SDGs14 問題点

SDGs14・海の豊かさを守ろう｜うまく進まない理由・改善策

SDGs14（海の豊かさを守ろう）は、海洋汚染を減らし、魚や生態系を守り、海の資源を持続可能に使うことを目指す目標です。

ただ、SDGs14は「海を守りましょう」という理想論で終わってしまうことがあります。実際には、漁業・物流・観光・製造業・生活排水など、海は社会のあらゆる活動とつながっているため、対策の合意形成が難しく、コストもかかり、成果が見えにくいという“進みにくさ”があります。

この記事では、SDGs14に関する代表的な**問題点（課題、批判、つまずきポイント）**を、できるだけ現実に即して整理し、最後に「ではどう改善できるのか」までまとめます。

この記事で扱う「問題点」の範囲

SDGs14の問題点は、大きく次の3種類に分かれます。

• 🌊 海そのものの問題（海洋汚染、乱獲、温暖化、酸性化など）
• 🧩 対策が進まない問題（コスト、規制の難しさ、監視不足など）
• 🏷️ SDGs運動の問題（SDGsウォッシュ、情報の曖昧さ、分断など）

「海の問題」だけでなく、「なぜ対策が進まないのか」という構造の問題まで含めて見ていきます。

SDGs14の主な問題点（課題・批判）

1）海洋ごみが減りにくい（発生源が多すぎる）

海洋ごみは海で発生しているように見えますが、実際には陸から流れ込む割合が大きいとされます。つまり、海岸清掃だけでは根本解決になりにくいのが問題点です。

• 🧃 使い捨て容器
• 🧵 漁具（ロープ、網）
• 🧴 日用品のプラごみ
• 🚬 たばこの吸い殻
• 🏙️ 雨で流れる街のごみ

ごみの種類が多様で、発生源も家庭・企業・観光・漁業など幅広いため、対策が分散して効きにくいという難しさがあります。

2）マイクロプラスチック対策が“見えない戦い”になりやすい

マイクロプラスチックは粒が小さく、回収が難しく、どこでどれだけ発生しているかも把握が簡単ではありません。

• 👕 化学繊維の洗濯で出る微細な繊維
• 🛞 タイヤ摩耗粉
• 🧴 マイクロビーズ（国や商品により状況が異なる）
• 🧱 プラスチックごみの劣化

「見えない」「測りにくい」「回収できない」の三重苦で、対策は発生抑制が中心になります。しかし発生抑制は生活・産業に広く関わり、合意形成が難しい問題点があります。

3）乱獲・違法漁業（IUU）を止めにくい

乱獲や違法漁業（IUU：違法・無報告・無規制漁業）はSDGs14の核心課題ですが、次の理由で止めにくい面があります。

• 🛰️ 監視コストが高い（広い海での取締り）
• 🚢 違法操業の隠蔽が起きやすい（船籍・水揚げ先の複雑さ）
• 🧾 トレーサビリティ（追跡）の不十分さ
• 💰 安い水産物が支持されやすい（価格圧力）

海は国境が曖昧になりやすく、各国の利害も絡むため、ルールはあっても守らせることが難しいのが問題点です。

4）「保護」と「生活」の衝突が起きやすい

海を守るために禁漁区や漁獲制限を強めると、短期的には漁業者の収入が減る可能性があります。観光業でも、開発規制が入ると雇用や利益が減ることがあります。

• 🐟 漁獲制限 → 生活への不安
• 🏝️ 観光規制 → 地域経済への不安
• ⚓ 港湾・物流 → 産業活動との調整

環境保護は大切でも、生活が守られないと反発が起きる。これが合意形成を難しくする大きな問題点です。

5）海の環境変化は“原因が複雑”で、成果が見えにくい

海の生態系は、気候・海流・水温・酸性化・赤潮・栄養塩・沿岸開発など、多くの要因が絡み合って変化します。

そのため、対策を打っても

• 📉 すぐには魚が戻らない
• 🌡️ 水温上昇で分布が変わり“戻らない”場合もある
• 🧪 汚染の影響が長期に残る

など、成果が見えるまでに時間がかかる問題点があります。成果が見えないと、政治・予算・企業投資の継続が揺らぎやすくなります。

6）国際協力が不可欠だが、足並みがそろいにくい

海はつながっています。ある国が頑張っても、別の国から汚染や乱獲が続けば、成果が薄まります。

• 🌍 ルールの強さが国で違う
• 💵 監視・管理の体制が国で違う
• ⚖️ 合意しても遵守の仕組みが弱い

つまりSDGs14は、国内努力だけで完結しにくいのが問題点です。

7）資金不足・人材不足（海の保全は“高コスト”）

海洋保全は、海岸清掃のような活動だけでなく、調査・監視・設備更新・下水処理改善・回収インフラなどが必要です。

しかし現実には

• 🧑‍🔬 調査人材が少ない
• 🛰️ 監視技術に投資が必要
• 🏗️ インフラ更新（下水・港湾）の費用が大きい

という“お金と人”の問題が立ちはだかります。

8）「企業の取り組み」がSDGsウォッシュになりやすい

SDGs14はイメージが良いため、企業のPRに使われやすい一方で、

• 🏷️ 「海を守ります」と言うだけ
• 📦 パッケージを少し変えただけで大きな成果のように見せる
• 🧾 根拠が薄いのに“エコ”を強調する

といったSDGsウォッシュが起きやすい問題点があります。

もちろん、企業の取り組みがすべて悪いわけではありません。ただ、評価指標が曖昧だと、実質より印象が勝つことが起きます。

9）消費者が「何を選べばよいか」分かりにくい

水産物の持続可能性は、漁法・漁場・資源量・管理状況などで大きく変わります。

しかし買う側から見ると、

• 🐟 魚の名前だけでは背景が分からない
• 🧾 表示が統一されていない
• 💬 情報が専門的で難しい

という問題点があり、結果として「分からないからいつも通り買う」になりやすいです。

10）リサイクルの限界（分別しても海に流れることがある）

リサイクルは重要ですが、万能ではありません。

• ♻️ 品目によってはリサイクルが難しい
• 🚛 回収・選別・再生にコストがかかる
• 🧪 何度も再生できない素材もある
• 🌧️ そもそも回収前に屋外から流出するごみがある

そのため「リサイクルさえすればOK」という理解は、SDGs14における問題点になり得ます。

SDGs14の問題点を減らすための改善策（現実的な方向性）

問題点を挙げるだけでは前に進みません。ここでは改善の方向性を整理します。

改善策1：海に行く前に止める（発生源対策を強化）

• 🧴 使い捨てを減らす設計（リフィル・詰め替え・再利用）
• 🚮 ポイ捨てされにくい回収インフラ（ごみ箱設置、回収頻度）
• 🌧️ 雨水で流れ込みやすい場所の対策（側溝・清掃）

「海で拾う」より「海に行かせない」が基本です。

改善策2：水産物のトレーサビリティを広げる

• 🧾 どこで・どう獲ったかの情報を整える
• 🔎 不透明な流通を減らす
• 🛰️ 監視データや技術を活用

違法漁業を減らすには、監視だけでなく、 **売れない仕組み（流通で排除）**が重要になります。

改善策3：地域の生活を守る“移行支援”をセットにする

規制だけ導入すると反発が起きます。

• 💰 収入が落ちる期間の支援
• 🧰 漁法転換・設備更新への補助
• 🏝️ 観光の質を上げる（人数より付加価値）

環境保護と生活を両立させるには、移行の痛みを減らす設計が不可欠です。

改善策4：指標を増やし、ウォッシュを減らす

「何をやれば達成したと言えるのか」が曖昧だと、PRが先行します。

• 📏 ごみ削減量、回収率、水質、漁獲圧、保護区の実効性などを見える化
• 🧪 第三者評価（監査・認証）の活用

“言ったもの勝ち”にならない仕組みが必要です。

改善策5：個人は「長く効く行動」に集中する

個人の行動は小さく見えますが、選択が積み重なると市場が変わります。

• 🧃 使い捨てを減らす（マイボトル、詰め替え）
• 🧺 物を長く使う（買い替え頻度を下げる）
• 🐟 情報がある範囲で水産物を選ぶ（完璧を求めすぎない）
• 🚮 分別＋“流出させない”行動（ポイ捨てゼロ、持ち帰り）

完璧主義より、続く行動が勝ちです。

まとめ：SDGs14は「海の問題」より「社会の仕組みの問題」でもある

SDGs14の問題点は、海洋ごみや乱獲のような環境課題だけではありません。

• 対策の発生源が多い
• 見えにくく測りにくい
• 国際協力が必須
• 生活や産業との衝突が起きる
• コストと人材が足りない
• ウォッシュや情報の曖昧さが起きやすい

だからこそ、 発生源対策・透明な流通・移行支援・指標の見える化が重要になります。

海を守るために必要なのは、気合ではなく仕組みです。