山本由伸の専属シェフ
菊地慶祐さん(経歴・仕事の流儀・実践メソッド)
MLBロサンゼルス・ドジャースのエース、山本由伸選手の“食”を支えるのが、専属シェフの**菊地慶祐(きくち けいすけ)さんです。オリックス時代(2021年末)から帯同し、メジャー移籍後もロサンゼルスで朝・夕食+昼の弁当(補食含む)**まで一貫設計。単なる料理人ではなく、栄養学・消化生理・睡眠・遠征スケジュールを束ねる“パフォーマンスシェフ”として山本選手のコンディションを支えています。
本記事では、山本由伸の専属シェフ、菊地さんのプロフィールと経歴、専属シェフの具体的な役割、登板サイクルに連動した食事 periodization、衛生・遠征・買い出し・キッチン運用まで、実務の全体像が分かるように整理しました。
プロフィール(公表情報の整理)
- 名前:菊地 慶祐(Keisuke Kikuchi)
- 生年:1995年3月21日
- 出身:東京都
- 資格:調理師免許
- 言語:日本語/ドイツ語
- 主な担当歴:サッカー日本代表FW・浅野拓磨選手の専属料理人 ほか
- 専属開始:2021年12月〜(オリックス→MLB移籍後も継続)
欧州修業で培った“味の幅”と、アスリート帯同で磨いた“再現性”。「おいしい」に科学の裏付けを与えるのが持ち味です。
経歴(タイムライン)
- 高校〜国内修業:駒場学園高校(食物調理科)で基礎を固め、都内のオーストリアン×フレンチの名店でクラシックから現代的テクニックまで習得。
- 2016年 渡独:語学学校でドイツ語を学び、ケルンの日本料理店にて料理長を務める。異文化環境での仕入れ・人材マネジメント・原価管理を実地で経験。
- 帰国後:アスリートの帯同シェフへ。浅野拓磨選手のスケジュールに沿った食事 periodization(強度・移動・試合日の時系列で栄養配分を設計)を実践。
- 2021年末〜:オリックス・山本由伸選手の専属シェフに就任。ポストシーズン、国際大会、メジャー移籍後の環境適応まで一貫サポート。
山本由伸×菊地慶祐:専属シェフの役割
アスリートの“食”は、**計画(Plan)→実行(Do)→記録(Log)→調整(Adjust)**の循環で精度が上がります。菊地さんの仕事は以下のレイヤーで構成されます。
1)パフォーマンス設計(栄養×登板サイクル)
- ローテーション(5〜6日)を前提に、グリコーゲン再合成→炎症制御→睡眠の質向上を狙う波形を作成。
- 消化負荷を制御(前日夜は高脂質回避、試合当日は低繊維・低FODMAP寄りなど)。
- 水分・電解質を細かく最適化(ナトリウム/カリウム/マグネシウム)。
2)遠征対応(環境制約を味方に)
- 時差・移動が大きいMLBでは、現地スーパーの食材から**再現性の高い“型”**を作る。
- ホテル調理可否/球場の提供食の傾向を踏まえ、**持ち運び可能な“マイ弁当&補食”**でギャップを埋める。
3)メンタル×嗜好(継続させる工夫)
- 長期シーズンの単調化を避けるため郷土料理・季節感を周期的に挿入。
- 「満足感=コンプライアンス(食事の遵守率)」と捉え、味・見た目・香りに配慮。
4)チーム連携(PDCAの推進)
- S&C、メディカル、パフォーマンス部門と**体重・睡眠・主観的疲労(RPE)**などを共有。
- 計測・記録に基づく微調整(例:連戦後のむくみ→塩分・水分タイミングの見直し)。
1日の流れ(例)
登板前日:軽負荷・整える日
- 朝:低脂質・中糖質の朝食でエネルギーを温存。カフェインは就寝に響かない時間帯に最小限。
- 昼:白米/うどん中心。食物繊維は控え、消化遅延を避ける。
- 夜:白身魚の酒蒸し、味噌汁、温野菜など**“軽いのに満足する”**構成。
登板当日:パフォーマンス最優先
- 試合前:白米少量 or お粥+低脂質たんぱく(鶏むね塩麹)。電解質飲料で体内水分を整える。
- イニング間/試合中:咀嚼回数の少ない補食(ゼリー/米バー等)を状況に応じて。
- 試合後:糖質+たんぱく質を30〜60分目安で補給。抗酸化を意識した副菜を添える。
オフ日:回復と“味の楽しみ”
- 疲労度を見つつ、鉄・亜鉛・ビタミンB群を手堅く確保。味のバリエーションを広げ、メンタルの充電も同時に行う。
登板サイクル別のメニュー設計(拡張版)
登板3日前(ビルド期)
- 主食:発芽玄米+白米のブレンド(グリコーゲン貯蔵)
- 主菜:鶏ももロースト・ハーブマリネ(鉄・亜鉛)
- 副菜:根菜とオリーブの温サラダ(抗酸化)
- 間食:バナナ+蜂蜜+ヨーグルト
登板2日前(筋損傷ケア/量は確保)
- 主食:白米・パスタ(中GI)
- 主菜:サーモンの香草焼き(ω-3)or 牛赤身のステーキ(クレアチン源)
- スープ:ミネストローネ(K・Mg)
- 間食:果物+乳製品、ナッツ少量
登板前日(消化性重視)
- 主食:白米・うどん(低繊維)
- 主菜:白身魚の酒蒸し+生姜
- スープ:味噌汁(Na調整)
- 間食:おにぎり、ライスケーキ
当日(試合前〜試合後)
- 試合前:お粥+鶏むね塩麹、電解質飲料
- 試合後:白米+果物/鮭の味噌焼き or 牛赤身、緑黄色野菜の胡麻和え、具だくさん味噌汁
これらは思想の雛形。実際は体調・移動・対戦・睡眠ログで日々チューニングされます。
補食・水分・サプリ(一般的な枠組み)
- 補食:米系バー、ゼリー、果物、ヨーグルトなど消化に優しい選択肢を用意。
- 水分・電解質:汗量・気温・湿度・移動で変動。前日夕〜当日のタイミングが要所。
- サプリ:食品を基本に、必要性・安全性・競技規定を確認の上で個別最適化(メーカーや用量の特定はプライバシー保護のため非公開が原則)。
キッチン運用と衛生(HACCP視点)
- 温度管理:冷蔵4℃以下/加熱75℃1分以上を目安に危険温度帯を回避。
- 交差汚染対策:生鮮・加熱済みの動線分離、包丁・まな板の用途分け、手指・器具消毒。
- 持ち運び:真空パック・急冷・保冷ボックス併用でリスクを最小化。
- 記録:仕入れロット・加熱温度・保存時間などをログ化し再発防止に活用。
米国での食材調達と再現性
- 現地スーパー/日系マーケットの両輪で、味の再現性を確保。
- 魚介は冷凍品質も選択肢にし、タンパク源の偏りを回避。
- 調味は塩麹・味噌・出汁を軸に、脂質を増やさず旨味で満足度を出すのが定番パターン。
菊地流・“勝てる食卓”の原則(拡張)
- 習慣化:選手が“無理なく続けられる味”。栄養は裏側で調整。
- データ連動:体重・睡眠・RPE・移動距離まで食事に反映。
- 安全第一:遠征時ほど衛生管理を厳格に。特に夏場・長距離移動は要注意。
- 文化の翻訳:海外生活でも“日本の安心感”を再現。味のホームを作る。
- 見た目の力:色彩・盛り付け・香りで食べ進めやすさを上げる。
ケーススタディ(想定シナリオ)
- デーゲーム連発:睡眠短縮→朝食の糖質比率を上げ、脂質は控えめ。水分は起床直後→球場到着時に2段階補給。
- 海抜・乾燥地域の遠征:脱水リスク増→ナトリウム/カリウム比の再設計、果物と汁物で摂取容易性を高める。
- 胃もたれ傾向:前夜の脂質削減、低FODMAP寄せ、食間を短く少量多回に。
メディアで語られるトピック
- メジャー初勝利期に注目された**“特製・勝利メシ”**。
- オリックス時代から続く**“マイ弁当”**習慣と、現地食材へのアダプテーション。
- 国際大会・キャンプでの帯同シェフの重要性(時差・衛生・再現性の観点)。
よくある質問(拡充)
Q. どこまで帯同しますか?
A. 基本は自宅キッチン中心+球場・遠征用の弁当・補食。大会期間やキャンプでは現地買い出し・仕込みも。
Q. 好物は反映されますか?
A. はい。コンディションを優先しつつ周期的に好物を入れて満足度を担保します。
Q. レシピは公開されていますか?
A. ジュニア向け献立や考え方が解説される例はありますが、個別の詳細レシピは非公開が原則です(プライバシー保護)。
Q. 料理の“味付け”は濃い?薄い?
A. シーズン中は薄味ベース。ただし汗量・気温・連戦で塩分設計を柔軟に調整します。
Q. 日本とアメリカの食材差は?
A. 鮮魚の選択肢やカット規格が異なります。調理法を現地の規格に合わせ、味の再現性を担保します。
若手アスリートへの示唆(一般化)
- 型を作る:朝・昼・夜・補食の“基本形”を持つと遠征でも崩れにくい。
- ログを残す:体重・睡眠・練習強度と食事を紐づけて記録。再現性が上がる。
- 味の満足感:続かなければ意味がない。おいしさの設計は戦略そのもの。
まとめ
菊地慶祐さんは、味覚×科学×現場運用を横断する“食の設計者”。登板サイクル・移動・睡眠まで見据えたperiodizationと、遠征環境下でも揺らがない再現性で、山本由伸選手のパフォーマンスを支えています。MLBという長丁場で結果を出し続けるには、身体の“基礎インフラ”である食を日々のPDCAで磨き続けること――その実践を体現しているのが菊地さんです。
参考・注記
- 本稿は公開情報に基づいて構成し、個人のプライバシーを尊重しています。固有名詞・数値・具体的レシピなどは公開範囲に準拠して記載しています。