジネスモデル」であって、 「中国人だから」悪いわけではない
という点です。
違法民泊を運営しているのが日本人であれ外国人であれ、法律に反していることには変わりません。本来は、国籍ではなく「違法行為かどうか」で線引きすべき問題です。
一部メディアでは、晴海フラッグの住民が腕章をつけた「自警団」を組織し、
といった活動を行っている様子も報じられました。
こうした“対立的な場面”だけが切り取られると、
「中国人観光客vs日本人住民」の対立
という図式で消費されてしまいがちですが、実際には、
はまったく別の存在です。
この違いを意識せずに「中国人」という大きな括りで語ってしまうと、
まじめに生活している人までまとめて悪者にしてしまう危険があります。
一方で、実際に晴海フラッグに住んでいる人の中には、
といった声も多くあります。
現地のレポートでは、
といった姿が伝えられています。
つまり、
「中国人が多い = 無法地帯」
という単純な図式は、実態をかなりゆがめたものだと言えるでしょう。
もちろん、違法民泊やマナーの悪い観光客に悩まされている住民がいるのも事実ですが、それと
を同一視するのは、公平とは言えません。
「晴海フラッグ 中国人だらけ?」という言い方には、いくつかの問題点があります。
登記簿の調査から見える外国人オーナーの割合はおおむね1割前後であり、「だらけ」と言える数字ではありません。それにもかかわらず、
だけを見て「中国人に占拠された」と断定してしまうのは、事実より“雰囲気”を優先してしまっている状態です。
晴海フラッグの本質的な問題は、
といった構造的な問題です。
ここに、日本人投資家も外国人投資家も関わっており、国籍だけで善悪を分けられる話ではありません。
にもかかわらず、
「すべて中国人のせいだ」
といった言い方をしてしまうと、
など、本来議論すべきテーマから目をそらしてしまうことになりかねません。
「中国人だらけ」「中国人が街を壊している」といった過激な表現は、
多くの外国人居住者に対する偏見や敵意を生みやすくなります。
結果として、
など、地域コミュニティにとっても良くない空気をつくってしまいます。
ここまで見てきた内容を踏まえて、「晴海フラッグは中国人だらけなのか?」という問いにあらためて答えてみます。
つまり、
晴海フラッグはたしかに外国人(中国人を含む)の存在感がある“グローバルな街”だが、 「中国人だらけ」「占拠された」といった言い方は、 データ的にも現場の声から見ても行き過ぎである
とまとめることができるでしょう。
最後に、晴海フラッグという街とどう向き合うべきかを考えてみます。
を象徴する例でもあります。これを特定の国のせいにするのではなく、税制や規制、都市計画のあり方など、社会全体で考えるテーマとして捉えることが重要です。
「晴海フラッグは中国人だらけ」と言われるようになった背景には、
が濃縮されています。
しかし、その裏側には、
が横たわっています。
「晴海フラッグは中国人だらけ」という一言で片付けてしまうのではなく、
を冷静に考えていくことが、晴海フラッグをめぐる本当の意味での“解決”につながっていくのではないでしょうか。