グリーンツーリズムとは、農村、山村、漁村などの自然と深く関わる地域を訪れ、その土地の暮らしや仕事、食文化、自然環境に触れながら過ごす旅行のことです。単に自然の中で遊ぶ観光ではなく、地域の人々と交流し、農林水産業や伝統文化、里山や里海の保全について体験を通じて学ぶ点に特徴があります。
たとえば、農家に泊まって畑仕事を手伝う、田植えや稲刈りを体験する、漁村で海の仕事を見学する、里山で森林整備に参加する、地域の食材を使って郷土料理を作るといった活動がグリーンツーリズムに含まれます。
グリーンツーリズムは、「観光」と「学び」と「地域交流」が重なり合った旅の形です。都会では見えにくい食べ物の生産現場や、自然と人の暮らしのつながりを、実際に手を動かしながら理解できることが大きな魅力です。
グリーンツーリズムと似た言葉に、エコツーリズムや農泊、アグリツーリズモなどがあります。これらは重なる部分も多いですが、少しずつ意味が異なります。
エコツーリズムは、自然環境の保護や自然観察に重点を置いた観光です。森林、湿原、海、山、野生生物などを対象に、環境への負荷を抑えながら自然を学ぶ旅といえます。
農泊は、農山漁村に滞在しながら、地域の暮らしや農林水産業を体験する旅行です。農家民泊や古民家宿泊、農作業体験などが中心になります。
一方、グリーンツーリズムは、農業体験だけでなく、林業、漁業、伝統工芸、食文化、景観保全、環境学習、地域交流などを幅広く含む考え方です。そのため、「地域の暮らしを丸ごと体験する観光」と考えると分かりやすいでしょう。
グリーンツーリズムには、さまざまな形があります。代表的な例を整理すると、以下のようになります。
| 種類 | 具体例 | 学べること |
|---|---|---|
| 農業体験 | 田植え、稲刈り、果物収穫、野菜収穫 | 食と農業、季節の仕事、農作物ができるまでの流れ |
| 農家民泊 | 農家に泊まる、郷土料理を作る、農作業を手伝う | 地域の暮らし、家仕事、食文化、農村の日常 |
| 里山保全 | 棚田保全、草刈り、間伐、外来種除去 | 自然保護、防災、生物多様性、景観維持 |
| 林業体験 | 間伐、枝払い、シイタケ原木づくり、薪割り | 森の手入れ、木材利用、水源保全、防災 |
| 漁業体験 | 定置網見学、海藻収穫、漁船同乗、魚の選別 | 海の資源管理、里海の文化、漁業の仕事 |
| 食文化体験 | 味噌づくり、醤油づくり、漬物づくり、郷土料理 | 発酵、保存食、地域の食材、食の知恵 |
| 伝統工芸体験 | 藍染、和紙、竹細工、木工、陶芸 | 地場産業、職人技、地域資源の活用 |
| 環境学習型体験 | 河川清掃、海岸林整備、ゼロ・ウェイスト体験 | 環境保全、循環型社会、地域課題への理解 |
グリーンツーリズムには、旅行者、地域、環境のそれぞれにとって大きな価値があります。
旅行者にとっては、自然の中で心身をリフレッシュできるだけでなく、普段の生活では経験しにくい「手触りのある学び」を得られます。食べ物がどのように作られているのか、森や水田がなぜ大切なのか、地域の文化がどのように受け継がれているのかを、体験を通じて理解できます。
地域にとっては、農林水産業の副収入や交流人口の増加につながります。農作物や加工品の販売、宿泊、ガイド、体験プログラムなどを通じて、地域経済を支える力にもなります。また、地域の人々が自分たちの暮らしや文化の価値を再認識するきっかけにもなります。
環境にとっては、里山、棚田、水辺、海岸林などの保全活動が、観光や体験を通じて支えられるという利点があります。単なる消費型の観光ではなく、地域の自然や文化を守りながら楽しむ観光として、持続可能な旅の形といえるでしょう。
ここからは、グリーンツーリズムの代表的な例を種類別に紹介します。農業、林業、漁業、食文化、伝統工芸、環境保全など、さまざまな分野に広がっていることが分かります。
農家民泊は、グリーンツーリズムを代表する体験の一つです。農家の家や農村地域の宿に泊まり、畑仕事、収穫、郷土料理づくり、保存食づくりなどを体験します。
ホテルや旅館に泊まる一般的な旅行とは異なり、農家民泊ではその土地の暮らしの時間に触れられることが魅力です。朝早く起きて畑に出る、採れたての野菜を使って食事を作る、地域の人と会話をしながら食卓を囲むといった体験は、観光施設だけでは味わえないものです。
主な時期は通年ですが、農作業が多い春から秋にかけては、より多くの体験が用意されていることがあります。田植え、草取り、野菜の収穫、味噌や梅干しなどの保存食づくり、薪割りなど、地域や季節によって内容はさまざまです。
注意点としては、農家の家は宿泊施設であると同時に生活の場でもあるという点です。就寝時間、入浴時間、禁煙、食事の作法など、家庭ごとのルールを尊重する必要があります。また、農作業をする場合は、汚れてもよい服、長靴、手袋などを準備しておくと安心です。

田植えや稲刈り体験は、日本の農村文化を理解するうえで非常に分かりやすいグリーンツーリズムの例です。田んぼに入り、苗を植えたり、実った稲を刈り取ったりすることで、米がどのように作られているのかを体感できます。
田植えは一般的に5月から6月ごろ、稲刈りは9月から10月ごろに行われます。ただし、地域や品種によって時期は異なります。田植え体験では、泥の感触や水田の生き物を観察できることもあり、子どもの自然学習にも向いています。
稲刈り体験では、鎌を使って稲を刈る、刈った稲を束ねる、はざ掛けをする、籾摺りや精米について学ぶなど、米が食卓に届くまでの流れを理解できます。水田は単に米を作る場所ではなく、水を蓄え、生き物のすみかとなり、地域の景観を守る役割も持っています。
注意点として、田んぼの中には小石や切り株などがある場合があります。裸足で入る体験もありますが、切り傷を防ぐために、現地の指示に従うことが大切です。体験後に足を洗える場所や着替えの有無も事前に確認しておくと安心です。
棚田保全ボランティアツーリズムは、棚田の草刈り、石積みの補修、水路の管理、外来種除去などを体験しながら、地域の景観保全に関わる活動です。
棚田は美しい風景として知られていますが、その維持には多くの人手が必要です。平地の田んぼに比べて機械が入りにくく、草刈りや水の管理にも手間がかかります。そのため、過疎化や高齢化が進む地域では、棚田を維持すること自体が大きな課題になっています。
旅行者が棚田保全に参加することで、単に風景を眺めるだけでなく、その風景を守る仕事の一部を体験できます。作業後に地元の食材を使った昼食を食べたり、地域の人から棚田の歴史や水利の仕組みを聞いたりする時間も、貴重な学びになります。
棚田は斜面にあるため、滑りにくい長靴や作業しやすい服装が必要です。場所によってはヘルメットや軍手が必要な場合もあります。見た目以上に体力を使うため、無理のない範囲で参加することが大切です。

果樹園での収穫体験も、グリーンツーリズムの身近な例です。さくらんぼ、ぶどう、りんご、みかん、梨、桃など、地域ごとの果物を収穫しながら、果樹栽培の仕事を学ぶことができます。
果物狩りは観光としても人気がありますが、グリーンツーリズムとして考える場合は、単に食べるだけでなく、栽培や流通の背景を学ぶことが重要です。剪定、袋掛け、摘果、収穫、選果、出荷準備などを知ることで、果物の品質や価格がどのように決まるのかが見えてきます。
たとえば、さくらんぼは6月ごろ、ぶどうは8月から10月ごろ、りんごは9月から11月ごろが主な時期です。果物の種類によって適した季節が大きく異なるため、事前に収穫時期を確認する必要があります。
注意点として、果樹園では脚立を使う場合があります。また、夏場はハチや熱中症にも注意が必要です。帽子、水分、虫よけ、動きやすい靴を準備し、農園のルールに従って参加することが大切です。

味噌、醤油、漬物、甘酒、麹などの発酵食品づくりを体験するワークショップも、グリーンツーリズムの一つです。地域の食文化に触れながら、微生物、温度、湿度、時間が食べ物の味を作る仕組みを学べます。
発酵文化は、日本各地の気候や暮らしと深く結びついています。寒い地域では保存食が発達し、米どころでは麹文化が広がり、海沿いの地域では魚を使った発酵食品が作られてきました。こうした背景を知ることで、食べ物が単なる商品ではなく、地域の歴史や知恵の結晶であることが分かります。
味噌づくりでは、大豆をつぶし、麹と塩を混ぜ、熟成させる工程を体験できます。漬物づくりでは、野菜の水分、塩分、発酵の関係を学ぶことができます。完成したものを持ち帰り、家庭で熟成を見守る体験も魅力です。
食品を扱うため、手洗い、消毒、髪を束ねる、清潔な服装をするなどの衛生管理が重要です。大豆、小麦、乳製品などのアレルギーがある場合は、事前に確認しておく必要があります。

林業体験では、間伐、枝払い、薪割り、シイタケ原木づくり、森の観察などを通じて、森林の役割を学ぶことができます。森は木材を生み出すだけでなく、水を蓄え、土砂災害を防ぎ、生き物のすみかとなる重要な場所です。
人の手が入らなくなった人工林では、木が密集しすぎて地面に光が届かず、下草が育ちにくくなることがあります。その結果、土が流れやすくなったり、生物多様性が低下したりすることがあります。間伐は、森を健康に保つための大切な作業です。
林業体験では、実際に木を切る作業そのものよりも、森の状態を観察したり、切った木の利用方法を学んだりすることが中心になる場合が多いです。シイタケの原木に菌を打ち込む駒打ち体験や、薪づくりなどは、初心者でも参加しやすい内容です。
安全面には十分な配慮が必要です。チェーンソーを使う作業は有資格者や経験者が行い、参加者は手鋸や軽作業を担当することが一般的です。ヘルメット、手袋、長袖、長ズボン、滑りにくい靴を着用し、現地スタッフの指示に従うことが大切です。
炭焼きや木酢液づくりは、里山資源を活用する伝統的な体験です。木を炭にするには、窯の温度や空気の量を調整する必要があり、昔から受け継がれてきた知恵と技術が詰まっています。
炭は、燃料として使われるだけでなく、土壌改良や消臭、湿度調整などにも利用されてきました。木酢液は、炭を焼く過程で出る煙を冷やして得られる液体で、農業や生活の中で活用されることがあります。
この体験を通じて、森の手入れで出た木材を無駄にせず、暮らしに役立てる循環型の考え方を学ぶことができます。大量生産・大量消費とは異なる、地域資源を大切に使う暮らしの知恵に触れられる点が魅力です。
火や高温の道具を扱うため、安全管理は欠かせません。防炎性のある服装、軍手や防炎手袋、長袖・長ズボンなどが必要です。子どもが参加する場合は、火元に近づきすぎないよう大人の見守りが必要です。

養蜂体験では、巣箱の観察、採蜜、蜜蝋キャンドルづくり、蜜源植物の観察などを通じて、ミツバチと自然環境のつながりを学べます。
ミツバチは、はちみつを作るだけでなく、植物の受粉を助ける重要な存在です。果樹や野菜の栽培にも関わっており、農業や生態系にとって欠かせない役割を持っています。そのため、養蜂体験は、食、農業、生物多様性を結びつけて考えるきっかけになります。
また、地域によっては、在来植物を増やし、蜜源となる花を守る活動と組み合わせて行われることもあります。花と虫と人の関係を学ぶことで、自然環境を守ることが暮らしや食に直結していることが分かります。
注意点として、ハチに刺されるリスクがあります。アレルギーがある人は必ず事前に申告し、参加の可否を確認する必要があります。体験時には、防護服、手袋、面布などを着用し、香水や強い香りの整髪料は避けた方が安心です。
漁業体験では、定置網の見学、小型漁船での操業同乗、海藻収穫、魚の選別、加工場の見学などを通じて、海の仕事を学ぶことができます。
漁業は、天候や海の状態に大きく左右される仕事です。魚がどのように獲られ、港に水揚げされ、選別され、加工され、販売されるのかを知ることで、普段食べている魚の背景が見えてきます。
また、漁業体験では、海の資源管理について学ぶこともできます。魚のサイズ制限、禁漁期間、休漁日、漁獲量の管理などは、海の恵みを将来に残すための大切な仕組みです。単に魚を獲るだけでなく、資源を守りながら利用する考え方を理解できます。
海での活動は安全が最優先です。救命胴衣の着用、悪天候時の中止、船酔い対策、濡れてもよい服装などを事前に確認する必要があります。子どもが参加する場合は、船上や港での移動に特に注意が必要です。

ジオパークや里山を自転車で巡るサイクリングも、グリーンツーリズムの魅力的な例です。近年はE-Bikeを活用することで、坂道の多い地域でも初心者や高齢者が参加しやすくなっています。
サイクリングでは、田園風景、集落、用水路、神社、古道、石垣、段丘、扇状地などを巡りながら、地域の地形や歴史を学ぶことができます。車で通り過ぎるだけでは気づきにくい風景の細部を、自転車の速度でゆっくり観察できる点が魅力です。
ガイド付きのツアーでは、地形と農業の関係、集落の成り立ち、水路の歴史、古い街道の役割などを解説してもらえることがあります。地域全体が「移動する野外博物館」のように感じられる体験です。
注意点として、交通ルールの確認、ヘルメットの着用、バッテリー残量の確認、天候の変化への備えが必要です。山間部では日が暮れるのが早く、気温差も大きいため、無理のないコースを選ぶことが大切です。
野外調理とゼロ・ウェイストクッキングは、地元の食材を使い、食べ残しや廃棄をできるだけ減らすことを学ぶ体験です。畑で採れた野菜を使い、皮や葉、出汁殻なども工夫して料理に活用します。
この体験では、食材を無駄なく使う方法、適切な分量を考えること、コンポストで生ごみを堆肥に戻すことなどを学べます。単なる料理体験ではなく、食と環境の関係を考えるミニ実験のような内容です。
地域の食材を使うことで、地産地消の意味も理解しやすくなります。遠くから運ばれてきた食材ではなく、その土地で採れたものを食べることで、輸送にかかるエネルギーや地域経済への貢献について考えるきっかけになります。
食品を扱うため、手洗い、低温管理、アレルギー確認などの衛生管理が重要です。野外では風やほこり、虫などもあるため、調理場所の清潔さや食材の保管方法にも注意が必要です。
里海や里川の再生活動も、グリーンツーリズムに含まれる重要な体験です。河川清掃、外来種除去、魚道の見学、ウナギや魚の遡上支援、海岸のごみ拾いなどを通じて、水辺の環境を学びます。
川や海は、単独で存在しているわけではありません。上流の森、農地、集落、川、河口、海はつながっています。上流で森が荒れると、土砂やごみが川に流れ、下流や海にも影響します。里海・里川の体験では、このような「流域」の考え方を学べます。
外来魚の捕獲や記録、河川敷のごみ分別、海岸漂着物の調査などは、環境問題を身近に感じるきっかけになります。自分たちの生活から出たごみが、川や海にどのように影響するのかを考える機会にもなります。
水辺の活動では、ライフジャケットや長靴の着用が重要です。増水時や悪天候時は中止する判断も必要です。特に子どもが参加する場合は、浅い場所でも油断せず、安全管理を徹底する必要があります。
在来野菜や固定種の種採り講座は、地域の食文化と生物多様性を守る体験です。地域で昔から栽培されてきた野菜の種を採り、乾燥させ、保管し、次の季節につなげていく作業を学びます。
在来野菜には、その土地の気候や土壌に合った特徴があります。形が不ぞろいだったり、流通量が少なかったりすることもありますが、地域の料理や文化と深く結びついている場合が多いです。
種採りを体験すると、野菜は毎年新しく買うだけのものではなく、人の手によって受け継がれてきた遺伝資源であることが分かります。また、交雑を防ぐ工夫、乾燥や湿気対策、ラベル管理など、種を守るための細かな知識も学べます。
注意点として、採った種は湿気に弱いため、乾燥と保管が重要です。また、品種によっては種苗法や知的財産の考え方が関係する場合もあります。講座では、そうした基本的なルールもあわせて学ぶと理解が深まります。

藍染、和紙、竹細工、木工、陶芸などの伝統工芸体験も、グリーンツーリズムの一つです。工芸品は、地域の自然素材、職人の技、暮らしの道具、歴史が結びついて生まれてきました。
藍染では、藍の栽培や発酵、染料づくりについて学べます。和紙づくりでは、楮などの植物を原料にし、蒸す、皮をはぐ、繊維をほぐす、紙を漉くといった工程を体験できます。竹細工では、竹の伐採、油抜き、割り、編みの技術に触れられます。
伝統工芸体験では、完成品を作る楽しさだけでなく、素材がどこから来るのか、なぜその地域でその工芸が発達したのか、職人の仕事がどのように成り立っているのかを学ぶことが大切です。地場産業の価格形成や、手仕事の価値を理解する機会にもなります。
刃物、熱湯、染料などを扱う場合があるため、安全面に注意が必要です。染料が服に付くこともあるため、汚れてもよい服装で参加すると安心です。

山小屋や高原牧場に滞在し、牛や羊の世話、搾乳、チーズづくり、草地管理などを体験するプログラムもあります。放牧地や牧草地の風景は、自然そのものに見えることがありますが、実際には人の手によって維持されている場合が多いです。
牧場体験では、動物に餌を与える、搾乳を見学する、乳製品づくりを体験する、堆肥化について学ぶなど、食と畜産のつながりを理解できます。チーズづくりでは、乳酸発酵や温度管理についても学べるため、理科的な学習にもつながります。
高原の放牧期は、一般的に5月から10月ごろです。ただし、地域や標高によって気候が異なるため、体験できる内容は季節によって変わります。
動物アレルギーがある場合は、事前の確認が必要です。また、牧場では衛生管理が重要なため、長靴の消毒や手洗いなど、施設のルールに従う必要があります。
海岸林の植栽、下草刈り、漂着ごみの回収、海浜植物の観察などを、防災や減災の学びと組み合わせた体験もあります。
海岸林は、強風や飛砂を防ぎ、地域の暮らしを守る役割を持っています。また、場所によっては津波や高潮の記憶を伝える学習と結びついていることもあります。単なる自然体験ではなく、地域の防災文化を学ぶ機会になる点が特徴です。
クロマツの植栽、砂防の仕組み、海浜植物の観察、津波伝承の聞き取りなどを通じて、自然と人の安全がどのように関係しているかを理解できます。
海岸では、夏の熱中症、強い日差し、海風、砂の飛散に注意が必要です。帽子、水分、防寒具、砂が入りにくい靴などを準備すると安心です。

地域市場や道の駅を訪れ、生産者と会話しながら地元の農産物や加工品を購入することも、広い意味でグリーンツーリズムにつながります。
特に、規格外野菜や地元でしか流通しにくい食材を購入することは、フードロス削減や地域経済の応援になります。形が少し不ぞろいでも味に問題のない野菜や果物を選ぶことで、生産者の収入を支え、廃棄を減らすことができます。
また、道の駅では、その地域の旬の食材、加工品、郷土料理、工芸品などを知ることができます。観光客が地元の商品を選ぶことは、地域内でお金が循環するきっかけになります。
大量に購入する場合は、保存方法も考える必要があります。乾燥、冷凍、漬物、ジャム、加工など、無駄なく食べきる工夫を学ぶことも、グリーンツーリズムの一部といえるでしょう。
海外にも、グリーンツーリズムに近い考え方があります。特にイタリアのアグリツーリズモは、農家に滞在しながら地域の食や農業を体験する旅行として知られています。
オリーブの収穫、ワイン用ぶどうの栽培、チーズづくり、ファーム・トゥ・テーブルの食事などを通じて、農業と観光が結びついた地域づくりを学べます。ヨーロッパでは、農村の景観や食文化を観光資源として活かす仕組みが発達している地域もあります。
海外の事例を知ることで、日本の農山漁村にも応用できるヒントが見えてきます。たとえば、農家宿泊、地域食材を使った食事、ガイド付きの農村散策、加工品販売などは、日本のグリーンツーリズムにも通じる考え方です。
海外で参加する場合は、言語、保険、衛生基準、農薬基準、交通手段などを事前に確認する必要があります。
グリーンツーリズムは、子ども連れや初心者にも向いています。ただし、年齢や体力に合った体験を選ぶことが大切です。
未就学児や小学校低学年の場合は、半日から1日で完結する短時間のプログラムが参加しやすいでしょう。移動時間もできれば1時間以内にすると、子どもが疲れにくくなります。田植え、野菜収穫、果物狩り、牧場での餌やり、簡単な料理体験などは、比較的参加しやすい例です。
小学生以上であれば、稲刈り、里山散策、川の生き物観察、和紙づくり、藍染体験、ゼロ・ウェイスト体験なども学びの多い内容になります。夏休みの自由研究や、学校の探究学習にもつなげやすいでしょう。
子連れで参加する場合は、多目的トイレ、休憩所、雨天時の代替プログラム、着替え場所、救護体制などを事前に確認しておくと安心です。川、海、牧場、山の活動では、ライフジャケット、ヘルメット、長靴などの安全装備が必要になる場合があります。
持ち物としては、着替え、タオル、ウェットティッシュ、帽子、飲み物、虫よけ、常備薬、簡易カッパなどがあると便利です。夏は熱中症対策、秋は防寒と日暮れの早さにも注意が必要です。
子どもと一緒に楽しみやすい場所としては、広い花畑、牧場、農業公園、体験型施設などがあります。
北海道・美瑛町の「四季彩の丘」では、花畑の景観を楽しみながら、トラクターバスで園内を周遊できます。小さな子どもでも参加しやすい観光農園型の体験です。
北海道・中富良野の「ファーム富田」では、広大な花畑や香りに関する体験、ショップなどがあり、自然や植物に親しむきっかけになります。
福岡市の「ABURAYAMA FUKUOKA」は、宿泊、農体験、牧場体験、遊具、自然体験が一体になった大型施設で、都市近郊型のグリーンツーリズムの例として分かりやすい施設です。
ここからは、日本各地で体験できるグリーンツーリズムの具体例を地域別に紹介します。実施内容や時期は変更されることがあるため、参加前には必ず公式サイトや窓口で最新情報を確認することが大切です。
安平町では、一般社団法人あびら観光協会が「あびらベジナビ」としてグリーンツーリズムに関する情報を発信しています。ハーベストツアー、枝豆収穫、田園景観ガイド、農家交流など、地域の農業に触れられる体験があります。
都市部から比較的アクセスしやすく、北海道らしい広い農地や田園風景を楽しめる点が魅力です。体験は季節によって内容が変わるため、収穫時期に合わせて訪れると学びが深まります。
URL:https://www.abikan.jp/green-tourism/
八雲町では、農作業、漁業体験、里山散策、地域行事への参加など、農山漁村の暮らしに触れる体験が行われています。北海道の中でも、農業と漁業の両方に関わる地域の特色を学べる点が特徴です。
時期は通年ですが、体験内容は季節に連動します。農業体験と漁業体験の両方に関心がある人に向いています。
北海道内の農泊地域を探す場合は、北海道庁や農林水産省のまとめページも参考になります。地域ごとの農泊情報を確認し、目的や季節に合った体験を選ぶことができます。
北海道庁「北海道の農泊地域一覧」:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/ski/gt/hokkaidou_nohaku.html
農林水産省「北海道の農泊地域」:https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/hokkaido.html
岩手県遠野市は、農家民泊や里山体験で知られる地域です。遠野旅の産地直売所や、認定NPO法人 遠野・山・里・暮らしネットワークなどが窓口となり、農家民泊、田植え、稲刈り、里山サイクリング、郷土芸能の練習見学などを案内しています。
遠野は民話の里としても知られており、農村の暮らし、自然、伝承文化をまとめて体験しやすい地域です。単なる農作業体験だけでなく、土地に伝わる物語や地域文化に触れられる点が魅力です。
URL:https://tono-yamasatonet.com/tabisite/ https://tonojikan.jp/stay/noka-minpaku/
千葉県鴨川市の大山千枚田は、棚田保全の代表的な事例として知られています。大山千枚田保存会が窓口となり、棚田オーナー制度、田植え、稲刈り、保全活動、里山歩きなどが行われています。
東京圏から比較的アクセスしやすい場所にありながら、昔ながらの棚田景観を体験できる点が魅力です。棚田は美しい観光資源であると同時に、地域の人々が守り続けてきた文化的景観でもあります。
富山県南砺市の五箇山では、合掌造りの民宿に泊まりながら、郷土食や手仕事に触れる体験ができます。五箇山総合案内所や、たいらマウンテンスクールなどが情報提供の窓口になります。
そば打ち、豆腐づくり、餅つきなどの体験を通じて、山村の食文化や暮らしを学べます。合掌造りの建物は、豪雪地帯の暮らしに合わせて生まれた建築であり、住まいそのものが地域の知恵を伝えています。
URL:https://gokayama-info.jp/ / https://gokayama-info.jp/archives/1789
福井県越前市の越前和紙の里では、紙すき体験を通じて伝統工芸を学べます。パピルス館では比較的短時間で参加できる紙すき体験があり、卯立の工芸館ではより本格的な技術に触れられるプログラムもあります。
和紙づくりは、水、植物繊維、手仕事が結びついた伝統産業です。地域の自然資源と職人技がどのように結びついているかを理解できる点で、グリーンツーリズムとの相性が高い体験です。
URL:https://www.echizenwashi.jp/papyrus-house/ / https://www.echizenwashi.jp/udatsu-paper-and-craft-museum/
岐阜県飛騨市では、SATOYAMA EXPERIENCEが里山サイクリングや季節の暮らし体験、地元食や手仕事に触れるガイドツアーなどを実施しています。
飛騨の古い町並み、田園風景、山間の集落を自転車で巡ることで、地域の暮らしや景観をゆっくり観察できます。ガイド付きであれば、ただ風景を見るだけでなく、その背景にある農業、水路、建築、歴史についても理解が深まります。
URL:https://satoyama-experience.com/jp/
京都府南丹市美山町は、かやぶきの里で知られる地域です。農家民宿、農作業体験、景観保全を学ぶ研修プログラムなどが行われています。
美山町の魅力は、単に古い建物が残っていることだけではありません。かやぶき屋根の維持、集落景観の保全、農村の暮らし、地域の食文化が一体となって残されている点にあります。農家民宿に泊まることで、観光地としての美山だけでなく、生活の場としての美山を感じることができます。
URL:https://miyamanavi.com/ / https://miyama-experience.com/
三重県鳥羽市や志摩市では、海女小屋体験を通じて、海女文化や里海の暮らしを学べます。海女小屋はちまんかまど、海女小屋体験施設さとうみ庵などが代表的な施設です。
現役海女の話を聞きながら、囲炉裏で海産物を味わったり、海女漁の歴史や道具について学んだりできます。海女文化は、海の資源を利用しながら守ってきた地域文化でもあります。
URL:https://amakoya.com/ / https://satoumian.com/
岡山県真庭市の蒜山地域では、酪農や農業に関する体験ができます。真庭観光局や蒜山酪農農協のジャージーランドなどが情報の窓口になります。
牧場見学、餌やり、ジャージー乳製品づくりなどを通じて、酪農と地域の食文化を学べます。蒜山は高原地域であり、草地、放牧、乳製品づくりのつながりが分かりやすい場所です。
URL:https://www.maniwa.or.jp/ / https://jerseyland.hiruraku.com/
島根県の海士町では、里海体験やエコツアーを通じて、離島の自然と暮らしを学べます。隠岐の島旅、海士町観光協会、NPO隠岐しぜんむらなどが体験情報を提供しています。
伝統舟「かんこ舟」、RIBボート、シュノーケリング、自然観察ガイド、郷土料理など、海と深く関わる体験が中心です。島の暮らし、海の資源、自然環境の保全を一体的に学べる点が魅力です。
URL:https://www.e-oki.net/experience/area/ama/ / https://oki-ama.org/
徳島県上勝町は、ゼロ・ウェイストの取り組みで知られる町です。上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」では、ごみの45分別の現地見学、施設視察プログラム「STUDY WHY」、併設ホテルでの分別体験などが行われています。
この体験は、農業や林業とは少し異なるタイプのグリーンツーリズムですが、地域の暮らしと環境問題を学ぶという点で非常に重要です。ごみをどう減らすか、資源をどう循環させるかを、実際の地域の取り組みから学べます。
URL:https://why-kamikatsu.jp/ / https://www.tourism-kamikatsu.jp/
大分県宇佐市安心院は、農泊の先進地として知られています。農家民泊、郷土料理体験、集落散策などを通じて、農村の暮らしを体験できます。
安心院のファームステイは、農家の人々との交流を重視している点が特徴です。地域の家庭に滞在し、食事や会話を通じて、その土地の暮らしに触れることができます。
URL:https://www.ajimu-ngt.jp/en/
熊本県阿蘇地域では、農家民泊、草原体験、農作業体験、星空観察などを組み合わせたグリーンツーリズムが行われています。阿蘇地域農泊推進協議会などが窓口になります。
阿蘇の草原は、自然に見える景観でありながら、野焼きや放牧など人の手によって維持されてきた文化的景観でもあります。農泊や草原体験を通じて、人と自然が関わりながら風景を守ってきたことを学べます。
URL:https://www.asogreenstock.com/activities/greentourism/ / 参考:熊本県観光サイト https://kumamoto.guide/
宮崎県高千穂郷では、一般社団法人ツーリズム高千穂郷が、農村民泊や地域体験を案内しています。収穫体験、郷土料理づくり、神楽、竹細工など、地域文化に深く触れられる内容が特徴です。
高千穂は神話や神楽の文化でも知られる地域です。農村民泊と伝統文化体験を組み合わせることで、自然、食、信仰、芸能が結びついた地域の姿を学べます。
URL:https://takachiho-go.jp/nouhaku/ / https://takachiho-go.jp/taiken/
鹿児島県出水市では、いずみ民泊体験推進協議会が農泊体験を案内しています。農家民泊、みかんや椎茸などの収穫体験、郷土料理体験などがあります。
出水市は農業資源に加え、ツルの渡来地としても知られる地域です。農村の暮らしと自然環境の両方に触れられる点が魅力です。
URL:https://www.izumi-navi.jp/news/post-1936/ / 参考:鹿児島県観光連盟 Farm stay https://www.kagoshima-kankou.com/for/attractions/52254
福岡市のABURAYAMA FUKUOKAは、都市近郊型のグリーンツーリズムの例です。シェア畑、牧場体験、宿泊、アスレチックなどが一体となった複合施設で、都市部からアクセスしやすい場所で自然や農に触れられます。
農山村に遠出しなくても、身近な場所で農体験や自然体験ができる点は、現代的なグリーンツーリズムの形といえます。家族連れや初心者にも参加しやすい施設です。
URL:https://www.aburayama-fukuoka.com/ / シェア畑:https://www.aburayama-fukuoka.com/play/
グリーンツーリズムに参加する前には、いくつか確認しておきたい点があります。
まず、事前予約の有無です。農作業、伝統工芸、漁業体験、施設見学などは、定員や実施時間が決まっていることが多いため、予約が必要な場合があります。特に繁忙期や学校の長期休暇中は、早めの予約が安心です。
次に、季節性です。田植え、稲刈り、果物収穫、放牧、海のアクティビティなどは、季節や天候によって実施内容が大きく変わります。雨天時の代替プログラムがあるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
服装や装備も重要です。汚れてもよい服、長靴、帽子、軍手、雨具、虫よけ、飲み物などは、多くの体験で役立ちます。海や川、山の活動では、保険加入や安全装備の有無も確認する必要があります。
また、写真撮影やSNS投稿のルールも確認しておきたい点です。農家の家、子ども、作業場、生活空間などが写る場合は、撮影許可や位置情報の扱いに配慮する必要があります。
グリーンツーリズムをより深く楽しむためには、人気スポットを次々に回るよりも、一つの地域にじっくり滞在することが大切です。
農作業や里山保全、伝統工芸は、短時間で完全に理解できるものではありません。しかし、実際に手を動かし、地域の人の話を聞き、土地の食べ物を味わうことで、観光だけでは得られない記憶が残ります。
また、体験後に直売所や道の駅で地元の商品を購入することも、地域への応援になります。ガイドを利用する、地元の小さな店で食事をする、加工品を買うといった行動は、地域経済を支えることにつながります。
大切なのは、訪れる場所が誰かの生活の場であり、仕事の場でもあるという意識を持つことです。無断立ち入り、作物や生き物の持ち帰り、騒音、無断駐車などは避け、地域のルールを守る必要があります。
グリーンツーリズムには多くの魅力がありますが、課題もあります。
一つは、受け入れ側の負担です。農家や漁業者、職人にとって、体験プログラムの準備や安全管理、説明、片付けには時間と労力がかかります。料金が安すぎると、地域側の負担ばかりが大きくなり、継続が難しくなります。
また、人気が出すぎると、オーバーツーリズムにつながる可能性もあります。生活道路の混雑、無断駐車、騒音、写真撮影のトラブルなどが起きると、地域住民の負担になります。受け入れ人数の上限や、繁忙期の分散化が必要です。
気候変動によるリスクも無視できません。猛暑、豪雨、台風、土砂災害、海の荒れなどにより、予定していた体験が中止になる場合があります。自然を相手にする体験では、中止や変更も含めて受け止める姿勢が大切です。
さらに、アクセシビリティの課題もあります。農村や山村では、段差、砂利道、仮設トイレ、公共交通の少なさなどが参加のハードルになる場合があります。高齢者、障害のある人、小さな子ども連れでも参加しやすい工夫が求められます。
グリーンツーリズムは、学校教育や企業研修とも相性がよい体験です。
学校教育では、理科、社会、家庭科、公民、総合的な探究の時間などに結びつけることができます。田植えや稲刈りは食と農業の学習に、里山保全は生物多様性や防災の学習に、ゼロ・ウェイスト体験は環境問題や循環型社会の学習につながります。
企業研修では、里山整備、農作業、廃材のアップサイクル、地域課題のフィールドワークなどが、チームビルディングやSDGs研修として活用されることがあります。普段の職場とは異なる環境で協力して作業することで、コミュニケーションや地域課題への理解が深まります。
国際交流にも向いています。英語ガイド付きの里山ツアーや農村体験は、インバウンド観光客にとって日本の地域文化を理解する機会になります。地域の人にとっても、自分たちの暮らしや文化を外の視点から見直すきっかけになります。
グリーンツーリズムは、体験した日だけで終わるものではありません。旅のあとにも、地域との関わりを続ける方法があります。
たとえば、直売所やオンラインショップで地元の農産物や加工品を継続して購入することは、地域への支援になります。季節を変えて再訪すれば、田植えと稲刈り、春の山菜と秋の収穫など、同じ地域の違う表情を知ることができます。
体験したことを学校や職場で共有することも意味があります。写真や感想を紹介する場合は、個人情報や位置情報に配慮しながら、地域の魅力を伝えることが大切です。
また、棚田保全や里山整備、河川清掃などのボランティアに再参加することで、単なる旅行者から地域の応援者へと関係が深まっていきます。
グリーンツーリズムは、自然を楽しむだけでなく、地域の暮らし、農林水産業、食文化、伝統工芸、環境保全を体験として学べる観光の形です。
農家民泊、田植え、稲刈り、果物収穫、棚田保全、林業体験、漁業体験、発酵食品づくり、藍染や和紙などの伝統工芸、ゼロ・ウェイスト体験など、その内容は非常に幅広くあります。
旅行者にとっては、食や自然の背景を深く知る学びの機会になります。地域にとっては、交流人口の増加、農林水産業の副収入、地域文化の継承につながります。そして環境にとっては、里山、棚田、川、海、森林などを守る活動を支える力にもなります。
目的や季節、参加者の年齢に合った体験を選び、地域の暮らしに敬意を払いながら参加することで、グリーンツーリズムはより深い意味を持つ旅になります。