ブルワーズ・投手陣
ミルウォーキー・ブルワーズピッチャー陣ガイド(NLCS直前)
カブスとのNLDS(ナ・リーグ地区シリーズ)を制したブルワーズは、NLCS(ナ・リーグ優勝決定シリーズ)でドジャースと対戦します。本記事ではミルウォーキー・ブルワーズの投手陣(登録12投手)を一人ずつ概観し、投球スタイル、今ポストシーズンでの役割、そしてドジャース打線への鍵ポイントを整理します。
用語ミニガイド
- NLDS:ナ・リーグ地区シリーズ(5試合制、3勝先取)
- NLCS:ナ・リーグ優勝決定シリーズ(7試合制、4勝先取)
- 右投げ/左投げ:RHP(Right-Handed Pitcher)とLHP(Left-Handed Pitcher)の日本語表記
- 先発:試合の最初に投げる投手
- 中継ぎ(ブリッジ):先発から抑え(クローザー)につなぐ役割。ブリッジ=“つなぎ役”のこと
- 抑え(クローザー):最終回などの勝ち試合を締める投手
- オープナー(最初だけ短い回を投げる起用法):先発の代わりに、短い回数だけ最初を投げる起用法
- 高レバレッジ:同点や1点差など、試合の勝敗に大きく影響する重要局面
- 100マイル:球速の慣用表現で約161km/h
参考:ミルウォーキー・ブルワーズはNLDS第5戦は救援継投でつかみ、ジェイコブ・ミシオロウスキが今シリーズ2勝目、アブナー・ウリベがセーブ。ポストシーズン個人成績ではフレディ・ペラルタが奪三振で先導しています。
先発グループ(およびロング要員)
フレディ・ペラルタ(右投げ)
- タイプ:フォーシーム+鋭いスライダー/カーブ。回転の良い直球を高めに配し、空振りとフライアウトを量産。
- 今秋の役割:NLCSでもミルウォーキー・ブルワーズの投手の柱。中4〜5日での先発が基本線。
- 対ドジャースの鍵:上位(ベッツ、オオタニ、フリーマン)に対し、初球ストライク率と高め直球の見極めをどう崩すか。変化球のカウント球化が肝。
ジェイコブ・ミシオロウスキ(右投げ)
- タイプ:100マイル級の速球とパワースライダーを持ち、ブルワーズが誇る投手の一人。角度のある縦変化でゴロ/空振りを奪う。
- 今秋の役割:NLDSで2勝。先発または“ブリッジ”のロングで勝負所投入も。
- 対ドジャースの鍵:ベッツや大谷ら強打者の高め速球対応に対し、ゾーン上下のメリハリ。四球を避け、5回前後まで最少失点が目標。
クイン・プリースター(右投げ)
- タイプ:シンカー基調にカーブ/スライダーを織り交ぜるコンタクト管理型。
- 今秋の役割:先発/ロングのハイブリッド。相手の左右や球場で起用を変える柔軟運用。
- 対ドジャースの鍵:シンカーの見極めに長けた打線相手には、横変化(スライダー)比率を上げ、弱い当たりを量産したい。
ホセ・キンタナ(左投げ)
- タイプ:平均球速は高くないが、コマンド重視のチェンジアップ/カッターで目先を変える。
- 今秋の役割:左の安定感。5回前後まで試合を作るタスク、もしくは第1先発の後ろでのロング救援も。
- 対ドジャースの鍵:フリーマン、マンシーら左強打に対し内外角の出し入れでゴロ化。球数を抑えたい。
チャド・パトリック(右投げ)
- タイプ:ストレート+スライダーの縦横コンボ。テンポ良くストライク先行。
- 今秋の役割:スポット先発/マルチイニング。連戦中の“休ませ役”として計算。
- 対ドジャースの鍵:長打ケアで低目スライダーの精度が鍵。序盤の失点最少化。
ロバート・ギャサー(左投げ)
- タイプ:コマンド型の左腕。ファストボールの出し入れとチェンジアップでタイミングを外す。
- 今秋の役割:第4先発候補/ロング。相手の左打者が多い場面で勝ちパへの“受け渡し役”。
- 対ドジャースの鍵:オオタニ、フリーマンに対し、チェンジアップの落差をどこで見せるか。
勝ちパ・高レバレッジ
アブナー・ウリベ(右投げ)
- タイプ:100マイル前後の速球+鋭いスライダー。終盤の制圧力が売り。
- 今秋の役割:抑え(クローザー)本命。1点差〜2点差を任される局面が増加。
- 対ドジャースの鍵:四球を避けること。走者出塁後のスライダーの見せ方でバットの芯を外す。
トレバー・メギル(右投げ)
- タイプ:角度あるフォーシーム。ゾーン上部で空振りを奪うパワー系。
- 今秋の役割:**8回の男/オープナー(最初だけ短い回を投げる起用法)**も可。複数イニング対応力が武器。
- 対ドジャースの鍵:ベッツ系の高め対応に対し、フォーシームの高さ管理とバックドア系スライダーの出し入れ。
ニック・ミアーズ(右投げ)
- タイプ:フォーシーム+スライダー。右打者への決め球に自信。
- 今秋の役割:7回前後のファイアマン。走者有りでの火消し投入も。
- 対ドジャースの鍵:右の強打(ベッツ、エンリケら)にスライダーをどこまで見せ球にできるか。
ジャレッド・ケーニグ(左投げ)
- タイプ:変則気味の左腕。打者に角度を見せて弱コンタクトを誘う。
- 今秋の役割:ワンポイント〜1イニングの左殺し。下位に左が並ぶ回で投入。
- 対ドジャースの鍵:左の中軸への初球ストライクとバックフット・スライダーの精度。
アーロン・アシュビー(左投げ)
- タイプ:シンカー&スライダーのゴロ量産型。球威と横変化でバレにくい。
- 今秋の役割:左右不問のブリッジ。連投回避しつつ要所で2者〜4者を面倒見る。
- 対ドジャースの鍵:強打の角度打ちをゴロに変換できるか。内寄りのシンカーで詰まらせたい。
グラント・アンダーソン(右投げ)
- タイプ:スライダー比率高めの横変化派。テンポ良く凡打を作る。
- 今秋の役割:ミドル〜ビハインドで試合を壊さない役割。
- 対ドジャースの鍵:先頭打者の出塁阻止。初球からゾーンで勝負して球数を抑える。
役割の使い分け(NLCSの総論)
- 先発の並べ方:ペラルタを軸に、ミシオロウスキ/キンタナ/プリースター/ギャサーの順で相手打線と球場に応じた可変制。
- “ブリッジ(中継ぎのつなぎ役)”戦略:中盤(4〜6回)にアシュビーやメギルを差し込み、**ウリベの1イニング(または4アウト)**へバトンを渡すのが理想形。
- 左の当て方:フリーマンやマンシーにキンタナ/ギャサー/ケーニグを優先投入。走者背負った場面ではゴロ設計のアシュビーも刺さる。
- 四球と走者管理:ドジャースは走者一塁→長打の破壊力が最大化するため、四球半減が勝率の近道。カウント有利での“ゾーン勝負”を徹底。
キープレーヤーのXファクター
- ペラルタ:初回の立ち上がり。先頭の出塁抑制でゲームの重心を自軍へ。
- ミシオロウスキ:球数管理。5回70〜85球に収められるか。
- ウリベ:連投可否。**バック・トゥ・バック(連投)**の可否次第で勝ちパ運用が変わる。
- メギル:オープナー(最初だけ短い回を投げる起用法)適性。ロースコアの先取点演出に寄与。
まとめ
ブルワーズは**“多様性×可変運用”が最大の強み。豪腕のウリベ、柱のペラルタに加え、ミシオロウスキの台頭、左の層(キンタナ/ギャサー/アシュビー/ケーニグ)が相手の並びに応じて刺さる構図です。ドジャースの看板打者に対しても、球質・角度を使い分ければ接戦を取り切る設計**は十分に可能。NLCSでも“1点を守り切る”ブルワーズらしさに注目です。
ミルウォーキー・ブルワーズの豆知識
ポストシーズンで注目を集めるミルウォーキー・ブルワーズ。実はこのチームには、球史を彩るユニークなエピソードや、ファンを笑顔にさせる小話が数多く存在します。ここでは、知っていると少し自慢できるブルワーズのトリビアを紹介します。
🐮 チーム名の由来
ミルウォーキーはかつてからビールの生産で有名な都市。チーム名「ブルワーズ(Brewers)」は“ビール醸造家”の意味で、まさに街の産業と密接に結びついた名前です。チームのロゴにもビールジョッキや麦をモチーフにしたデザインが多く使われています。
⚾ アメリカンリーグからナショナルリーグへ
1970年に設立された当初、ブルワーズはアメリカンリーグ(AL)に所属していました。しかし、1998年のリーグ再編でナショナルリーグ(NL)に移籍。これにより、MLB史上唯一、両リーグを経験した球団になりました。
🧤 名ロゴ「ミットロゴ」の秘密
1978年に登場した“ミットロゴ”は、一見すると単なるグローブの形ですが、よく見ると「m」と「b」が巧みに組み合わされています。デザインしたのは当時大学生だったトッド・ラドム氏。ファンの間では「史上最も巧妙なロゴのひとつ」と称されています。
🧔 有名OBたち
- ロビン・ヨーント:通算3,142安打を誇る球団のレジェンド。生涯をブルワーズ一筋で過ごしたフランチャイズ・プレイヤー。
- ポール・モリター:俊足巧打の名三塁手。後にブルワーズの監督も務めました。
- セシル・クーパー:1980年代の看板打者で、ファンからは“ミスター・ブルワーズ”と呼ばれました。
🍺 ファンイベント「ミラー・パークのソーセージレース」
本拠地(現アメリカン・ファミリー・フィールド)では、毎試合5回裏終了後に行われる「ソーセージレース」が名物。ブラートヴルスト、ポーリッシュ、イタリアン、ホットドッグ、チョリソの5種類の着ぐるみが球場を駆け抜け、子どもから大人まで大歓声を上げます。
🧢 チームカラーの変遷
クラシックな青×金の組み合わせは、ミルウォーキーの街の象徴。1980年代の鮮やかなスカイブルーから、2000年代のネイビーゴールド、そして2020年のリブランディングで再び**“原点回帰”のブルー&ゴールド**が採用されました。
🧮 球団史に残る名勝負
1982年、アメリカンリーグ時代にワールドシリーズ進出を果たしたブルワーズ。対戦相手はカージナルス。シリーズは最終第7戦までもつれこみ、惜しくも敗れたものの、この年の戦いは「ハーベスト・イヤー(収穫の年)」としてファンの記憶に深く刻まれています。
🧊 スタジアム屋根のギミック
本拠地アメリカン・ファミリー・フィールドには可動式の屋根があり、雨天でも試合が開催可能。約10分で完全開閉できる構造は、アメリカでも珍しいタイプです。
🐄 マスコット「バーニー・ブルワー」
ブルワーズのマスコットは陽気なビール職人「バーニー・ブルワー」。ホームランが出るたびに、彼が巨大ビールスライダーを滑り降りてファンに手を振るのが名物シーン。球場の名物アトラクションになっています。
ブルワーズは、単に野球をするだけでなく、街の文化と誇りを体現するチーム。これらのトリビアを知ることで、次に試合を観るときにより深くチームを楽しめるはずです。