ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による歴史的な首脳会談が、もし実現するとすれば、その開催地は大きな国際的注目を浴びます。スイスやオーストリアといった伝統的な中立国も候補に挙がる中で、なぜハンガリー・ブダペストが有力視されるのでしょうか。本記事では「なぜハンガリーなのか?」という問いを中心に、背景、国際情勢、関係国の思惑などを整理し、他候補地との比較も踏まえて詳しく解説します。
2023年、ICCはウクライナ侵攻に関連してプーチン大統領に対する逮捕状を発付しました。そのためICC加盟国に入国すれば、逮捕のリスクを抱えることになります。実際に多くの欧州諸国はICC加盟国であるため、プーチン大統領が安心して訪問できる国は限られています。
しかし、ハンガリー議会は2025年4月にICC脱退法案を可決し、事実上ICCの管轄から外れる方向に動いています。これは欧州連合(EU)の中では異例の動きであり、国際社会からも批判を受けましたが、プーチン大統領にとっては「安全に訪問できる欧州の地」という大きな利点となります。ICCリスクがないことは、開催地選びにおける決定的な要素となっているのです。
ハンガリーのオルバン首相は、EUとNATOの加盟国でありながら、しばしば独自路線をとり、ロシア寄りの政策を打ち出してきました。エネルギー分野ではロシアからの天然ガス依存度が高く、またウクライナのEU加盟に対しても反対を表明してきました。こうした立場は、欧州内で批判を浴びる一方、プーチン政権にとっては「味方」として頼れる存在です。
さらに、オルバン首相は「ハンガリー・ファースト」の姿勢を貫き、自国利益を最優先する外交を展開しています。これが結果としてロシアとの関係強化につながり、今回の会談開催地としての現実味を高めています。
ただしゼレンスキー大統領にとっては、必ずしも望ましい場所ではありません。ウクライナとハンガリーは、ウクライナ西部に住むハンガリー系少数民族の権利問題をめぐり対立してきた歴史があるためです。にもかかわらず、もしハンガリーを受け入れるとすれば、それは「国際社会が望む対話の場を優先する」という苦渋の決断といえるでしょう。
今回の首脳会談をめぐる動きでは、米国のトランプ大統領が積極的に関与していることも重要なポイントです。ハンガリーのオルバン首相はトランプ氏と関係が深く、両者は価値観や政策姿勢において親和性があります。そのため、ハンガリーは米国からの支持を得やすく、会談実現に向けた調整もスムーズに進むと考えられます。
実際にベッセント米財務長官は「ブダペスト開催の可能性もある」と公に述べ、米大統領警護隊が現地で準備を開始したと報じられました。これは単なる候補地の一つではなく、実務的にも具体的な検討が進んでいることを示しています。
ハンガリー開催は、米国にとっても「ヨーロッパにおける交渉の舞台を提供した」という実績作りの意味を持ち、トランプ政権が国際外交の主導権を握る狙いとも合致します。
これらの候補地と比べると、ハンガリーは「プーチンが参加しやすく、米国の関与も得られる」という独自の強みを持っています。
もしブダペストで首脳会談が実現すれば、ハンガリーは「紛争解決の仲裁国」としての存在感を国際社会に強く示すことができます。EUやNATO内での立場がしばしば孤立しがちなオルバン政権にとっても、外交的評価を高める機会となるでしょう。
一方で、西側諸国の中には「ロシア寄りの開催地」という見方をする国もあり、外交的な摩擦を生む可能性も否定できません。つまり、ハンガリーにとってはリスクを伴いつつも、自国の国際的影響力を高める大きなチャンスでもあるのです。
ロシアとウクライナ首脳会談の開催地としてハンガリーが注目される理由は、
もしブダペストで会談が実現すれば、それは単なる外交イベントにとどまらず、国際秩序に大きな影響を与える出来事となるでしょう。そして同時に、ウクライナにとっては不利な条件を承知で対話を選ぶ「苦渋の選択」となることも忘れてはなりません。