相利共生の例
「相利共生」― おたがいさまの関係を理解しよう
高校の生物では、生態系の中で生物どうしがどのように関わり合っているかを学びます。その中でもとくに重要なのが、**「相利共生(そうりきょうせい)」**です。
この記事では、相利共生の定義を確認しながら、教科書や入試でよく登場する相利共生の代表的な例を、図解イメージがしやすいように整理して解説します。最後にテストで問われやすいポイントもまとめるので、復習にも活用してみてください。
1. 相利共生とは?基本の定義
1-1. 相利共生の意味
**相利共生(mutualism)**とは、
関わっている両方の生物が、互いに利益(メリット)を受ける関係
のことです。
生物どうしの関係を記号で表すとき、
- 利益を受ける … +(プラス)
- 不利益を受ける … −(マイナス)
- ほとんど影響を受けない … 0(ゼロ)
と書きます。
このルールにしたがうと、相利共生は
+/+ の関係
と表すことができます。
1-2. 他の関係との比較
高校生物では、相利共生だけでなく、次のような関係もセットで整理します。
- 相利共生 … 両方が利益を受ける(+/+)
- 片利共生 … 一方だけが利益、もう一方はほぼ影響なし(+/0)
- 寄生 … 一方が利益、もう一方が不利益(+/−)
- 捕食 … 捕食者が利益、被食者は命を失う(+/−)
このうち、相利共生は「みんなが得をする」珍しい関係だと言えます。生態系全体の安定に関わっていることも多いので、入試でもよく出題されます。
2. 植物と微生物の相利共生
まずは教科書の頻出テーマである、植物と微生物の相利共生を見ていきましょう。
2-1. マメ科植物と根粒菌
最も代表的な例が、
マメ科植物(エンドウ・ダイズなど)と根粒菌の相利共生
です。
● どのような関係?
- 根粒菌は、マメ科植物の根に侵入し、根の一部をふくらませて**「根粒」**と呼ばれるコブのような構造をつくります。
- 根粒菌は、大気中の窒素(N₂)を利用して、植物が利用できるアンモニアなどの窒素化合物に変える働き(窒素固定)を持っています。
● それぞれのメリット
- マメ科植物の利益(+)
- 根粒菌が固定した窒素化合物を受け取ることで、
- タンパク質の合成などに必要な窒素源を確保できる
- 貧栄養な土壌でもよく生育できる
- 根粒菌の利益(+)
- マメ科植物の根の中という安定した環境で生活できる
- 植物が光合成でつくった糖を栄養源として利用できる
このように、両者が互いに「栄養」と「住みか」を交換し合う関係になっているため、典型的な相利共生として頻繁に出題されます。
2-2. 地衣類(菌類と藻類の共生体)
もうひとつよく取り上げられるのが、
地衣類(ちいるい)
です。地衣類は、
- 菌類(主に子嚢菌類や担子菌類)
- 藻類(緑藻やシアノバクテリア)
が一体となった共生体です。
● それぞれの役割とメリット
- 藻類の利益(+)
- 菌類のつくる体の中で保護され、
- 水分やミネラルを菌類から供給してもらえる
- 菌類の利益(+)
- 藻類が光合成によってつくった有機物(糖など)を受け取ることができる
おたがいに「守ってもらうかわりにエサを渡す」という形で支え合っているため、これも典型的な相利共生の例です。
3. 動物どうしの相利共生
次に、動物どうしで見られる相利共生の具体例を紹介します。映像教材などでもよく取り上げられるので、イメージしやすいはずです。
3-1. イソギンチャクとクマノミ
サンゴ礁でよく見られるのが、
イソギンチャクとクマノミ
の関係です。
● イソギンチャクの特徴
- 触手に刺胞と呼ばれる毒のある細胞を持ち、小魚などをしびれさせて捕らえます。
- 通常の魚は近づくと刺胞の毒でやられてしまいます。
● クマノミ側の工夫
- クマノミの体表の粘液は、イソギンチャクの毒に対して免疫があると考えられており、
- イソギンチャクの触手の間を安全に泳ぎ回ることができます。
● おたがいのメリット
- クマノミの利益(+)
- イソギンチャクの毒の触手に守られて、外敵の魚に食べられにくくなる。
- イソギンチャクの残したエサを利用できることもある。
- イソギンチャクの利益(+)
- クマノミが周囲を泳ぎ回ることで、
- 外敵を追い払う
- 触手に新鮮な海水が流れ込む などのメリットがあると考えられています。
このように、安全な住みかと防御を交換し合う関係として、相利共生の代表的な例です。
3-2. 小鳥と大型草食動物(サイとウシツツキなど)
アフリカのサバンナでは、
サイやバッファローなどの大型草食動物の背中に乗る小鳥(ウシツツキなど)
が見られます。
- 鳥の利益(+)
- 草食動物の皮膚や毛の間にいるダニ・ノミなどの寄生虫を食べることで、エサを得ることができる。
- 大型動物の体の上は外敵から見つかりにくく、ある程度安全な場所になる。
- 草食動物の利益(+)
- 皮膚についた寄生虫を鳥に食べてもらうことで、かゆみや病気の原因を減らせる。
このように、鳥はエサを得て、草食動物は寄生虫を減らせるという、わかりやすい相利共生です。
3-3. 魚の「クリーニング共生」
サンゴ礁では、
クリーナー・ラス(ホンソメワケベラなど)と大型の魚
の関係も相利共生の一種として知られています。
- クリーナー・ラスの利益(+)
- 大型魚の体表や口の中についた寄生虫や食べ残しを食べることで、エサを得る。
- 大型魚の利益(+)
- 体の寄生虫を取り除いてもらえるため、健康を保ちやすくなる。
大型魚は本来、小さな魚を食べてしまう捕食者ですが、クリーニングステーションと呼ばれる場所では、クリーナー・ラスを食べずに受け入れる特別な関係が成り立っています。
4. 人間と他の生物の相利共生
人間の生活の中にも、相利共生に近い関係がいくつかあります。高校生物では、主に次のような例が取り上げられます。
4-1. 花粉媒介と送粉者(ミツバチなど)
被子植物は、花粉を運んでもらうために昆虫や鳥を利用します。
- 植物の利益(+)
- 花に蜜や花粉を用意しておき、ミツバチやチョウなどがそれをエサとして集める過程で、別の花へ花粉を運んでもらえる。
- これにより、効率よく受粉し、子孫を残すことができる。
- 昆虫・鳥の利益(+)
人間が栽培する果樹や野菜でも、ミツバチによる受粉が収穫量を左右することが多く、農業と相利共生が深く関わっていることがわかります。
4-2. ヒトと腸内細菌
最近の研究で注目されているのが、
ヒトと腸内細菌の関係
です。
- 腸内細菌の利益(+)
- ヒトの腸の中という安定した環境で、食物の残りかすなどを利用して増えることができる。
- ヒトの利益(+)
- 食物繊維の分解を助けてもらう。
- ビタミンの合成を手伝ってもらうものもいる。
- 免疫の調節など、健康維持にさまざまな影響を与えていると考えられている。
高校教科書では簡略化されることもありますが、ヒトと腸内細菌は、栄養と住みかを交換し合う相利共生に近い関係として理解しておくとよいでしょう。
5. 相利共生の境界はあいまいなこともある
ここまで、わかりやすい相利共生の例を紹介してきましたが、実際の自然界では「完全な +/+」と断言しにくい場合も多いです。
たとえば、
- ある状況では相利共生のように見えても、環境条件が変わると片利共生や寄生のような関係に変化することがある。
- 一方の利益が非常に大きく、もう一方の利益がごくわずかしかない場合、どのように分類するかは研究者によって解釈が分かれることもある。
高校生物で学ぶときは、
「モデル的に整理された代表例」として理解しつつ、現実の自然はもっと複雑だ
ということも頭の片すみに置いておくと、より深い学びにつながります。
6. テスト・入試で問われやすいポイント
最後に、相利共生について試験でおさえておきたいポイントをまとめます。
6-1. 用語と記号表現
これらはセットで覚えると、選択問題や用語記述で間違えにくくなります。
6-2. 代表的な例と「どちらが何を得るか」
以下の例は、典型問題として頻出です。それぞれの生物が何を得ているのかまで説明できるようにしておきましょう。
- マメ科植物と根粒菌
- マメ科植物:窒素化合物を得る(栄養)
- 根粒菌:住みかと糖を得る
- 地衣類(菌類と藻類)
- 藻類:水分・ミネラル・保護
- 菌類:光合成産物(有機物)
- イソギンチャクとクマノミ
- クマノミ:外敵からの保護・食べ残し
- イソギンチャク:外敵を追い払ってもらう・新鮮な海水の流入
- 大型草食動物とウシツツキ
- 鳥:寄生虫をエサとして得る
- 草食動物:寄生虫を減らせる
- 花と送粉者(ミツバチなど)
- 昆虫:蜜や花粉をエサとして得る
- 植物:花粉を運んでもらい受粉が進む
6-3. 記述問題への対策
記述問題では、次の点を意識すると書きやすくなります。
- どの生物どうしの関係かを明確に書く。
- それぞれの生物が得ている利益を具体的に書く。
- 必要に応じて、片利共生や寄生との違いに触れてもよい。
例:「マメ科植物の根に共生する根粒菌は、大気中の窒素をアンモニアなどの窒素化合物に変えて植物に供給する。一方、根粒菌は植物から光合成産物を受け取り、根の内部という安定した住みかを得ている。このように、両者が互いに利益を受ける関係を相利共生という。」
このレベルまでスラスラ書けるようになると、入試の論述でも十分通用します。
7. まとめ ― 生態系を「協力関係」の視点で眺めてみる
- 相利共生は、生物どうしが互いに利益を与え合う +/+ の関係。
- 植物と微生物、動物どうし、人間と他の生物など、さまざまな場面で見られる。
- 代表例として、
- マメ科植物と根粒菌
- 地衣類(菌類と藻類)
- イソギンチャクとクマノミ
- 大型草食動物とウシツツキ
- 花とミツバチなどの送粉者 が頻出。
- 実際の自然界では、環境によって関係が変化することもあり、**「モデルとしての相利共生」と「現実の複雑さ」**の両方を意識すると理解が深まる。
生態系を学ぶとき、「捕食」や「競争」などの対立関係だけでなく、今回のような協力や共生の関係にも目を向けてみると、自然界の見方がぐっと豊かになります。身の回りの動植物を観察するときにも、「この生き物は誰と協力しているのだろう?」という視点を持ってみると、新しい発見があるかもしれません。