「日本にはレアアースがほとんど存在しない」——長年、日本はそのようなイメージを持たれてきました。実際、石油や天然ガス、金属鉱物といった地下資源に乏しいことから、日本は典型的な資源小国と呼ばれてきた歴史があります。
しかし近年の調査・研究によって、この認識は大きく変わりつつあります。特に注目されているのが、日本周辺の海域、とりわけ排他的経済水域(EEZ)内に存在するとされる海底レアアース資源です。これらは世界的に見ても極めて規模が大きく、日本の将来を左右しかねない戦略的資源として国際的な注目を集めています。
本記事では、日本のレアアース埋蔵量というテーマについて、レアアースの基礎知識から、日本国内および周辺海域に存在するとされる資源の特徴、推定される埋蔵量の規模、採掘技術や環境面の課題、そして日本にとっての戦略的な意味までを、できるだけ丁寧に、かつ体系的に解説していきます。
レアアース(希土類元素)とは、周期表におけるランタノイド15元素に、スカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)を加えた計17元素の総称です。「レア(希少)」という名前が付いていますが、必ずしも地殻中に極端に少ないという意味ではなく、採掘しやすい形でまとまって存在することが少ない点に特徴があります。

レアアースは現代社会を支えるさまざまな分野で不可欠な役割を果たしています。
このようにレアアースは、脱炭素社会・デジタル社会・安全保障のいずれにおいても欠かせない、極めて重要な戦略資源といえます。
日本はこれまで、石油や天然ガス、鉄鉱石などの主要資源をほぼすべて輸入に頼ってきました。レアアースについても、
という事情から、供給リスクが常に指摘されてきました。2010年頃に発生したレアアース輸出規制問題は、日本社会にその脆弱性を強く印象づけた出来事でもあります。
しかし、2000年代後半以降に本格化した海洋資源調査によって、日本の足元にはこれまで見過ごされてきた膨大な資源が存在する可能性が示されるようになりました。これにより、「日本=資源小国」という単純な図式は見直されつつあります。
日本のレアアース埋蔵量を語るうえで欠かせないのが、レアアース泥と呼ばれる海底堆積物です。これは、深海底に長い時間をかけて堆積した泥状の物質で、レアアース元素を高濃度で含んでいることが特徴です。
海底レアアース泥には、
といった特徴があり、従来の鉱山開発とは全く異なるアプローチが求められます。
特に注目されているのが、日本のEEZ内に位置する南鳥島周辺の深海底です。この海域では、世界的に見ても例の少ない高濃度のレアアース泥が広範囲に分布していることが確認されています。
調査結果によれば、
が指摘されています。この発見は、日本の資源戦略や経済安全保障の考え方を根本から揺るがすものといえます。
レアアースを語る際、「埋蔵量」という言葉には注意が必要です。一般に、
といった条件を満たす前段階では、**資源量(存在量)**という概念が用いられます。現在公表されている日本周辺海域の数値も、多くはこの資源量ベースでの推定です。
研究ベースでは、日本周辺の海底レアアース泥は、
があると評価されています。特に重レアアースの含有比率が高い点は、国際市場においても非常に価値が高いとされています。
日本国内の陸上においては、
は現時点では確認されていません。ただし、
などから微量のレアアースが検出される例はあり、学術的・地質学的な研究は継続されています。
とはいえ、現実的な供給源として期待されているのは、やはり海洋資源であることに変わりはありません。
深海に存在するレアアース泥を採掘するためには、
など、数多くの技術的ハードルを克服する必要があります。
近年では、
が段階的に進められており、研究段階から実用化に向けた実証段階へと移行しつつあります。ただし、商業ベースでの本格採掘には、なお一定の時間が必要と考えられています。
海底資源開発においては、
といった点が重要な論点となります。日本のレアアース開発においても、短期的な利益だけでなく、
を前提とした慎重な対応が求められています。
日本のレアアース埋蔵量、とりわけ海洋資源は、
という観点から極めて重要な意味を持ちます。もし安定的な採掘と供給が実現すれば、日本は単なるレアアース輸入国から、
へと立場を変える可能性すらあります。
日本のレアアース埋蔵量は、まさに**「眠れる国家資源」**と呼ぶにふさわしい存在です。今後の技術革新と国際的なルール形成が、その潜在的な価値をどこまで引き出せるのか、引き続き注目が集まっています。