地震は、地面がゆれ動く現象として知られています。しかし、地震の影響は「ゆれ」だけではありません。地震は大地そのものを動かし、地形を変え、川や海岸線、地面の高さや傾きまで変化させることがあります。目に見えない地下の力が、地表の形をつくりかえる――それが地震の大きな特徴です。
ここでは、地震によって大地がどのように変化するのか、代表的なしくみと具体例を整理します。

地球の表面は「プレート」と呼ばれる大きな板のような部分に分かれていて、ゆっくり動いています。プレート同士が押し合ったり、引っ張り合ったり、横にずれたりすると、地下の岩盤に力がたまり、ひずみが大きくなっていきます。
限界をこえると、岩盤が割れたり、急にずれたりして、たまっていた力がいっきに解放されます。これが地震です。
このとき、地下で起きた「ずれ」は、地表にも伝わり、土地の高さ・形・位置を変えることがあります。
断層とは、地下の岩盤が割れてできた面で、地震のときにその面に沿って岩盤がずれ動くことがあります。断層のずれが地表まで達すると、地面に「断層崖(だんそうがい)」や「地割れ」が現れ、道路や水路が急にずれて見えることもあります。
断層のずれ方には主に3種類があります。
とくに逆断層では、地面が持ち上がるため、短い時間で地形が変わったように見えることがあります。
地震では、広い範囲の地面が数センチから数十センチ、場合によってはそれ以上、上下に動くことがあります。
この変化は、海岸線に大きな影響を与えることがあります。たとえば隆起すると、以前は海だった場所が干上がって岩場が広がることがあり、沈降すると、高潮や満潮のときに浸水しやすくなることがあります。
地震では、土地が横方向にずれて「場所が動く」ことも起こります。地図で見たときの位置が変わるほどの変化が起きる例もあります。これは地殻変動の一部で、プレートの動きが一気に表面にあらわれたものです。
横方向の動きは、断層の種類や地震の規模によって異なり、広い地域がまとまって動く場合もあれば、断層をはさんで別々に動く場合もあります。
地震による大地の変化は、断層のずれだけではありません。強いゆれそのものが、地面の状態を変えたり、斜面や川の地形を変えたりすることがあります。
山や崖の斜面は、もともと重力で下へ引っ張られています。地震の強いゆれが加わると、斜面の土や岩が一気に崩れたり、すべり落ちたりします。
地すべりは、地震直後だけでなく、その後の雨で再び動き出すこともあり、長い期間にわたって地形の変化が続く場合があります。
砂が多く、水を多く含む地盤では、強いゆれによって砂粒の間の水圧が高まり、地面が「どろどろ」に近い状態になることがあります。これが液状化です。
液状化が起きると、次のような変化が見られます。
見た目では平らだった土地が、地震後に凸凹になったり、地盤が下がったりして、土地の使い方に影響が出ることもあります。
地震のゆれや断層運動によって、地面にひび割れが入ったり、帯状に裂けたりすることがあります。さらに、地面が一部分だけ沈んだり持ち上がったりして、道路や畑に段差ができることもあります。
地割れは大きな断層が原因のこともあれば、液状化や地すべりなど、地盤の変化が原因で生じることもあります。
地すべりや崩壊で大量の土砂が川に流れ込み、川をふさぐことがあります。すると、水がたまって新しい湖のような水たまりができることがあります。これは「天然ダム(自然ダム)」と呼ばれます。
天然ダムは、しばらく成り立つ場合もありますが、くずれると一気に水が流れ出し、下流の地形や土地利用に大きな影響を与えることがあります。
地震によって地下の割れ目が変化すると、地下水の通り道が変わります。その結果として、
といった変化が見られることがあります。地下水の変化は、地表の湿り方や土の状態にも影響し、土地の性質を変えていきます。
地震が海底で起きると、海底の地盤が大きく上下に動き、海水が押し上げられたり引き込まれたりします。これが津波の原因になります。
津波は波の高さだけでなく、海岸の地形にも影響を与えます。
津波による堆積物(砂や泥)は、その後の土地の高さや土の性質を変え、農地や町の利用のしかたにも影響を及ぼします。
地震で大地が動いたことは、目で見える地割れだけでなく、測定によっても確かめられます。
これらの方法により、どの地域がどの方向にどれくらい動いたかが分かり、地震後の地形変化や防災対策に役立てられます。
地震による大地の変化には、次のようなものがあります。
地震は一瞬で起こりますが、その結果として地形の変化は長く残り、暮らしや土地の利用にも影響を与えます。地震の記録や地形の観察を通して、大地がどのように動いてきたのかを知ることは、これからの安全な土地づくりにつながっていきます。
石川県・能登半島(2024年 能登半島地震)
海岸が大きく隆起し、港が浅くなる・磯が広がるなど「陸地がせり上がる」タイプの変化が目立ちました。場所によっては海岸線が沖側へ移動したとされます。
千葉県・房総半島南部(館山周辺など:1703年元禄関東地震/1923年関東地震)
地震による隆起の積み重ねが、長い時間をかけて海岸段丘(隆起した海成段丘=台地状の地形)として残ることで知られています。
宮城県・牡鹿半島〜宮城・茨城の太平洋沿岸(2011年 東北地方太平洋沖地震)
広い範囲で地盤沈降が起き、沿岸の土地の高さが変化しました。その結果、満潮時に浸水しやすくなる、護岸の条件が変わるなど、地形と土地利用に影響が出ました。
ニュージーランド南島・カイコウラ沿岸(2016年 Kaikōura地震)
海岸の広い範囲が隆起し、海底だった場所が地表化するなど、海岸地形が分かりやすく変化した例として知られています。
アメリカ・アラスカ(1964年 アラスカ地震:Montague Island など)
超巨大地震により、地域によって大きな隆起・沈降が発生し、海岸の高さや海岸線が変わりました(島の一部が目に見えて持ち上がった例が有名です)。
台湾中部・車籠埔(Chelungpu)断層周辺(1999年 集集(Chi-Chi)地震)
地表に断層崖(段差)が現れ、地面が急に持ち上がる・ずれるといった変化が、道路や地形としてはっきり残った代表例です。
インドネシア・スマトラ〜アンダマン周辺(2004年 スマトラ沖地震)
広域で隆起・沈降が起き、海岸や島しょ部の地形に大きな変化が生じたことで知られています(津波の背景としても重要です)。