高市早苗首相は、連立政権の合意文書に盛り込まれている政策である飲食料品の消費税率を「2年間に限って0%(非課税)」にする案について、 実現に向けた検討を前倒し・本格化させる考えを示し、物価高対策として「食品の消費税率をゼロにする案」が政府・与党内で議論されています。
食料品は毎日の生活に欠かせないため、消費税が下がれば家計の負担が軽くなるという点で、国民にとって分かりやすく支持を得やすい政策でもあります。
しかし一方で、食品消費税ゼロは農家にとって必ずしも歓迎できる政策ではないという指摘も、専門家や農業関係者の間では以前から出ていました。むしろ制度設計を誤ると、農家の経営を圧迫し、日本の農業全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
本記事では「食品消費税ゼロ・農家」というテーマで、なぜ農家が大変になると言われているのか、その仕組みを基礎から整理し、短期的・長期的な影響までをわかりやすく解説します。

現在、日本では食品に対して軽減税率8%が適用されています。これを「0%」に引き下げるというのが、いわゆる食品消費税ゼロの政策です。
一見すると単純な減税のように見えますが、税制上は大きな論点があります。それが、次の違いです。
この違いは一般にはあまり意識されませんが、農家の経営に与える影響は決定的に異なります。現在議論されている食品消費税ゼロ案では、実務上「非課税」として扱われる可能性が高いと見られています。

農家は、作物や畜産物を生産するために、日常的に多くの資材やサービスを購入しています。具体的には、
といったものです。これらには通常10%の消費税が課されています。
ところが、農産物が「非課税」扱いになると、
という状況が生まれます。
👉 つまり、農家が支払った消費税が、そのまま経営コストとして固定化されるのです。
これは帳簿上の問題ではなく、実際の手取り収入を確実に減らす要因となります。
「消費税ゼロ」という言葉から、多くの人は減税をイメージします。しかし農家の立場で見ると、状況は逆転します。
この差額はどこかに消えるわけではなく、農家自身がすべて負担する構造になります。
特に、
では、年間で数十万円から数百万円規模の影響が出る可能性もあります。
農業経営の規模によっても、影響の大きさは異なります。
大規模農家や農業法人の場合、
といった対応が可能なケースもあります。
一方で、
は、価格転嫁が極めて難しく、負担を吸収する体力も限られています。そのため、消費税ゼロの影響が直接的に経営を圧迫することになります。

「食品消費税がゼロになれば、食品価格は必ず下がる」と考えられがちですが、現実はそれほど単純ではありません。
農家側でコストが増えれば、
といった形で、どこかにしわ寄せが生じます。
結果として、
といった事態が起きる可能性も否定できません。

農家の収益が圧迫され続ければ、
といった問題が加速します。
これは長期的に見ると、
👉 食料自給率の低下 👉 輸入食品への依存拡大 👉 国際情勢に左右されやすい食料供給
という、日本全体のリスクにつながります。消費者向けの短期的な支援策が、結果的に国の食料基盤を弱める可能性がある点は、慎重に考える必要があります。
食品消費税ゼロを実施するのであれば、農家への影響を最小限に抑える制度設計が不可欠です。具体的には、
などが検討されるべきでしょう。
これらが不十分なまま実施されれば、減税のはずが農家にとっては事実上の負担増政策になってしまいます。
食品消費税ゼロは、
です。
「消費税ゼロ=すべての人にとって良い政策」と短絡的に捉えるのではなく、農家という供給側がどのような負担を背負うのかを理解した上で議論することが重要です。
減税と農業保護を両立させる仕組みがなければ、結果的に日本の農業基盤そのものを弱体化させてしまう可能性があることは、しっかり押さえておくべきポイントと言えるでしょう。