近年、テレビ、学校、企業の広告、自治体の取り組み、スーパーの商品ラベルなど、さまざまな場所で「SDGs」という言葉を目にするようになりました。カラフルな17個のアイコンとともに、「持続可能な開発目標」という説明を聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし、そこでふと疑問に思うのが、「SDGsは誰が作ったのか」という点です。国連が作ったものなのか、どこかの国が提案したものなのか、それとも特定の政治家や専門家が考えたものなのか、意外と知られていない部分もあります。
結論から言うと、SDGsは特定の一人や一つの国が作ったものではありません。SDGsは、国連を中心とした国際的な話し合いの中で、193の国連加盟国が合意して生まれた世界共通の目標です。その過程では、各国政府だけでなく、市民社会、研究者、企業、若者、国際機関など、さまざまな立場の人々の意見も取り入れられました。
つまり、SDGsは「国連が一方的に作った目標」というよりも、「国連を舞台に、世界中の国や人々が話し合いながら作った未来のための共通目標」と考えるとわかりやすいでしょう。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
「持続可能」とは、今を生きる人々だけでなく、将来の世代も安心して暮らせるように、環境、社会、経済のバランスを考えながら発展していくという意味です。たとえば、現在の便利さや豊かさのために自然を壊し続けたり、貧困や差別を放置したりすれば、未来の人々が安全に暮らせなくなる可能性があります。そのような問題を防ぎ、よりよい社会を作るために掲げられたのがSDGsです。
SDGsには、2030年までに世界が達成を目指す17の目標と169のターゲットが定められています。17の目標には、貧困、飢餓、教育、健康、ジェンダー平等、水、エネルギー、働きがい、経済成長、気候変動、海や陸の環境、平和など、世界が抱える幅広い課題が含まれています。
主な目標には、次のようなものがあります。
SDGsは、貧しい国だけのための目標ではありません。先進国も発展途上国も含めて、すべての国が取り組むべき目標として作られた点に大きな特徴があります。

SDGsを作った主体を一言で表すなら、「国連加盟国が中心となって作った」と言えます。
ただし、ここで注意したいのは、SDGsは国連職員だけが会議室で作ったものではないということです。国連は話し合いの場を用意し、各国政府が交渉し、さまざまな専門家や市民団体などの意見も取り入れながら、長い時間をかけて目標がまとめられていきました。
SDGsの正式な位置づけは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核部分です。この2030アジェンダの中に、17の目標と169のターゲットが含まれています。
したがって、「SDGsは誰が作ったのか」という問いに対する正確な答えは、次のようになります。
SDGsは、国連を中心に、193の国連加盟国が合意して作った国際目標であり、その作成過程には各国政府、市民社会、専門家、企業、若者など多くの人々が関わりました。
このように説明すると、「国連が作った」という簡単な説明よりも、SDGsの成り立ちがより正確に伝わります。

SDGsは、2015年9月にアメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれた国連サミットで採択されました。
正式には、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書の中で、SDGsが世界共通の目標として定められました。2030アジェンダという名前の通り、SDGsは2030年までの達成を目指す目標です。
採択された日は、2015年9月25日です。この国連サミットには多くの国の首脳や代表が参加し、世界全体で持続可能な社会を目指すことが確認されました。
このとき合意されたSDGsは、2016年から本格的にスタートし、2030年までの15年間を目標期間としています。
SDGsが突然生まれたわけではありません。その前には、MDGsという国際目標がありました。
MDGsとは「Millennium Development Goals」の略で、日本語では「ミレニアム開発目標」と訳されます。MDGsは2000年に国連でまとめられ、2015年までに達成を目指す8つの目標として設定されました。
MDGsでは、主に開発途上国の貧困、飢餓、教育、乳幼児死亡率、妊産婦の健康、感染症対策などが大きなテーマでした。実際に、極度の貧困の削減や初等教育の普及など、一定の成果もありました。
しかし、MDGsにはいくつかの課題もありました。たとえば、対象が主に開発途上国に向けられており、先進国自身の責任や課題が十分に扱われていなかったという点です。また、環境問題、気候変動、格差、持続可能な経済成長など、より複雑な課題に対応するには、さらに広い視点が必要になっていました。
そこで、MDGsの終了時期である2015年に向けて、次の国際目標を作る必要が出てきました。その結果として生まれたのがSDGsです。
SDGsを理解するには、前身であるMDGsとの違いを見るとわかりやすくなります。
| 項目 | MDGs | SDGs |
|---|---|---|
| 正式名称 | ミレニアム開発目標 | 持続可能な開発目標 |
| 期間 | 2000年から2015年 | 2016年から2030年 |
| 目標数 | 8目標 | 17目標 |
| 主な対象 | 主に開発途上国 | すべての国 |
| 中心テーマ | 貧困、教育、保健など | 経済、社会、環境を含む幅広い課題 |
| 関わる主体 | 政府や国際機関が中心 | 政府、企業、市民、自治体、学校など |
MDGsは、主に「途上国の課題をどう解決するか」という性格が強い目標でした。一方、SDGsは、先進国も含めたすべての国が自分ごととして取り組む目標です。
たとえば、日本のような先進国でも、食品ロス、少子高齢化、ジェンダー格差、地域格差、エネルギー問題、災害対策、働き方の問題など、SDGsと深く関係する課題があります。
この点で、SDGsは「世界のどこか遠い国の問題」ではなく、「日本を含むすべての国に関係する目標」なのです。
SDGsの作成過程で重要な役割を果たしたのが、「持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループ」です。英語では「Open Working Group」と呼ばれ、略してOWGと表記されます。
OWGは、SDGsのたたき台を作るために設けられた国連内の作業グループです。各国の代表が参加し、2013年から2014年にかけて話し合いを重ねました。
OWGの特徴は、議論が比較的開かれた形で進められたことです。政府代表だけでなく、市民社会、専門家、国際機関、企業関係者などの意見も参考にされました。これにより、SDGsは単なる政府間の合意にとどまらず、より幅広い人々の声を反映した目標として形作られていきました。
なお、OWGについては「70か国が参加した」と説明されることがありますが、実際には30議席制で、複数の国が1つの議席を共有する形が取られていました。そのため、多くの国が関わりながらも、効率的に議論を進める仕組みになっていました。
OWGは最終的に、17の目標と169のターゲットを含む提案をまとめました。この提案が、後のSDGsの基本形となりました。

SDGsを最終的に採択したのは、国連総会です。
国連総会は、国連加盟国が参加する主要な意思決定機関です。世界の国々が集まり、国際社会に関わる重要な問題について話し合います。
SDGsは、この国連総会で採択された2030アジェンダの一部です。つまり、SDGsは単なるスローガンやキャンペーンではなく、国際社会全体の合意として位置づけられた目標なのです。
もちろん、SDGsには各国を法的に罰するような強制力があるわけではありません。しかし、国連加盟国が合意した国際目標であるため、各国政府、自治体、企業、学校、市民団体などが政策や活動の指針として活用しています。
SDGsが作られた時期に国連事務総長を務めていたのは、韓国出身の潘基文氏です。潘基文氏は2007年から2016年まで国連事務総長を務めました。
潘基文氏は、気候変動、貧困、人権、持続可能な開発などを国連の重要課題として強く訴えてきた人物です。SDGsの策定過程においても、国連全体としての取り組みを後押しし、各国の合意形成を支える役割を果たしました。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、「潘基文氏がSDGsを一人で作った」というわけではないということです。SDGsは、国連加盟国の交渉と合意によって生まれた目標です。潘基文氏は、その流れを推進した当時の国連トップとして重要な役割を担った人物と考えるとよいでしょう。
SDGsの大きな特徴の一つは、作成過程で多様な立場の人々の意見が取り入れられたことです。
従来の国際目標は、政府や国際機関が中心となって作る印象が強いものでした。しかしSDGsでは、より多くの人々の声を反映させることが重視されました。
たとえば、以下のような人々や組織が議論に関わりました。
SDGsには「誰一人取り残さない」という重要な理念があります。この理念を実現するためには、政府だけで目標を決めるのではなく、社会のさまざまな立場の人々の声を反映することが必要でした。
たとえば、貧困地域に暮らす人々、障がいのある人々、女性、子ども、若者、先住民、移民、難民など、社会の中で不利な立場に置かれやすい人々の視点も重要です。SDGsは、そうした多様な声を可能な限り反映しながら作られた目標なのです。

SDGsを理解するうえで欠かせない言葉が、「誰一人取り残さない」という理念です。英語では「Leave no one behind」と表現されます。
これは、経済成長や社会の発展が一部の人だけの利益になってはいけないという考え方です。どれほど国全体が豊かになっても、その中で貧困に苦しむ人、教育を受けられない人、差別を受ける人、安全な水を使えない人、災害や紛争で生活を奪われる人が取り残されてしまえば、本当に持続可能な社会とは言えません。
SDGsでは、平均的な数字だけでなく、社会の中で見えにくい人々にも目を向けることが大切にされています。これは、従来の開発目標よりも一歩進んだ考え方です。
SDGsは国連で採択された目標ですが、国連のためだけのものではありません。SDGsは、地球に住むすべての人々のための目標です。
SDGsに関わる主体は、非常に幅広いです。
たとえば、食品ロスを減らす、電気や水を無駄にしない、リサイクルに協力する、フェアトレード商品を選ぶ、差別や偏見について考える、地域の防災活動に参加するなど、身近な行動もSDGsとつながっています。
もちろん、個人の小さな行動だけで世界の大きな問題がすぐに解決するわけではありません。しかし、政府、企業、自治体、学校、市民がそれぞれの立場で取り組むことで、社会全体の方向性を少しずつ変えていくことができます。

日本もSDGsの策定と実施に関わっている国の一つです。SDGsが採択された後、日本政府は国内での推進体制を整え、さまざまな政策や取り組みを進めてきました。
日本では、政府内にSDGs推進本部が設置され、国としてSDGsをどのように進めていくかが議論されています。また、自治体、企業、学校、市民団体なども、それぞれの分野でSDGsに関する活動を行っています。
特に日本でよく見られる取り組みには、次のようなものがあります。
日本の場合、少子高齢化、地方の人口減少、災害対策、エネルギー問題、ジェンダー格差、労働環境、食品ロスなど、SDGsと関係の深い課題が多くあります。そのため、SDGsは海外支援だけでなく、日本国内の社会課題を考えるうえでも重要な視点になっています。
日本でSDGsに関する取り組みとしてよく知られているものの一つに、「SDGs未来都市」があります。
SDGs未来都市とは、SDGsの達成に向けて優れた取り組みを進める自治体を国が選定する制度です。選ばれた自治体は、地域の課題解決とSDGsを結びつけながら、持続可能なまちづくりを進めます。
たとえば、環境に配慮した都市づくり、地域産業の活性化、再生可能エネルギーの活用、高齢者福祉、子育て支援、防災、地域交通の改善など、自治体によって取り組みの内容はさまざまです。
SDGs未来都市の数は年々増えており、2020年代半ばには累計で100を超える自治体が選ばれています。これは、SDGsが国レベルだけでなく、地域社会にも広がっていることを示しています。
近年では、多くの企業がSDGsを意識した取り組みを行うようになっています。企業にとってSDGsは、単なる社会貢献活動ではなく、事業を長く続けていくための重要な考え方になっています。
たとえば、環境に配慮した商品を作る、製造過程で出る二酸化炭素を減らす、労働環境を改善する、女性や外国人など多様な人材が働きやすい職場を作る、取引先での人権侵害を防ぐといった取り組みがあります。
一方で、注意しなければならない問題もあります。それが「SDGsウォッシュ」です。SDGsウォッシュとは、実際には十分な取り組みをしていないのに、SDGsに熱心に取り組んでいるように見せかけることです。
たとえば、環境に良い商品だと宣伝しているのに、その根拠がはっきりしない場合や、一部の取り組みだけを大きく見せて、全体としての環境負荷や人権問題を隠している場合などが考えられます。
そのため、企業のSDGs活動を見るときには、ロゴや宣伝文句だけでなく、具体的に何をしているのか、数値や実績が示されているのかを確認することが大切です。

SDGsは、学校教育の中でも扱われるようになっています。社会科、理科、家庭科、公民、総合的な学習の時間など、さまざまな教科や活動の中でSDGsに関連する内容が取り上げられています。
学校でSDGsを学ぶ意味は、単に17の目標を暗記することではありません。身の回りの問題と世界の課題がどのようにつながっているのかを考えることに意味があります。
たとえば、給食の食べ残しから食品ロスについて考えることができます。地域の川や海のごみ問題から、海洋プラスチック問題を考えることもできます。電気の使い方からエネルギー問題を考えたり、買い物からフェアトレードや労働環境について学んだりすることもできます。
このように、SDGsは遠い国の問題を学ぶだけでなく、自分たちの生活と社会の仕組みを結びつけて考えるための入り口にもなっています。
SDGsは国連で採択された国際目標ですが、各国や企業に対して直接罰則を与えるような法律ではありません。つまり、SDGsを達成できなかったからといって、国や企業がただちに罰せられるわけではありません。
しかし、だからといってSDGsが意味のない目標というわけではありません。SDGsは国際社会の共通の方向性を示すものです。多くの国や企業、自治体がSDGsを政策や経営方針に取り入れているため、社会全体に大きな影響を与えています。
また、気候変動対策、人権、労働、環境保護などの分野では、SDGsとは別に国内法や国際条約、企業のルールなどが存在します。SDGsは、それらの取り組みをつなぐ共通の枠組みとしても使われています。
SDGsには、知っておくと理解が深まる豆知識がいくつかあります。
SDGsというと17個の目標がよく知られていますが、実際にはその下に169のターゲットがあります。ターゲットとは、それぞれの目標をより具体的にしたものです。
たとえば、「貧困をなくそう」という大きな目標だけでは、何をすればよいのかが少し抽象的です。そこで、より具体的な達成内容を示すためにターゲットが設定されています。
SDGsは、開発途上国だけのための目標ではありません。日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国などの先進国も対象です。
先進国にも、貧困、格差、ジェンダー不平等、食品ロス、気候変動、働き方、エネルギー問題など、多くの課題があります。そのため、SDGsはすべての国が自国の問題として取り組む必要があります。
SDGsの根底には、「誰一人取り残さない」という考え方があります。これは、社会の中で弱い立場に置かれやすい人々にも目を向け、すべての人が尊厳を持って暮らせる社会を目指すという意味です。
SDGsは、2030年までに達成を目指す目標です。2016年から2030年までの15年間を対象期間としています。
ただし、2030年になればすべての課題が完全に終わるという意味ではありません。SDGsは、世界が持続可能な方向へ進むための重要な節目として設定された目標です。
SDGsというと、環境問題を思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、気候変動、海洋汚染、森林保護などの環境問題は重要なテーマです。
しかし、SDGsは環境だけでなく、貧困、教育、健康、平和、人権、経済、労働、まちづくりなども含んでいます。環境・社会・経済を総合的に考える点がSDGsの特徴です。
SDGsの17個のアイコンは、世界中で共通して使われています。言語が違っても、色や番号、デザインによって目標を認識しやすくするためです。
ただし、アイコンの色について「この色には必ずこの意味がある」と断定する場合には注意が必要です。公式に細かい心理的意味が説明されているわけではないため、色の印象を説明するときは、あくまで視覚的にわかりやすくするためのデザインとして理解するのがよいでしょう。
SDGsは17の目標で構成されていますが、文化、芸術、スポーツ、メディアなどをもっと明確に位置づけるべきだという議論もあります。
実際に、文化やスポーツは教育、健康、平和、地域づくり、国際交流などと深く関係しています。そのため、17の目標に直接「文化」という目標があるわけではありませんが、SDGs全体と無関係ではありません。
SDGsは国連で決められた大きな国際目標ですが、身近な生活ともつながっています。
食品ロスを減らすこと、節電すること、無駄な買い物を減らすこと、差別や偏見について考えること、地域の防災に関心を持つこと、環境に配慮した商品を選ぶことなども、SDGsと関係しています。
大切なのは、SDGsを特別なものとして遠ざけるのではなく、日常生活や地域社会の課題と結びつけて考えることです。
SDGsは世界的に広がった重要な目標ですが、使われ方には注意も必要です。
一つは、SDGsが単なる宣伝文句になってしまうことです。企業や団体がSDGsのロゴを掲げていても、実際の取り組みが伴っていなければ意味がありません。環境に良さそうに見せるだけ、人権に配慮しているように見せるだけでは、SDGsの本来の目的から外れてしまいます。
もう一つは、SDGsを「きれいごと」として終わらせてしまうことです。SDGsが扱う問題には、貧困、格差、紛争、気候変動、差別、労働問題など、簡単には解決できないものが多くあります。だからこそ、表面的な言葉だけでなく、具体的な行動や制度の改善が必要です。
SDGsを正しく理解するには、「誰が作ったのか」だけでなく、「なぜ作られたのか」「どのように使われるべきなのか」まで考えることが大切です。
SDGsは、国連を中心に作られた国際目標です。しかし、国連だけが一方的に作ったものではありません。193の国連加盟国が合意し、各国政府、市民社会、専門家、企業、若者など多くの人々の意見を反映しながら作られました。
SDGsの前にはMDGsという目標がありました。MDGsは主に開発途上国の貧困や教育、保健などに焦点を当てていましたが、SDGsでは対象がすべての国に広がり、経済、社会、環境を総合的に考える目標へと発展しました。
SDGsの中心にあるのは、「誰一人取り残さない」という理念です。これは、世界全体が発展する中で、貧困に苦しむ人、差別を受ける人、教育や医療にアクセスできない人、災害や紛争で生活を奪われる人を置き去りにしないという考え方です。
SDGsは、国連本部や国際会議だけの話ではありません。日本の政府、自治体、企業、学校、地域社会、そして一人ひとりの生活とも深く関係しています。
「SDGsは誰が作ったのか」という問いへの答えは、「国連を中心に、世界中の国々と多様な人々が協力して作った目標」です。そして、その目標は今も、世界の未来を考えるための大切な共通の地図として使われています。