米国の「反乱法(Insurrection Act)」は、合衆国内で軍(正規軍・連邦化された州兵など)を投入できる例外的な権限として知られています。ニュースで「反乱法を発動する可能性」といった表現が出るたびに注目されますが、実際には発動(適用)された歴史的事例が多数あり、その多くは「州の統治機能が揺らぐ規模の暴動」「連邦法の執行が妨げられる状況」「公民権(人権)の保護」などが背景にありました。
この記事では、「反乱法 過去」というテーマで、歴代の発動例を年代順に整理 Remember:(※「最後の発動」は一般に1992年のロサンゼルス暴動対応とされます)。
ポイント:反乱法は「いつでも軍を出せる万能カード」ではありませんが、条文の言い回しが広めで、政治的にも法的にも議論を呼びやすい法律です。
一般的な整理では、反乱法はおよそ30回(30件前後)、複数の大統領によって適用・発動されてきたとされます。
ただし「どこまでを反乱法の“発動”として数えるか」は資料により差が出ます。
本記事では、主要なリスト(研究機関の整理、政府記録、歴史資料)で繰り返し挙がる代表例を中心にまとめます。
以下は「代表例」を年代で並べた早見表です(※厳密な法的根拠の条番号や布告番号は資料で確認してください)。
| 年代 | 大統領(主に) | 場所 | 背景・目的(要約) |
|---|---|---|---|
| 1808年ごろ | トマス・ジェファソン | 北東部(国境地域など) | 通商政策(禁輸措置)違反への対応・連邦法執行 |
| 1831年 | (時期により複数) | バージニア州など | 奴隷反乱(代表例:ナット・ターナーの反乱)後の治安対応 |
| 1830年代 | アンドリュー・ジャクソン等 | いくつかの州・地域 | 暴動や衝突に絡む治安回復(個別事案) |
この時代の特徴は、現代の「移民」や「公民権」よりも、連邦法の執行・地域暴動の抑え込みが主目的になりやすい点です。
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景・目的 |
| 1861年 | エイブラハム・リンカーン | 全米(主に南部) | 南北戦争(州の離脱・反乱の鎮圧、連邦の維持) |
南北戦争期は、反乱法が語られるとき必ず触れられる象徴的な時代です。
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景・目的 |
| 1871年 | ユリシーズ・S・グラント | 南部各州 | クー・クラックス・クラン(KKK)などの武装・暴力への対抗、黒人市民の権利保護 |
| 1870年代前半~後半 | グラント等 | ルイジアナ、サウスカロライナ等 | 選挙後の暴力、クーデター的行動、州政府機能の危機への対応 |
再建期は、反乱法が「秩序回復」だけでなく、憲法上の権利(とくに投票権・安全保障)を守る手段として機能した点が重要です。
| 年代 | 大統領(代表) | 場所 | 背景・目的 |
| 1877年 | ラザフォード・B・ヘイズ | 複数州 | 大規模鉄道スト(Great Railroad Strike)鎮圧 |
| 1894年 | グロバー・クリーブランド等 | 複数州 | プルマン・スト(Pullman Strike)への対応 |
| 1914年 | ウッドロウ・ウィルソン | コロラド州 | 炭鉱スト(労働争議が暴力化)への対応 |
| 1921年 | ウォレン・G・ハーディング | ウェストバージニア州 | ブレア・マウンテン(労働蜂起)への対応 |
この時代の反乱法は「労働運動の大規模化」とセットで語られがちです。
| 年代 | 指揮官(大統領ではない) | 場所 | 背景・目的 |
| 1932年 | ダグラス・マッカーサー(陸軍) | ワシントンD.C. | 第一次大戦退役軍人の「ボーナス支給要求」デモの強制排除(違法適用とされる) |
このケースは「大統領の正規手続きではない」「過剰な武力行使」といった論点で、後世の議論で頻繁に引用されます。
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景・目的 |
| 1943年 | フランクリン・D・ルーズベルト | ミシガン州デトロイト | 人種暴動の鎮圧・治安回復 |
第二次大戦期の国内緊張(雇用・人口移動・差別)が背景にあるとされます。
ここは反乱法史の中でも特に重要な時代です。
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景 |
| 1957年 | ドワイト・D・アイゼンハワー | アーカンソー州リトルロック | 学校統合(Central High School)をめぐる州当局の抵抗 |
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景 |
| 1962年 | ジョン・F・ケネディ | ミシシッピ州 | 大学統合をめぐる暴動鎮圧・秩序回復 |
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景 |
| 1963年 | ジョン・F・ケネディ等 | アラバマ州 | 学校統合を妨害する州当局への対応(州兵連邦化など) |
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景 |
| 1965年 | リンドン・B・ジョンソン | アラバマ州 | 行進の安全確保、州当局の暴力的弾圧への対処 |
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景 |
| 1967年 | (当時の大統領) | ミシガン州デトロイト | 大規模暴動鎮圧 |
公民権期の特徴:州が統合・権利保障に抵抗するケースで、反乱法が「連邦の命令執行」「人権保護」の根拠として用いられた点が、現代の議論でも非常に重要です。
| 年代 | 大統領 | 場所 | 背景・目的 |
| 1992年 | ジョージ・H・W・ブッシュ | カリフォルニア州ロサンゼルス | ロドニー・キング事件評決を契機とする大規模暴動、州の支援要請に基づく秩序回復 |
この1992年が「反乱法の最後の発動」として、政府記録や多くの解説で言及されます。
反乱法の歴史を俯瞰すると、発動(適用)には大きく3つのパターンが見えてきます。
反乱法がニュースになると強い賛否が出るのは、主に次の理由です。
過去の歴史でも、
「反乱法 過去」を整理すると、反乱法は
といった国家レベルの危機局面で適用されてきたことが分かります。
そして最大のポイントは、 **反乱法は“歴史の中で何度も使われてきたが、使うたびに政治と法の緊張を生む”**という性格です。 過去の発動例を押さえておくと、 「今回のニュースがどのパターンに近いのか」「州の同意があるのか」「連邦法執行の妨害が論点なのか」 といった見取り図が作りやすくなります。