人工ダイヤモンド製造メーカー(日本企業)
人工ダイヤモンド(合成ダイヤモンド、ラボグロウンダイヤモンド)は、宝飾用途だけでなく、放熱材・光学部品・切削工具・半導体基板(ダイヤモンド半導体/基板)など、産業用途での存在感が年々大きくなっています。特に近年は、従来の「宝石の代替素材」というイメージを超えて、次世代半導体材料・高性能熱対策材料としての期待が高まっています。
人工ダイヤモンド製造メーカーといえば日本の企業ではどこなのでしょうか?
本記事では、日本で人工ダイヤモンドを製造する企業を軸として整理しつつ、読者が気にしがちな 「どの銘柄に投資妙味が出やすいのか(株式投資の観点)」も、見方・チェックポイントとしてまとめます。単なる企業名の羅列ではなく、なぜその企業が注目されるのかという視点も重視します。
※投資判断の最終決定はご自身で。ここでは“企業・事業構造の整理”と“調べ方”、およびセクター理解に重点を置きます。
人工ダイヤモンドの主な製法(CVD / HPHT)
人工ダイヤモンドの事業性は、ざっくり **「どの製法で、どの品質帯を、どの用途に出すか」**で大きく変わります。同じ「合成ダイヤモンド企業」でも、狙う市場によって競争環境は全く異なります。
- HPHT法(高温高圧)
- 天然ダイヤが生成される環境(高温・高圧)を人工的に再現し、結晶を成長させる方式。
- 比較的歴史が長く、工具用途や宝飾用途など広範囲で活用。
- 大量生産・コスト競争の影響を受けやすい側面もある。
- CVD法(化学気相成長)
- 真空チャンバー内で炭素系ガスを分解し、種結晶表面に炭素を堆積させて成長させる方式。
- 高純度・大型単結晶・機能性材料に適し、研究開発色が強い領域。
- 単結晶基板・光学窓・高機能放熱材などハイエンド用途で重要。
投資目線では、
- 宝飾寄り(景気・消費動向・ブランド価値の影響)
- 産業寄り(半導体投資・設備投資サイクルの影響)
どちらに比重があるかが極めて重要です。宝飾市場と半導体材料市場では、価格決定メカニズムもリスク構造も異なります。
日本企業中心:人工ダイヤモンド“製造”の主要プレイヤー

ここでは「合成ダイヤモンドを育成(成長)させる」「単結晶/基板として供給する」など、比較的素材・川上寄りの企業を中心に整理します。
1)イーディーピー(EDP)【上場】
位置づけ:合成ダイヤモンドの種結晶、研究用基板、放熱材、光学用途材料などを供給する専業色の強い企業。
- 強みの見方
- CVD成長で中核となる「種結晶」領域を押さえる点は技術的に重要
- 川上寄り企業は、供給制約が競争優位になる可能性がある
- 半導体用途は将来性が大きい一方、立ち上がりには時間を要する
- 投資目線のチェックポイント
- ① 売上の用途別内訳(研究用途・産業用途・その他)
- ② 設備投資・生産能力拡張の状況
- ③ 顧客の評価段階(研究段階か量産段階か)
- ④ 技術優位性が価格競争で毀損しないか
2)住友電気工業(住友電工)【上場】
位置づけ:CVDダイヤモンド材料や関連製品を、放熱・電子部品・半導体周辺用途などで展開する大手材料メーカー。
- 強みの見方
- 材料開発・プロセス技術・量産ノウハウの蓄積
- 既存事業とのシナジー(実装材料、電子部品等)
- 新素材が成功した際のスケール展開力
- 投資目線のチェックポイント
- ① ダイヤモンド関連事業の規模感(全社に対する比率)
- ② 成長が株価に反映されるまでの時間軸
- ③ 景気変動耐性(事業分散のメリット)
3)Orbray(オーブレー)【非上場】
位置づけ:工業用宝石・単結晶材料・基板加工で知られる技術系企業。大口径ダイヤモンド基板の分野で言及されやすい。
- 強みの見方
- 育成から加工までの一貫技術を持つ企業は品質面で有利
- 基板市場では「欠陥密度」「サイズ」「供給安定性」が鍵
- 海外提携・共同研究の動向は重要な観察点
- 投資目線のチェックポイント
- ① 非上場のため直接投資不可
- ② 関連する上場企業・取引先から間接的に読む
4)AIRIX(アイリックス)【非上場】
位置づけ:CVD合成ダイヤモンドを製造し、研究用途・宝飾用途などへ展開。技術供与モデルも特徴的。
- 強みの見方
- 研究機関との関係が深い企業は新用途開拓に強み
- 下流工程(研磨・製品化)を持つ場合、付加価値確保に有利
- 投資目線のチェックポイント
- ① 宝飾寄りか材料寄りかで評価軸が異なる
- ② 非上場のため市場評価は限定的
「製造」ではないが、投資テーマとして近い日本の上場企業(周辺銘柄)

人工ダイヤモンド市場では、直接の育成企業よりも周辺企業の方が安定成長するケースも珍しくありません。
A)旭ダイヤモンド工業【上場】
- ダイヤモンド工具・砥粒・焼結体など産業用途が広い
- 景気循環の影響を受けつつも用途分散が効きやすい
B)ディスコ(DISCO)【上場】
- 半導体加工装置・ダイシング工具の世界的企業
- 人造ダイヤ砥粒は重要部材であり、半導体投資と連動しやすい
C)Mipox(マイポックス)【上場】
- 精密研磨・加工分野で独自ポジション
- ダイヤモンド基板関連の加工工程で言及されやすい
周辺銘柄は「人工ダイヤモンドの普及」という長期テーマを、比較的低リスクで取り込める可能性があります。
投資家向け:人工ダイヤモンド銘柄の“見分け方”
人工ダイヤモンドは用途ごとに市場構造が異なります。テーマ投資の際は、業界のどの層に投資しているかを意識することが重要です。
1)どの市場に強い?(宝飾 / 産業 / 半導体)
- 宝飾:流通・ブランド・消費心理が支配的
- 産業:機能・耐久性・コスト効率が重要
- 半導体:採用ハードルは高いが成功時の市場規模が大きい
2)川上か、川中か、川下か
- 川上:技術・供給制約が競争優位要因
- 川中:品質管理・加工精度・歩留まりが鍵
- 川下:顧客認証・規格適合・量産対応力が重要
3)KPI(重要指標)を決めて追う
- 生産能力・設備投資
- 用途別売上比率
- 顧客採用進捗
- 市場価格動向
4)ニュース解釈の注意点
- 研究成果 → 収益化まで時間差あり
- 試作評価 → 採用可否が不透明
- 量産供給 → 事業安定性が増す
まとめ:日本で見るなら「EDP」「住友電工」を起点に全体構造で読む
人工ダイヤモンド関連銘柄を国内で検討する場合、性格の異なる企業を対比的に理解することが重要になります。
- 専業・素材寄りで読む:EDP
- 合成ダイヤモンドというニッチ分野に集中しているため、事業の純度が高い
- 成長が実現した場合、業績インパクトが株価に直接反映されやすい
- 一方で市場拡大が想定より遅れた場合の変動も大きくなりやすい
- 大企業・材料戦略で読む:住友電工
- 全社規模が大きく、ダイヤモンド関連はポートフォリオの一部という位置づけ
- 新素材が収益寄与するまで時間がかかっても企業全体への影響は限定的
- 安定性・分散効果を重視する投資家にとっては見やすい選択肢になり得る
- 非上場企業は“技術トレンドの観測装置”として活用
- OrbrayやAIRIXのような技術企業の動向は、市場の将来方向を示すヒントになりやすい
- 提携・共同研究・採用事例などを追うことで、上場企業の潜在機会を読み解ける
企業調査では、短期的な技術ニュースや話題性だけに反応するのではなく、
- 継続的な売上に繋がる用途を持っているか
- 顧客基盤が安定しているか
- 生産能力・供給安定性に無理がないか
といった事業継続性・顧客構造・供給能力を重視する視点が有効です。人工ダイヤモンド分野は期待が先行しやすいテーマであるため、特に「量産」「継続供給」「用途拡大」といった実体面の確認が重要になります。
付録:企業リスト(簡易)
| 企業 |
上場/非上場 |
立ち位置(ざっくり) |
| イーディーピー(EDP) |
上場 |
種結晶・基板・応用製品 |
| 住友電気工業(住友電工) |
上場 |
CVDダイヤ材料・産業用途 |
| Orbray(オーブレー) |
非上場 |
単結晶材料・基板加工 |
| AIRIX(アイリックス) |
非上場 |
CVD合成・研究/宝飾用途 |
| 旭ダイヤモンド工業 |
上場 |
ダイヤ工具・砥粒 |
| ディスコ(DISCO) |
上場 |
半導体加工工具・装置 |
| Mipox(マイポックス) |
上場 |
精密研磨・加工 |