前田健太・メジャーリーグ成績
(2025年シーズン終了時点)
日本プロ野球(広島東洋カープ)で数々のタイトルを獲得したのち、2016年にロサンゼルス・ドジャースでMLBデビューを果たした前田健太。MLBでは先発・リリーフの“スイングマン”として柔軟に起用され、ポストシーズンでも存在感を示してきました。本稿では メジャーでの成績・役割・投球指標・近年の動向 を、できるだけ詳しく整理します(数値は公的な記録サイトの最新公表値に基づく)。
1. メジャー通算成績のハイライト
- MLB通算:登板数/勝敗、投球回、奪三振、WHIP などの主要指標で、長期にわたって先発ローテとブルペンを兼務。
- デビュー年(2016年):ナ・リーグ新人王投票で3位。シーズン 16勝 を挙げ、チームのポストシーズン進出に貢献。
- 2020年:ミネソタ・ツインズ移籍初年度の短縮シーズンで圧巻の内容。 ア・リーグのサイ・ヤング賞投票2位。与四球の少なさと被打たれにくさ(WHIP)でリーグ上位に位置。
- トミー・ジョン手術(2021年末)→2022年欠場 を経て、2023年に実戦復帰。
- 2024年〜2025年:デトロイト・タイガース加入後は不振で、2025年は主にリリーフ起用。シーズン途中の人事異動(DFA→FA→マイナー契約)を経験。
通算主要成績(〜2025年終了時点の公表値ベース)
登板:約226、勝敗:68勝56敗、防御率:4.20、投球回:986.2回、奪三振:1,055、WHIP:1.17。
※端数や細部は公式記録の更新に準じます。
2. 年度別サマリー(役割・トピック重視)
2016(ドジャース/MLBデビュー)
- 先発ローテ入り。 16勝、NL新人王投票3位。多彩な球種配分とコマンドでMLBの打者に即対応。
- ポストシーズンでも登板し、以後の“勝負どころでの起用”につながる信頼を獲得。
2017(ドジャース)
- シーズン中は先発主体。ポストシーズンは短いイニングの救援として高いパフォーマンス。滑らかなメカニクスとスライダーのキレで右打者を封じる場面が目立つ。
2018(ドジャース)
- 先発と中継ぎを併用するスイングマン起用が定着。試合展開・対戦打者に応じた柔軟なマッチアップでチームに貢献。
2019(ドジャース)
- シーズン序盤は先発、終盤はブルペン強化のため救援に回る。ポストシーズン経験値をさらに積み上げる。
2020(ツインズ)
- トレードでミネソタ・ツインズへ。短縮シーズンながら球威・コマンド・空振り率が軒並み上振れ。
- サイ・ヤング賞投票2位、WHIP・与四球率などでリーグ屈指。チェンジアップとスライダーのコンボが冴え、球数効率も良好。
2021(ツインズ)
- 夏場以降に肘の不調が顕在化。2021年末にトミー・ジョン手術を受け、翌2022年は全休へ。
2022(全休)
2023(ツインズ)
- 復帰年。序盤に調整遅れや炎症もあったが、シーズン後半はK/BBの良化や被打球管理の改善が見られ、一定の再評価へ。
2024(タイガース)
- FAでデトロイト・タイガースと契約。先発中心で起用されるも安定感に欠け、防御率・被本塁打の面で苦戦。夏場以降は救援起用が増える。
2025(タイガース→マイナー契約を経て別球団)
- 開幕はブルペン。短いイニングでの運用も、序盤戦に打ち込まれ防御率が高止まり。
- 5月にDFA(事実上の戦力外)→リリース。その後シカゴ・カブス、ニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約を結び、再起を図る流れに(3Aでの調整を含む)。
※2025年のメジャー一軍登板は短イニングに限られ、ERA 7点台・投球回は一桁台というスモールサンプル。球速帯は低〜中90マイル、スライダーとチェンジアップの割合を調整しつつ適性の見極めが続いた。
3. ポストシーズンでの価値
- 2017年以降のドジャース時代は、
- 右打者キラーとしてのスライダー、
- 左打者へのチェンジアップ、
- コマンドの再現性
を武器に、“勝ちパターン前後の1〜2イニング”を任される形で高い価値を提供。
- レギュラーシーズンのロールとは異なるショートスティント最適化がはまり、重要局面での被打たれにくさを示した。
4. 投球スタイルと指標
- 投球フォーム:スリークォーター気味の腕の高さ+“間”を作る独特のフォーム。タイミングを外すのが上手い。
- 主要球種:
- フォーシーム(低〜中90mph台)
- スライダー(80mph台前半〜中盤)
- チェンジアップ(80mph前後)
- 時折カーブ・ツーシームも織り交ぜる
- 指標面の特徴(通算傾向):
- 奪三振率(K%)はMLB通算で25%前後のレンジに乗るシーズンが多く、空振りを奪う力はキャリアを通じて平均以上。
- 与四球率(BB%)は低め〜平均並みで、K/BBのバランスは良好。
- 被本塁打が増える年は防御率が跳ねやすく、ゴロ割合(GB%)が4割前後に収まる年は安定しがち。
- リリーフ適性:1〜2周目に球質・コマンドが尖るタイプで、ショートスティント最適化と相性良し。2025年はこの特性を再確認する起用が中心でした。
5. 2024–2025の詳細トピック
5-1. 2024年:タイガースでの苦戦
- 先発17登板を含むシーズンで防御率が高止まり。打者の見極めが進む中、速球系の空振り獲得率とゾーンでの決め球の再現性が課題に。
- シーズン終盤は救援での起用が増加。球数・対戦打者の限定でパフォーマンス回復を図るも、総合指標は伸び悩み。
5-2. 2025年:リリーフ特化と人事の動き
- 開幕ブルペン→短期での登板集中。ERAは7点台、投球回は一桁台のスモールサンプル。
- 5月:DFA→リリース。
- 5月中旬:カブスとマイナー契約。
- 8月初旬:ヤンキースとマイナー契約、3Aで調整(再昇格を目指す)。
この間、球種配分の見直し(スライダー/チェンジアップ比率、初球ストライク率の改善)や、フォーシームのゾーン攻めの最適解探索が続いたと見られる。
6. スカウティング観点の評価
- 長所:
- 多彩な球種を打者タイプ別に最適化できる戦術眼。
- コマンドとチェンジアップの質。
- “勝負所での度胸”と、短いイニングでのパフォーマンス最適化。
- 課題:
- 年齢的な球威の漸減に伴う速球空振り率の低下。
- フライボール傾向が強い年の被本塁打管理。
- 先発としての3巡目対戦での持続性。
7. 数字で振り返るキーポイント(抑えたい目安値)
- 通算: 68勝56敗/ERA 4.20/986.2回/1,055奪三振/WHIP 1.17
- 2016年: 16勝(NL新人王投票3位)
- 2020年: ALサイ・ヤング投票2位(短縮シーズンでのリーグ上位指標)
- 2025年: 救援中心でERA 7点台・投球回一桁(短期サンプル)。
8. 前田健太の今後
- 役割:短いイニングでの“マッチアップ特化”は依然として有用。右打者偏重ライン/高低使い分けに強みがあり、ハイレバリッジのブリッジ役として再浮上の余地。
- 調整ポイント:
- 初球ストライク率の改善と追い込むまでの組み立て簡素化。
- スライダーの見せ球と決め球の明確化(球速帯の二段構え)
- フォーシームのインハイ・バックドアの比率最適化で被本塁打抑制。
- 展望:3Aでの安定登板→メジャー昇格機会をうかがう流れ。ブルペンの層とチーム事情次第で9月〜翌年春にかけて再評価のチャンス。
9. 参考:NPBからMLBへの橋渡し
- NPB時代のコマンド・変化球主導の投球がMLBでも通用した点は示唆的。球数・対戦打者管理と場面最適化は、NPB出身投手のMLB適応モデルの一つとして今後も参照価値が高いと言えます。
まとめ
- MLBでの前田は、“数字以上の勝ち筋を作る最適化投手”として重要な役割を担ってきました。先発の柱→スイングマン→救援特化へと役割を変えつつ、局面適応力で価値を出し続けている点が最大の特徴です。2025年は厳しい数字が並んだものの、短いイニングでの再最適化と球種配分のチューニング次第で、依然として戦力に戻る余地は十分にあります。