2025年、トランプ米大統領が国防総省(Department of Defense)の名称を「戦争省」に変更するという大統領令に署名する意向を示し、日本でも「戦争省って英語で何て言うの?」という関心が高まっています。
結論から言えば、「戦争省」は英語で Department of War(ディパートメント・オブ・ウォー) と言います。
この記事では、その正確な英語表現と使われ方、アメリカにおける歴史的背景、さらに似たような用語との違いについてもわかりやすく解説します。
例:
The United States created the Department of War in 1789.
「Department of War」は、アメリカ政府の歴史上、実際に使われていた公式な省庁名です。
年代 | 名称 | 解説 |
---|---|---|
1789年 | Department of War 設立 | アメリカ初期の軍事行政を担う省として設立(主に陸軍) |
1947年 | 国家安全保障法による再編 | 空軍創設・統合指揮体制へ移行。国防機構再編の第一歩 |
1949年 | Department of Defense(国防総省)に改称 | Department of War は廃止され、DoD に統合される |
現在、アメリカには「Department of War」という名称の省庁は存在しませんが、1949年以前の資料や歴史的文脈では頻繁に登場します。
どちらも「戦争省」を意味しますが、公的には “Department of War” が正解です。
例えば:
アメリカ以外の国では「Department」ではなく「Ministry(省)」を使うケースが多く、
という表現が使われてきました。
英語表現 | 対応する国・制度 |
Department of War | アメリカ(〜1949年) |
Ministry of War | イギリス、日本など「省」制度を持つ国 |
トランプ米大統領が、アメリカ国防総省(Department of Defense)の名称を「戦争省(Department of War)」に変更する大統領令に署名する予定であると報じられました。この決定は、国内外で大きな波紋を広げています。
この時期に合わせた発表には、いくつかの戦略的意図があると考えられます。
まず、政権発足後の「変革アピール」の一環として、象徴的な政策を次々に打ち出す姿勢の一つです。トランプ氏はこれまでも、省庁や施設名の「実態と乖離した名称」に対して疑問を呈しており、今回の動きもその延長線上にあります。
また、秋の中間選挙を前にして、共和党支持層に対して強いメッセージを発信する狙いもあるとみられています。「戦争省」という直截的な呼称は、軍事力を積極的に活用するという姿勢を明確に示し、「強いアメリカ」を印象づける効果が期待されているのです。
大統領令によって省庁の呼称を即時変更することはできず、正式な名称の改定には議会の立法措置が必要となります。
現在、上下両院では共和党が辛うじて多数派を占めていますが、名称変更という大きな改定には一部の穏健派共和党議員や民主党からの反発も予想されます。したがって、今後の鍵を握るのは、
など、複数の要素をクリアする必要があります。
また、仮に法的名称が変わらなかったとしても、「副称としての使用」が許可されている以上、事実上「戦争省」という呼び名がメディアや公的場面で定着する可能性はあります。
「国防総省(Defense)」という名前には、「攻撃ではなく防衛に徹する国家姿勢」を象徴させる意味が込められていました。
しかし、「戦争省(War)」という表現には、それとは対照的な「攻撃性」「積極性」「覇権主義的な態度」を連想させるニュアンスがあります。名称の変化は単なるレトリックに留まらず、アメリカが世界に向けてどのような戦略的スタンスを示すかという、象徴的メッセージにもなり得ます。
これは単なる言葉の選択にとどまらず、アメリカの「軍事力の定義」や「安全保障政策の哲学」にまで波及する議論を呼び起こす可能性があります。
戦後の国際社会では「強い軍策」よりも「安全保障」や「防衛」が重視されるようになり、「戦争省」というなまな表現が国際的にも嫌われ始めました。
そこで、分散していた軍統管理系統を一つに統合し、安全保障の統總を担う組織として “Department of Defense”が設立されました。
第二次世界大戦中、アメリカ国民の間では「Department of War」よりも「War Department」という通称の方が広く使われていました。例えば、戦時中のポスターや新聞の見出し、ラジオのニュースなどでは「War Department」の呼称が頻繁に登場しました。これは、国防という国家の喫緊の課題が、より親しみやすい言葉で伝えられていたことを示しています。
アメリカ初代大統領であるジョージ・ワシントンは、独立後の軍事行政の重要性を強く認識していました。そのため、彼は大統領就任直後の1789年に「Department of War」を創設する法案に署名し、初代戦争長官(Secretary of War)にヘンリー・ノックスを任命しました。これは、新しい国家が自国の安全を確保するための、最初の重要な行政措置の一つでした。
創設当初、「Department of War」は陸軍と海軍の両方を管轄していました。しかし、海軍の重要性が高まると、1798年には独立した「海軍省(Department of the Navy)」が設立され、「Department of War」は主に陸軍を管轄するようになりました。これは、各軍種に特化した行政機構を設けることで、より効率的な軍事運営を目指したアメリカの軍事組織の歴史を物語っています。
イギリスにも、かつて「戦争省」にあたる組織として「War Office」が存在しました。しかし、この「War Office」はアメリカの「Department of War」とは異なり、省(Ministry)というよりは「王立陸軍の統轄機関」という色彩が強い組織でした。1964年に「国防省(Ministry of Defence)」が設立されるまで、イギリス陸軍の最高司令部として機能していました。
第二次世界大戦後、日本ではGHQの指導により「戦争」を想起させる言葉を排除する動きが加速しました。そのため、旧日本軍の「陸軍省(Ministry of War of the Army)」と「海軍省(Ministry of War of the Navy)」は解体され、現在の「防衛省」へと繋がる組織が設立されました。これは、アメリカだけでなく、敗戦国である日本でも、戦後の平和主義的な流れの中で「戦争」という言葉が忌避された歴史的事実を物語っています。