生ドーナツ専門店「PIECE OF BAKE(ピースオブベイク)」や人気カフェ「YORKYS BRUNCH」などを展開してきた株式会社Yorkys Entertainmentが、2026年10月6日付で事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったことが報じられました。
同社の代表取締役を務めてきたのが、板倉洋輔(いたくら ようすけ)氏です。
板倉氏は、もともと飲食業界出身の経営者ではありません。大学卒業後に医療系人材紹介会社へ入り、その後自ら人材関連会社を起業。さらに、オーストラリアで体験したカフェ文化を原点として飲食業界へ転身し、「YORKYS BRUNCH」を立ち上げました。
この記事では、板倉洋輔氏の大学時代から起業、YORKYSブランドの拡大、人気生ドーナツ店「PIECE OF BAKE」の展開、そして2026年10月に明らかになったYorkys Entertainmentの事業停止までの経歴をまとめます。
| 名前 | 板倉 洋輔(いたくら ようすけ) |
|---|---|
| 出身 | 岡山県 |
| 大学 | 甲南大学 経済学部 |
| 大学卒業 | 2005年 |
| 職歴 | 医療系人材紹介会社勤務、医療系人材関連会社を起業 |
| 主な肩書 | 株式会社Yorkys Entertainment 代表取締役 |
| 主なブランド | YORKYS BRUNCH、YORKYS Creperie、PIECE OF BAKE、FROMAなど |
板倉氏の生年月日や年齢については、広く確認できる公式プロフィールでは公表されていないようです。
板倉洋輔氏は甲南大学経済学部の出身で、2005年に卒業しています。
甲南大学が2024年に掲載した卒業生インタビューによると、板倉氏は大学時代、アルバイトとサーフィンに熱中する一方、マーケティングの授業には強い関心を持ち、関連する本も読んでいたといいます。
また、大学3年生の頃には周囲が就職活動を始めるなかで大学を休学し、オーストラリアへワーキングホリデーに行きました。
このオーストラリアでの経験が、その後の飲食店経営につながる重要な転機となります。
オーストラリア滞在中の板倉氏は、サーフィンを楽しみながら、現地のカフェでブランチや夕食を楽しむ生活を送っていました。
そこで感じたのが、単に食事をするだけではない「カフェという空間の居心地の良さ」だったといいます。
現在のYORKYS BRUNCHの公式サイトでも、オーストラリア滞在中に、日の出とともに海に入り、サーフィンの後に食べる朝食のおいしさや朝の時間の大切さを感じたことが、店づくりの原点として紹介されています。
後に板倉氏がカフェを開業する際、この経験がコンセプトづくりに大きな影響を与えることになります。
オーストラリアから帰国した板倉氏は大学を卒業した後、ベンチャー系の医療系人材紹介会社に就職しました。
飲食業とは全く異なる業界ですが、板倉氏はもともと将来的な起業を考えており、会社経営に必要なさまざまな知識や経験を得ることを目的にベンチャー企業を選んだとしています。
そして入社から約1年後には独立し、自ら医療系人材関連の会社を立ち上げました。
つまり、板倉氏は「カフェ経営者」として最初に起業したわけではなく、すでに人材ビジネスで起業経験を持っていたことになります。
板倉氏の人生観を大きく変えた出来事の一つが、2011年の東日本大震災だったといいます。
甲南大学のインタビューでは、人はいつ何が起こるか分からないという思いから、「今やりたいことをやろう」と考えるようになり、以前から憧れていたカフェ経営に挑戦することを決めた経緯が紹介されています。
ただし、板倉氏自身は料理人でもパティシエでもなく、飲食店で働いた経験もありませんでした。
そこで、自ら料理を作るのではなく、パティシエなどの専門スタッフを採用し、料理、店舗空間、ブランドイメージなどを総合的にプロデュースする経営スタイルを選びます。

2014年4月、兵庫県西宮市の夙川に「YORKYS BRUNCH」をオープンしました。
約35席のカフェに、パティシエを含む社員やアルバイト約20人を配置するという、飲食業未経験者としては比較的大きな規模でのスタートだったとされています。
しかし、開業直後から順調だったわけではありません。
板倉氏自身が後に語ったところによると、売り上げが1日8,000円ほどの日もあり、最初の1年間は厳しい経営が続いたといいます。
YORKYS BRUNCHの転機となったのが、パンケーキでした。
Instagramが急速に普及し始めた時期に同店のパンケーキがSNSで拡散され、さらに雑誌のパンケーキ特集でも高い評価を得たことで注目度が急上昇しました。
その後、SNSでさらに口コミが広がり、YORKYS BRUNCHは関西を代表する人気カフェの一つへ成長していきます。
板倉氏は単に「味の良い店」を目指すのではなく、料理、内装、ロゴ、メニュー、写真、SNSなどを含めて一つのブランドとして作り上げることを重視していました。
2015年12月には株式会社Yorkys Entertainmentを設立しました。
会社の公式情報によると、事業内容は飲食ブランドの企画・運営・プロデュースだけでなく、店舗設計・空間デザイン、ロゴやグラフィックなどのブランディング・アートディレクションにも及んでいました。
飲食店経営会社でありながら、店舗そのものを一つのブランドとして設計することを特徴としていた会社といえるでしょう。
YORKYS BRUNCHの成功後、板倉氏は積極的な多店舗・多ブランド展開を進めていきます。
2017年には神戸元町へ店舗を展開。2018年には大阪・阪急三番街にクレープ専門店「YORKYS Creperie」などをオープンしました。
その後も天王寺、神戸、東京、名古屋などへ出店し、チーズ料理を中心とした「FROMA YORKYS CHEESE RESTAURANT&BAR」など、業態の異なるブランドを展開しました。
特徴的なのは、同じ料理をそのまま別の場所へ持っていくのではなく、立地や客層に合わせて業態そのものを変えていた点です。
例えば大阪・梅田のフードコートへの出店では、調理から提供まで時間がかかるパンケーキはフードコートには適さないと判断し、代わりにクレープ専門店を提案。これがヒットし、クレープ事業の拡大につながりました。
Yorkys Entertainmentの代表的ブランドの一つとなったのが、生ドーナツ専門店「PIECE OF BAKE」です。
2022年11月、大阪・阪急三番街に1号店をオープンしました。
ふわふわとした食感の生ドーナツなどがSNSで話題となり、販売開始時には行列ができる人気店へ成長。店舗は大阪だけでなく、兵庫、愛知、東京などにも広がりました。
2026年には、梅田・阪急三番街、うめきたグリーンプレイス、マリンピア神戸、名古屋・中日ビル、東京・吉祥寺などにPIECE OF BAKEを展開していました。
事業停止のわずか約3カ月前となる2026年7月、Yorkys Entertainmentは新たな事業拡大策を発表していました。
「YORKYS BRUNCH」「YORKYS Creperie」「PIECE OF BAKE」の3ブランドについて、全国でフランチャイズ加盟パートナーの募集を開始すると発表したのです。
板倉氏はそれまで直営店舗を中心に培ってきた商品開発、店舗設計、商業施設との交渉、SNS運用などのノウハウを加盟店に提供し、全国展開を目指す考えを示していました。
2026年7月の段階では全国展開を目指していたことから、その約3カ月後に事業停止へ至ったことは、利用客や関係者にとっても突然の出来事だったと考えられます。
帝国データバンクの報道によると、Yorkys Entertainmentは積極的な出店を続け、2025年11月期には年売上高約4億円を計上していました。
口コミサイトで高い評価を獲得した店舗もあり、テレビや雑誌などのメディア紹介、さらにInstagramなどSNSを活用した情報発信によって集客を伸ばしてきました。
一方、急速な出店には相応の資金が必要になります。
出店費用として調達した借り入れの負担が重くなり、収益状況が徐々に悪化。債務超過に陥るなど、資金繰りが厳しくなっていたと報じられています。
同社は不採算店舗の見直しなど、いわゆる「スクラップ・アンド・ビルド」を進めながら収益性の改善を図っていました。
しかし、2026年9月末には取引先への支払い遅延も発生していたとされ、資金繰りへの懸念が強まっていました。
そして2026年10月6日、状況が一気に表面化します。
2026年10月6日、Yorkys Entertainmentは事業を停止し、破産申立ての準備に入ったことを明らかにしました。
PIECE OF BAKEも同日、全店舗の休業を発表しています。
帝国データバンクによると、同社は事後処理を弁護士に一任し、自己破産申請の準備に入りました。
ここで注意したいのは、2026年10月7日時点では「破産申立ての準備に入った」という段階であり、裁判所による破産手続き開始決定が出たという意味ではない点です。
今回特に注目されているのが、板倉氏が会社の公式SNSなどを通じて明らかにした「会社の存続にも大きな影響を及ぼす重大な事案」という説明です。
板倉氏は、事業を継続するためさまざまな方法を模索していたものの、その過程で社内に重大な事案が判明したと説明しています。
また、長年築いてきた信頼が大きく揺らぐ出来事だったとしており、関係機関への相談を含め必要な対応を進めているため、現時点では詳細を公表できないとしています。
この「重大な事案」が具体的に何を意味するのかは、2026年10月7日時点では公表されていません。
そのため、不正、横領、従業員とのトラブルなど具体的な内容を推測して断定することはできません。今後、会社側や関係機関から新たな説明が行われるかどうかが注目されます。
今回の破産準備については、大きく二つの要素を分けて見る必要があります。
一つは、帝国データバンクが報じている借り入れ負担、収益悪化、債務超過、支払い遅延といった財務上の問題です。
もう一つが、板倉氏自身が公表した「社内で判明した重大な事案」です。
会社はすでに財務的に厳しい状態にあり、そのなかで新たな重大事案が明らかになったという経過になります。
ただし、重大事案が破産の直接的な原因だったのか、それ以前から続いていた経営悪化とどの程度関係しているのかについては、現段階では詳細が明らかになっていません。
板倉洋輔氏は、甲南大学経済学部を卒業後、医療系人材紹介会社への就職と起業を経験し、その後、全くの未経験から飲食業界へ参入した経営者です。
2014年に西宮・夙川で始めたYORKYS BRUNCHを起点として、クレープ、チーズ料理、生ドーナツなど次々と新しいブランドを生み出し、東京、名古屋、大阪、兵庫などへ事業を広げました。
特に「PIECE OF BAKE」は行列のできる生ドーナツ店として知られ、Yorkys Entertainmentを代表するブランドの一つとなっていました。
一方、積極的な出店に伴う借り入れ負担などから経営状況は悪化。2026年9月には支払い遅延が発生し、10月6日には事業を停止して破産申立ての準備に入るという急展開を迎えました。
さらに板倉氏は、会社存続に大きな影響を及ぼす「重大な事案」が社内で判明したことも明らかにしています。
ただし、その具体的な内容については関係機関への相談・対応中であるとして公表されていません。
2014年の小さなカフェからスタートし、SNSとブランディングを武器に全国へ複数の人気ブランドを展開した板倉氏とYorkys Entertainment。その急成長の過程と、今回の突然の事業停止に至った詳しい事情については、今後の破産申立てや会社側からの説明によってさらに明らかになる可能性があります。