東京大学は2026年9月28日、藤垣裕子(ふじがき・ゆうこ)氏を次期総長予定者に選出したと発表しました。文部科学大臣の任命を経て、2027年4月に第32代総長へ就任する予定で、実現すれば東京大学で初めての女性総長となります。
藤垣氏は、科学技術と社会の関係を研究する「科学技術社会論」の研究者です。東京大学大学院総合文化研究科教授を務め、2021年度から2025年度までは理事・副学長として大学運営にも携わりました。
この記事では、東京大学が公表した略歴などを基に、藤垣氏の学歴、研究者としての歩み、大学運営の経験、専門分野や主な著書を紹介します。
情報確認日:2026年9月29日。現時点では「次期総長予定者」であり、総長にはまだ就任していません。
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| 氏名 | 藤垣 裕子 |
|---|---|
| 読み方 | ふじがき・ゆうこ |
| 生年月日 | 1962年4月19日 |
| 年齢 | 64歳(2026年9月29日現在) |
| 所属・役職 | 東京大学大学院総合文化研究科教授、東京大学次期総長予定者 |
| 出身大学 | 東京大学教養学部 |
| 最終学歴 | 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了 |
| 学位 | 博士(学術)(東京大学) |
| 専門分野 | 科学技術社会論、科学計量学 |
| 総長の任期予定 | 2027年4月1日~2033年3月31日(6年間) |
藤垣氏は1985年に東京大学教養学部基礎科学科第二(システム基礎科学)を卒業しました。
その後、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻に進み、1987年に修士課程、1990年に博士課程を修了。同年3月に東京大学で博士(学術)の学位を取得しています。
セコム科学技術振興財団のインタビューによると、藤垣氏は高校生の頃に物理学者を志し、東京大学理科一類へ入学しました。
その後、科学者の責任を論じる本との出会いを通じて、科学者が社会に対してどのような責任を負うのかを考える研究へ関心を深めていったと語っています。
理科系の学びを出発点としながら、科学を社会の中に位置付けて考える方向へ研究を広げた点は、藤垣氏の経歴を理解するうえで重要です。
| 年 | 主な学歴・職歴 |
|---|---|
| 1985年 | 東京大学教養学部基礎科学科第二を卒業 |
| 1987年 | 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程修了 |
| 1990年 | 同博士課程修了。東京大学教養学部基礎科学科第二助手 |
| 1996年 | 科学技術庁科学技術政策研究所主任研究官 |
| 2000年 | 東京大学大学院総合文化研究科助教授 |
| 2010年 | 東京大学大学院総合文化研究科教授 |
| 2013年 | 東京大学総長補佐 |
| 2015年 | 東京大学大学院総合文化研究科副研究科長・教養学部副学部長 |
| 2016年 | 東京大学教育研究評議員 |
| 2021~2025年度 | 東京大学理事・副学長 |
| 2026年9月28日 | 東京大学次期総長予定者に選出 |
| 2027年4月1日 | 第32代東京大学総長に就任予定 |
博士課程修了後の1990年、藤垣氏は東京大学教養学部の助手となりました。1996年には科学技術庁科学技術政策研究所の主任研究官に就任し、大学の外でも研究経験を積んでいます。
本人のインタビューでは、同研究所で海外の科学技術社会論の研究者と交流する機会を得たことが、日本でもこの分野の学会が必要だと考えるきっかけになったと説明しています。
2000年に東京大学大学院総合文化研究科の助教授となり、2010年には教授に就任しました。また、2001年の科学技術社会論学会の設立に携わり、2013~2016年には同学会の会長を務めています。
科学技術社会論(STS)は、科学技術と社会がどのように関わり、影響を与え合うのかを考える学問です。
科学的に何ができるかという問題に加え、それを社会でどのように使うのか、誰が判断に参加するのか、専門家がどのように説明責任を果たすのか、といった問いを扱います。
藤垣氏の研究・教育では、特に次のようなテーマが挙げられています。
例えば、新しい技術の導入を検討する際、専門家の判断を社会に伝えるだけでなく、市民の疑問や価値観をどう受け止めるかも重要になります。科学と社会の間にある、こうした課題を研究する分野です。
もう一つの専門である科学計量学は、論文や引用などのデータを使い、研究活動の動向や構造を分析する分野です。
藤垣氏は研究・教育だけでなく、東京大学の運営にも継続して関わってきました。総長補佐、副研究科長・副学部長、教育研究評議員などを経て、2021年度から2025年度まで理事・副学長を務めています。
在任中の大学の公開資料では、入試や研究倫理に関する取り組みへの関与も確認できます。
研究倫理に関する発信では、禁止事項を守ることだけにとどまらず、研究成果が社会で使われたときの影響を考える姿勢を重視しています。研究者として追究してきた「科学者の社会的責任」が、大学運営に関わる活動にもつながっていることがうかがえます。
東京大学は2026年9月28日、藤井輝夫総長の任期満了に伴う選考で、藤垣氏を次期総長予定者に選出しました。
予定される任期は2027年4月1日から2033年3月31日までの6年間です。第32代総長に就任すれば、東京大学で初めて女性が総長を務めることになります。
「東大新総長」として報じられていますが、2026年9月29日現在の正式な位置付けは「次期総長予定者」です。選出された日と、実際に就任する日は異なります。
藤垣氏は、専門知識と社会の関係や、科学者の責任について多くの著作を発表しています。主なものは次のとおりです。
| 書名 | 刊行年 | 区分・出版社 |
|---|---|---|
| 専門知と公共性―科学技術社会論の構築にむけて | 2003年 | 著書/東京大学出版会 |
| 研究評価・科学論のための科学計量学入門 | 2004年 | 共著/丸善 |
| Lessons from Fukushima: Japanese Case Studies on Science, Technology and Society | 2015年 | 編著/Springer |
| 科学者の社会的責任 | 2018年 | 著書/岩波書店 |
書名からも、研究者の専門的な知識を社会とどう結び付けるかという、藤垣氏の一貫した関心が読み取れます。
藤垣裕子氏は、東京大学教養学部と同大学院で学び、科学技術政策研究所の主任研究官、東大教授、理事・副学長などを歴任した研究者です。専門は科学技術社会論と科学計量学で、科学者の責任や、科学と市民との対話を研究してきました。
2026年9月に次期総長予定者に選ばれ、2027年4月には東大初の女性総長となる予定です。女性初という点に加え、科学と社会の関係を研究してきた専門性と、大学運営の経験を併せ持つことが、その経歴の特徴です。