近年の急激な物価高や実質賃金の伸び悩みを背景に、政府・与党内では「食品の消費税率を一定期間ゼロにする案」が本格的に議論されています。こうした中、高市早苗首相も、連立合意に掲げた**「飲食料品の消費税率を2年間ゼロにする方針」**について、検討を加速させる考えを示しました。
食品消費税ゼロは、日々の食費を直接押し下げる政策として、消費者からは歓迎されやすい内容です。しかしその一方で、飲食店にとっては必ずしも単純な追い風とは言えないという現実があります。制度の設計次第では、売上構造の変化や事務負担の増大など、経営面で新たな課題を生む可能性があるためです。
本記事では「食品消費税ゼロ・飲食店」というテーマで、高市首相の発言も踏まえつつ、食品消費税ゼロが導入された場合に飲食店へどのような影響が及ぶのかを、税制の仕組みと現場の実情の両面から、できるだけ丁寧に解説します。
現在の日本の消費税制度では、飲食に関して次のような区分が設けられています。
この区分は、同じ飲食店で提供される商品であっても、利用形態によって税率が異なるという特徴があります。飲食店側はすでに、この複雑な税率区分に対応した価格表示やレジ処理を行っています。
「食品消費税ゼロ」が導入される場合、現在想定されている制度設計では、
となる可能性が高いと考えられています。この点が、飲食店にとって非常に重要なポイントとなります。
現行制度でも、
という2つの税率を使い分ける必要があります。
食品消費税ゼロが実施された場合、
となる可能性があり、両者の税率差は10ポイントに拡大します。この差は、消費者にとって非常に分かりやすく、「どちらが得か」を強く意識させる要因になります。
飲食店の現場では、
といった業務がさらに増えることになります。
税率差が大きくなれば、消費者の行動にも変化が生じます。
という意識が、これまで以上に強まる可能性があります。
その結果、
といった形で、飲食店の収益構造そのものが変化するおそれがあります。特に、カフェやファストフード、定食店など、イートインを前提とした業態では影響が大きくなりやすいでしょう。
現在、多くの飲食店は、
という三重苦に直面しています。
この状況で食品消費税ゼロが導入されると、
という消費者心理が働きやすくなります。しかし実際には、飲食店の原価構造はほとんど改善していません。そのため、値上げも値下げも難しい板挟み状態に陥る店舗が増える可能性があります。
飲食店ではすでに、
という複数税率に対応した運営が行われています。
食品消費税ゼロが加わると、
と、さらに税率が増える可能性があります。
特に、
にとっては、レジ改修費用や帳簿管理の手間が重い負担となり、実質的なコスト増につながるおそれがあります。
一見すると、食品消費税ゼロは集客増や売上回復につながるようにも見えます。しかし現実には、
といった構造があり、飲食店にとっては中立、もしくはややマイナスの政策になる可能性も否定できません。
食品消費税ゼロを実施するのであれば、飲食店への配慮も不可欠です。例えば、
などがなければ、飲食店だけが制度変更のしわ寄せを受ける結果になりかねません。
食品消費税ゼロは、
です。
高市早苗首相の発言が示すように、今後は具体的な制度設計が最大の焦点となります。その際、飲食店の現場で実際に何が起きるのかを十分に考慮しなければ、支援策のはずが経営を圧迫する結果になりかねません。
消費者・農家・飲食店というそれぞれの立場を総合的に見据え、短期的な人気取りではなく、持続可能な飲食業と食の供給体制を支えるバランスの取れた政策設計が求められています。