中国のネットワーク機器メーカー「Zbtlink」が製造する無線ルーターから、外部から端末を遠隔操作できるバックドアが発見されたと報じられました。
問題を発見したのは、米国のサイバーセキュリティ企業VulnCheckです。同社によると、調査した少なくとも20機種のファームウェアに、外部のサーバーへ自動的に接続する遠隔操作用プログラムが組み込まれていました。
このバックドアは「ENDLESSDOORS(エンドレスドアーズ)」と名付けられ、脆弱性番号としてCVE-2026-66747が割り当てられています。
対象製品は「Zbtlink」だけでなく、「ZBT」「ZBTWiFi」「Wiflyer」などの名称でも販売されています。また、別会社のブランド名を付けたOEM製品が存在する可能性もあるため、利用者はブランド名だけでなく、本体の型番を確認する必要があります。
バックドアとは、通常のログイン手続きやセキュリティ機能を経由せず、外部から機器へアクセスできる隠された入り口のような仕組みです。
今回発見されたENDLESSDOORSは、無線ルーターの電源を入れると自動的に起動し、外部の特定サーバーへ接続を繰り返す仕組みになっていました。
VulnCheckの調査では、バックドアはおよそ35秒ごとに外部への接続を試みます。通信には十分な認証や暗号化がなく、接続先のサーバーや通信経路を支配した第三者が、ルーター上で管理者権限の命令を実行できる可能性があります。
ルーター内部では、バックドアのプロセスが「kworker」という名称で動作します。これはLinuxで通常使われるシステムプロセスに似た名前であり、利用者や管理者が不審なプログラムだと気づきにくくする意図が疑われます。

今回確認されたバックドアには、主に次のような特徴があります。
特に重要なのは、攻撃者がインターネット側からルーターのポートへ接続するのではなく、ルーター自身が外部の指令サーバーへ接続する点です。
そのため、ルーターがNATやファイアウォールの内側に設置されていても、外部への通信が許可されていればバックドアが機能する可能性があります。
VulnCheckがファームウェアを調査し、ENDLESSDOORSの存在を確認した機種は次の20機種です。
| 番号 | 対象機種 |
|---|---|
| 1 | CPE2801 |
| 2 | WE1026-5G-WD |
| 3 | WE1326 |
| 4 | WE2007 |
| 5 | WE2008-DSIM |
| 6 | WE2416 |
| 7 | WE3326 |
| 8 | WE5927 |
| 9 | WE5931 |
| 10 | WE5931AC |
| 11 | WE826-T3-DSIM |
| 12 | WG108 |
| 13 | WG1602 |
| 14 | WG1608-DSIM |
| 15 | WG209 |
| 16 | WG2105 |
| 17 | WG2107 |
| 18 | WG259 |
| 19 | WG3526 |
| 20 | Z8102AX-2DSIM |
上記は、現時点で研究者がファームウェアを確認した機種です。
Zbtlinkは他社向けにOEM・ODMサービスも行っているため、同じハードウェアやファームウェアが、別のブランド名で販売されている可能性があります。そのため、外側のロゴだけでは安全かどうかを判断できません。
VulnCheckは、ブランド名ではなく型番で確認するよう呼びかけています。
Zbtlinkは、中国・深圳を拠点とするネットワーク機器メーカーです。家庭用Wi-Fiルーターだけでなく、4G・5G通信対応ルーター、産業用ルーター、車載用通信機器、屋外用CPEなどを製造しています。
製品はZbtlinkやZBTの名称だけでなく、「Wiflyer」などのブランドでも販売されています。また、販売業者が独自ブランドを付けて販売するOEM製品もあります。
こうした製品は、海外の通販サイトや電子機器販売サイトなどを通じて、世界各地の個人、企業、ホテル、店舗、工場、大学、研究施設などで利用されている可能性があります。
ロイター通信によると、VulnCheckの最高技術責任者であるジェイコブ・ベインズ氏は、問題のある無線ルーターが世界で少なくとも約10万台使用されている可能性があると推定しています。
ただし、正確な販売台数や稼働台数、使用されている国や地域は明らかになっていません。日本国内で何台使用されているかについても、現時点では確認されていません。
日本では大手通信会社から提供されるルーターとは別に、海外通販で購入したSIM対応ルーターや、事業者が設置した無名ブランドの通信機器に注意が必要です。

今回のバックドアによってルーターの管理者権限を取得された場合、理論上はさまざまな攻撃に利用される可能性があります。
攻撃者が管理者権限を取得すると、DNSサーバー、通信経路、ファイアウォールなどの設定を書き換えられる可能性があります。
偽のDNSサーバーへ誘導された場合、利用者が正しいURLを入力しても、偽の銀行サイトや通販サイトなどへ転送される危険があります。
ルーターは家庭や会社のネットワークの出入り口に位置しています。
ルーターを乗っ取られると、同じネットワークに接続されているパソコン、スマートフォン、監視カメラ、NAS、プリンター、IoT機器などが攻撃対象になる可能性があります。
ルーターを経由する通信を監視したり、暗号化されていない通信内容を読み取ったりすることも理論上は可能です。
HTTPSで暗号化された通信を簡単に解読できるわけではありませんが、接続先やDNS情報を確認されたり、偽サイトへ誘導されたりする危険は残ります。
乗っ取られたルーターが、別の企業や組織を攻撃するための中継地点として使われる可能性もあります。
実際に、家庭用ルーターや小規模事業者向けルーターがボットネットに組み込まれ、DDoS攻撃、パスワード攻撃、不正アクセスの中継などに利用される事例は各国で確認されています。
一般的な不正アクセスであれば、管理画面のパスワード変更やルーターの初期化が有効な場合があります。
しかし、今回のENDLESSDOORSは、メーカーが配布していたファームウェア自体に組み込まれているとされています。
そのため、工場出荷状態へ初期化しても、同じファームウェアが再び起動すればバックドアも動作する可能性があります。
Wi-Fiパスワードや管理者パスワードを変更しただけでも、根本的な解決にはなりません。
VulnCheckの発表時点では、問題を修正した信頼できるファームウェアは提供されていません。
VulnCheckは今回の問題について、通常のプログラム上のミスではなく、ファームウェアへ組み込まれた「機器の信頼性に関する問題」と位置付けています。
対象機種で重要な通信を行っている場合は、ファームウェアの更新を待つのではなく、別のルーターへ交換することが最も安全な対応となります。
ルーターの底面や背面に貼られているラベルを確認してください。
「Model」「Model No.」「Product Name」などの欄に記載された型番を、対象20機種の一覧と照合します。
本体のラベルが読めない場合は、ルーターの管理画面へログインし、「端末情報」「システム情報」「デバイス情報」などの項目を確認します。
管理画面のアドレスやログイン方法は製品によって異なります。不明な場合は、購入時の説明書や販売ページを確認してください。
海外通販サイトなどで購入した場合は、注文履歴の商品名、型番、販売者名を確認します。
商品ページにZbtlinkと書かれていなくても、「Wiflyer」「ZBTWiFi」などの名称や、対象機種と同じ型番が記載されていないか確認してください。
ホテル、店舗、倉庫、車両、工場、支店、監視カメラ設備などでは、通信機器を外部業者が設置していることがあります。
自社で購入した記録がなくても、設備業者や通信事業者が対象製品を設置していないか確認する必要があります。
対象機種の使用が確認された場合は、可能な限り速やかに使用を中止し、信頼できる別メーカーのルーターへ交換することが推奨されます。
特に、会社の業務用ネットワーク、顧客情報を扱う環境、大学や研究施設、医療機関、監視カメラ設備などでは、交換を優先する必要があります。
すぐに交換できない場合は、対象ルーターを社内の重要なネットワークから切り離してください。
パソコン、サーバー、NAS、監視カメラなどが接続されたネットワークと分離し、対象ルーター側のネットワークを信頼できないものとして扱います。
企業のネットワーク管理者は、ルーターやネットワーク機器から外部へ向かうTCPの7000番・7001番ポートの通信を確認してください。
今回のバックドアは、命令用の通信に7000番ポート、対話型シェルの接続に7001番ポートを使用すると報告されています。
ただし、ポートを遮断するだけでは、バックドアを含むファームウェア自体の安全性が回復するわけではありません。あくまで交換までの応急措置です。
対象ルーターを使用していた場合は、同じネットワークに接続していたパソコンやサーバーなどに、不審なログイン、未知のソフトウェア、設定変更などがないか確認します。
必要に応じて、セキュリティソフトによる検査、OSやソフトウェアの更新、重要なアカウントのパスワード変更も検討してください。
ルーターを交換した後は、新しいルーターの管理者パスワードとWi-Fiパスワードを、以前とは異なる強力なものへ変更します。
インターネットバンキング、メール、クラウドサービスなどの重要なアカウントについても、不審なアクセスがないか確認してください。
VulnCheckは、対象ルーターへSSHで接続できる管理者向けに、次のファイルやプロセスを確認する方法を紹介しています。
/usr/sbin/kworker/usr/lib/librctl.so/etc/kworker.cfg/etc/init.d/skworkerプロセス一覧では、角括弧で囲まれていない「kworker」が動作し、メモリーを使用している場合、今回のバックドアである可能性があります。
ただし、一般の利用者が不用意にルーター内部のファイルを変更すると、通信できなくなることがあります。専門知識がない場合は、内部ファイルを削除しようとせず、ルーターを交換する方が安全です。
今回、ENDLESSDOORSが確認されたのは、Zbtlinkが製造したルーターです。
名前が似ていますが、次のメーカーとは別の会社です。
今回の報道を理由に、TP-LinkやZTEなどのすべての製品に同じバックドアが入っていると判断することはできません。
また、「中国製ルーターはすべて危険」という意味でもありません。問題の有無はメーカー、機種、ファームウェアごとに確認する必要があります。
現時点では、中国政府が今回のバックドアの設置を指示したという証拠は公表されていません。
ロイター通信も、バックドアが何の目的で組み込まれたのか、過去に実際の攻撃や情報収集へ利用されたのかは確認できなかったと報じています。
したがって、「中国政府が利用者を監視するために設置した」と断定することはできません。
一方で、認証なしで外部から管理者権限を取得できる仕組みが、複数機種の公式ファームウェアに組み込まれていたこと自体は、重大なセキュリティ問題です。
ロイター通信によると、Zbtlinkは取材に対して回答していません。
VulnCheckは、今回のバックドアがメーカーのファームウェアへ意図的に組み込まれ、起動時に自動実行される構造だったとして、通常の脆弱性のような事前通知を行わずに調査結果を公開しました。
今後、メーカーが説明や修正版ファームウェアを公表する可能性はありますが、安全性が第三者によって十分に検証されるまでは、対象製品を重要な通信に使用しない方がよいでしょう。
日本国内で販売された台数や流通経路は明らかになっていません。ただし、海外通販や業務用機器の販売業者を通じて購入された可能性はあります。本体の製造国だけでなく、型番を対象一覧と照合してください。
今回のバックドアはファームウェアに含まれているため、工場出荷状態へ初期化しても再び動作する可能性があります。初期化だけでは根本的な対策になりません。
管理画面のパスワード変更は一般的なセキュリティ対策として重要ですが、今回のバックドアは通常の管理画面とは別に動作します。そのため、パスワード変更だけでは防げません。
今回のバックドアはルーター側から外部サーバーへ接続します。通常のリモート管理機能を無効にしても、バックドアによる外向き通信を防げない可能性があります。
今回公表された20機種に該当しない場合でも、OEM製品などに同じファームウェアが使用されている可能性は完全には否定できません。メーカーから提供される情報や、今後のセキュリティ機関の発表を確認してください。
中国のZbtlinkが製造する少なくとも20機種のルーターから、ENDLESSDOORSと呼ばれるバックドアが発見されました。
このバックドアはルーターの起動時に自動的に動作し、約35秒ごとに外部のサーバーへ接続します。接続先を支配した第三者が、ルーター上で管理者権限の命令を実行できる危険性があります。
重要なポイントは次のとおりです。
家庭用ルーターは、一度設置すると型番やファームウェアを確認する機会が少ない機器です。特に海外通販で購入したSIM対応ルーターや、会社・店舗・ホテルなどに設置された無名ブランドの通信機器については、対象製品に該当しないか確認しておく必要があります。