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女子高生籠の鳥事件

女子高生籠の鳥事件

女子高生籠の鳥事件とは?

半年間監禁された少女が“逃げなかった”理由とは?

1965年に東京で発生した「女子高生籠の鳥事件」は、日本中に衝撃を与えた異常な誘拐監禁事件です。被害者は高校3年生の女子生徒、加害者は40歳の無職の男。彼女は半年間監禁されながらも、逃げるチャンスを自ら放棄したことで、事件は「籠の鳥事件」と呼ばれ、社会心理学的にも注目を集めました。その特殊な構図はメディアを通じて社会に大きな波紋を広げ、今なお記憶に残る犯罪の一つとして語り継がれています。


事件の概要

  • 🕰 発生日時:1965年11月25日
  • 📍 場所:東京都豊島区・椎名町駅周辺
  • 👤 被害者:共栄女子商業高校に通う17歳の女子高生
  • 👤 加害者:角園九十九(すみぞの・つくも)、当時40歳の無職男性

その夜、女子高生は学校からの帰宅途中、西武池袋線椎名町駅付近で、角園という中年男性に突然襲われ、金属製の靴べらで脅されながら自宅アパートに連れ込まれました。角園はかつて知人女性のストーカー行為で処分歴があった人物で、強い支配欲と独占欲を抱いていたとされます。彼は少女を自室の六畳間に閉じ込め、徐々に精神的な支配を強めていきました。

監禁生活は半年にも及びましたが、角園は完全に外部との接触を断っていたわけではなく、少女を時折外出させたり、手紙を書かせたりと、ある程度の自由を与えていた形跡もありました。このため、少女がなぜ逃げなかったのかという点に注目が集まりました。


なぜ「逃げなかった」のか?

当初は恐怖による支配があったとされますが、時間が経つにつれ、少女は次第に角園の存在に慣れ、行動を共にするようになります。外出時には一人で買い物に行かせることもあったとされ、逃げる機会は明らかに存在していました。

この不可解な行動に対して、心理学的に説明される概念が「ストックホルム症候群」です。これは誘拐や監禁の被害者が加害者に対して好意的な感情を抱いてしまう心理状態で、強いストレス下にある人間が生き延びるために本能的に取る行動の一つとされています。

一部の報道では、角園が家庭的な一面を見せ、少女に対して「お前しかいない」「一緒にいられるだけで幸せだ」といった言葉を繰り返し語っていたことが記されています。さらに、少女が日常的な家事を任されたり、まるで“妻”のような役割を演じさせられていたことも報告されています。このような状況下で、少女は徐々に“選ばれた存在”という錯覚や自分が必要とされているという感覚を抱くようになり、情緒的な依存関係が形成された可能性があります。

また、角園は暴力的な威圧ではなく、穏やかで優しい口調を用いながら、時折贈り物を与えるなどの行為もしていたとされ、心理的な報酬と罰を交互に与える“ミックスド・メッセージ”によって少女の判断力を混乱させていた可能性もあります。こうした巧妙な心理操作により、加害者が少女の罪悪感や恐怖心を薄め、逆に自己肯定感を与えるように振る舞っていたとすれば、少女は加害者の存在に精神的な逃げ場を求めてしまい、結果として逃亡という選択肢が見えなくなっていたと推察されます。


事件の発覚と社会的反響

1966年5月、ついに事件は発覚します。女子高生がたまたま外出中に交番で保護され、身元確認によって捜索中の少女であることが判明。半年に及ぶ監禁生活がようやく終わりを迎えました。

彼女の家族は長らく行方不明届を出しており、警察も捜索を続けていたものの、まさか都内で生活していたとは思いもよらなかったと言います。事件は大々的に報じられ、加害者の人物像、被害者の心理状態、学校・家庭・警察の対応が社会的に問われました。

「なぜ逃げなかったのか」という問いかけは、単なる好奇心を超えて、被害者心理に対する理解不足や、性被害における“加害と同意の誤解”に関する根深い問題を浮き彫りにしました。


映画・書籍化もされた衝撃の事件

🎬 映画『完全なる飼育』(1999年)
この事件をモチーフにしたとされる作品で、監禁された少女と加害者との奇妙な関係をセンシティブに描いています。主演は小島聖。映像美と重苦しい空気感が話題を呼び、単なる事件再現にとどまらず、人間の心の闇に踏み込んだ作品として評価されました。

📖 書籍『女子高校生誘拐飼育事件』(松田美智子著)
幻冬舎アウトロー文庫から出版されたノンフィクション作品。被害者と加害者の証言、裁判記録、周囲の証言などをもとに事件の全貌を明らかにしており、事件の背景や社会的文脈まで深く掘り下げています。

このように、文学や映像の世界にまで波及した本事件は、その特異性ゆえに、現代における「メディアと犯罪」の議論にも一石を投じました。


まとめ:なぜ今も語り継がれるのか?

「女子高生籠の鳥事件」は、単なる誘拐監禁事件ではなく、人間の心理、加害と被害の境界、そして社会が被害者に求める“理想像”を問い直す契機となる事件でした。なぜ逃げなかったのかという視点だけでなく、「逃げられなかった理由」に目を向けることで、被害者への理解と支援のあり方を見直す必要性が浮かび上がります。

また、こうした事件を通して私たちは、日常のなかに潜む支配と依存、信頼と恐怖が交差する人間関係の複雑さについても学ぶことができます。現代においても家庭内暴力やデートDVなど、見えにくい形の支配関係が問題となっており、本事件はその根本を考える手がかりとなるでしょう。


 

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