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レアアース埋蔵量ランキング

レアアース埋蔵量ランキング

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最新動向と背景

EV(電気自動車)、風力発電、スマホ、半導体、そして防衛産業まで――現代のハイテク社会は「レアアース(希土類元素)」なしでは回りません。ニュースでは「中国が握っている」「供給が止まると大変」といった話題が多いですが、そもそも世界のどこにどれくらい埋蔵されているのでしょうか。

この記事では、最新の推計にもとづく「レアアース埋蔵量(リザーブ)」の国別ランキングをわかりやすく整理し、数字の読み方や背景、今後の見通しまでまとめます。


1. そもそもレアアースとは?(ざっくり整理)

レアアースは、周期表で「ランタノイド15元素+スカンジウム+イットリウム」の計17元素の総称です。代表例はネオジム、ジスプロシウム、テルビウム、セリウム、ランタンなど。

  • 強力な磁石(ネオジム磁石) → EVモーター、風力発電、HDD、スピーカー
  • 発光・表示材料 → スマホやTVのディスプレイ、LED
  • 触媒・研磨材 → 車の排ガス浄化、ガラス研磨

「レア(希少)」といっても地殻中に少ないわけではなく、濃集した鉱床が少ない/分離精製が難しいために希少資源扱いされます。


2. 注意:この記事の「埋蔵量」とは何か

ランキングで使われる「埋蔵量(Reserves)」は、

  • 現時点の技術・価格・制度環境で
  • 採算が取れると見込まれる量

のことです。

つまり、

  • 新しい鉱床が見つかった
  • 採掘コストが下がった
  • 価格高騰で採算ラインが変わった

などで埋蔵量は毎年けっこう動きます。

(例:ベトナムやロシアの埋蔵量が、報告精査で大幅に下方修正された年があります。)


3. レアアース埋蔵量 世界ランキング(2025年推計)

最新の国際推計(レアアース酸化物換算)をもとにした上位ランキングは次の通りです。

■ 上位8か国ランキング

  1. 中国:4,400万トン
  2. ブラジル:2,100万トン
  3. インド:690万トン
  4. オーストラリア:570万トン
  5. ロシア:380万トン
  6. ベトナム:350万トン
  7. アメリカ:190万トン
  8. グリーンランド(デンマーク):150万トン

世界全体の埋蔵量は約1.2億トン規模とされ、中国が「量」でも最大クラスであることが分かります。


4. 各国の特徴と「量の意味」

1位:中国(4,400万トン)

中国は内モンゴルのバヤンオボ鉱山など巨大鉱床を複数持ちます。加えて採掘・分離・精製・磁石製造まで一貫した産業チェーンを国内に持つのが最大の強み。

  • 「埋蔵量が多い」だけでなく
  • 「加工して製品化できる」

という点で世界の中枢にいます。

2位:ブラジル(2,100万トン)

南米最大の資源国。近年、イオン吸着型粘土鉱床などの開発が進み、**“中国以外の磁石用レアアース供給地候補”**として注目が急上昇しています。

3位:インド(690万トン)

沿岸部の**モナザイト砂(海浜砂鉱床)**にレアアースが多いのが特徴。政府主導で精製・磁石産業の育成に力を入れ、将来的に供給国としての存在感が増すと見られています。

4位:オーストラリア(570万トン)

マウント・ウェルド鉱山を中心に、採掘・濃縮のインフラが整っている非中国圏の代表格。 ただ、精製部分は海外(マレーシアなど)に依存しており、サプライチェーン強化が課題です。

5位:ロシア(380万トン)

埋蔵量は大きい一方、採掘・加工の実働規模はまだ小さいのが現状。欧米制裁や投資環境の問題もあり、どこまで実用化・輸出できるかは政治情勢に左右されます。

6位:ベトナム(350万トン)

かつて“世界2位級”とされた埋蔵量が、報告再評価で大幅に下方修正されました。量は減ったものの、中国隣接の地理と新規開発余地から、依然として重要な供給候補地です。

7位:アメリカ(190万トン)

カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山などが中心。採掘量は多いのに埋蔵量順位が低いのは、採算条件や資源評価の厳しさが影響しています。 米国は「採掘はできるが精製が弱い」ため、中国依存を減らす目的で国内精製や同盟国連携を急いでいます。

8位:グリーンランド(150万トン)

人口が少ない一方で資源は巨大。環境規制と政治判断(対中・対欧米)で開発が左右されます。**“将来の潜在エース”**のような立ち位置です。


5. 近年の大きな変化:埋蔵量は「毎年動く」

レアアースは、他の鉱物よりも埋蔵量の修正が激しいジャンルです。

  • ベトナムの大幅下方修正
  • ロシアの下方修正

など、各国の報告精度や採算前提が変わるとランキングも変わります。

さらに最近では、

  • 中央アジア(例:カザフスタン)の巨大鉱床発見報道
  • アフリカの新規探鉱

といった動きがあり、“公式に埋蔵量へ計上されるかどうか”が次の注目点になります。


6. 「埋蔵量が多い国=強い国」ではない理由

レアアースは、「掘る」より「分けて精製する」ほうが難しい資源です。

  • 同じ岩の中に17元素が混ざっている
  • 化学的性質が似ていて分離が非常に大変
  • 精製には大量の薬品・廃液処理が必要

そのため、

埋蔵量が多くても、精製できなければ意味が薄い

という構造が生まれます。

ここで中国が圧倒的に強いのは、採掘量だけでなく精製・磁石製造まで長年の蓄積があるためです。


7. 日本との関係:なぜ日本にとって重要か

日本はレアアースをほぼ輸入に頼ります。

  • EV・ハイブリッド車
  • 風力・発電設備
  • 精密モーター
  • スマホ・電子部品

これらの競争力は、安定調達できるかどうかに直結。

過去に中国が輸出制限を示唆した際、日本の産業が大きく揺れた経験もあり、

  • 豪州・米国・東南アジアとの連携
  • リサイクル強化
  • 代替材料研究

といった“脱・一国依存”が国家戦略になっています。


8. 今後の見通し

レアアース市場は、

  • EV普及
  • 再生可能エネルギー拡大
  • 防衛需要

需要が中長期的に増える方向です。

一方で供給は、

  • 新鉱床開発の遅れ
  • 精製設備の環境・規制コスト
  • 地政学リスク

によって一気に増えにくい

その結果、

  • 「埋蔵量はあるのに供給が不安定」
  • 「加工設備の国に主導権が集中」

という構図はしばらく続く可能性が高いでしょう。


まとめ

  • レアアース埋蔵量トップは中国(4,400万トン)
  • ブラジル、インド、豪州、ロシア、ベトナム、米国が続く
  • 埋蔵量は毎年見直され、順位も変動する
  • 「埋蔵量の多さ」より「精製・供給網」が主導権の鍵
  • 日本にとっては安定調達とリサイクル・代替研究が重要

レアアースは“地中の量”だけでなく、“地上の産業と政治”で価値が決まる資源です。ランキングを入り口に、供給網のニュースにも注目していくと、世界の動きがよりクリアに見えてきます。

 

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