※本記事は学術用語としての説明を目的とした一般向け解説です。特定の人々を評価・断定したり、偏見を助長したりする意図はありません。医療や診断の代替にもなりません。
**オートガイネフィリア(Autogynephilia)**は、カナダの心理学者レイ・ブランシャール(Ray Blanchard)が1989年に提唱した概念で、端的には
を指す、とされます。
日本語では文脈により、**「自己女性化性愛」**などと訳されることがあります。ただし、訳語や使われ方は一定ではなく、SNS等ではかなり幅広く・雑に使われることもあります。
この用語は主に、
などで登場します。
ただし重要なのは、現代の医療・支援の現場で、オートガイネフィリアが“標準の診断名”として用いられているわけではないという点です。言葉自体が論争的で、扱いに注意が必要です。
ブランシャールは、当時の臨床観察や質問紙などを用いて、男性から女性への性別移行(当時の用語体系)を説明する枠組みの一部としてこの概念を提示しました。
ブランシャールの議論では、
を関連づけて説明しようとする特徴があります。
この概念がややこしくなる理由の1つは、「女性化」に含める範囲が広く解釈され得ることです。たとえば議論の中では、
などが混在しやすく、どこまでを同じものとして語っているのかで、読み手の理解がズレやすくなります。
オートガイネフィリアは、ネット上で「便利なレッテル」のように使われてしまい、当事者にとって攻撃的に響く場面が少なくありません。
ここでは、よく起きる誤解と論点を整理します。
➡ そう単純ではありません。 この概念は一部の研究者・論者が提案した枠組みであり、すべてのトランス女性を説明する“公式理論”ではありません。
➡ 結論を飛ばしすぎです。 人の性(sexuality)には多層性があり、
が常に1対1で対応するとは限りません。性的側面がある/ないだけで本人のアイデンティティを断定するのは適切ではありません。
➡ 病名・診断名として固定されているわけではありません。 「パラフィリア(性嗜好の一分類)」として扱うかどうかも含め、議論があります。
ネットでは、次の概念が混同されがちです。
これらは重なり得ますが、同じものではありません。
SNSでは略してAGと書かれることがあります。ここでは、読み解く際の注意点をまとめます。
特に「この概念があるから〇〇はこうだ」と短絡している文章は、論争の一側面だけを切り取っている可能性が高いです。
A. 病気と決めつける言い方は適切ではありません。 この用語は研究上の概念として議論されてきましたが、標準的に「診断名」として固定されているものではありません。
A. 合いません。 個人差が大きく、理論への評価も割れています。単一の概念で包括的に説明できるものではありません。
A. その可能性が語られることはありますが、断定はできません。 女装の動機は多様で、性的興奮だけでなく、自己表現・安心感・趣味・ファッションなど、さまざまです。
A. 当事者の尊厳に関わる話題に“性的な動機”を結びつけて語るため、誤用・攻撃・偏見を生みやすいからです。 また、専門家の間でも評価が割れているため、議論が過熱しやすい面があります。
もし性に関する悩みが「苦痛」や「生活上の困難」につながっている場合は、
など、守秘義務のある専門家に相談するのが安全です。ネットの断定的な言説より、本人の困りごとを丁寧に扱ってくれる支援が役立つことが多いです。