近年、テレビや学校、企業、スーパーの商品ラベルなど、さまざまな場所で目にするようになった「SDGs(エスディージーズ)」。そのカラフルなアイコンと共に、「持続可能な開発目標」という言葉を耳にする機会も増えました。しかし、「そもそもSDGsって誰が作ったの?」と疑問に思ったことはありませんか?
今回は、「SDGsを誰が作ったのか」というテーマを中心に、その背景、目的、そして作成に関わった人々について、わかりやすく解説していきます。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。2015年9月に国連(United Nations)が採択し、2030年までに世界が達成すべき17の目標と169のターゲットが定められています。
主な内容は、次のような世界共通の課題に取り組むことです。
一言で言えば、「国連が中心となって世界中の国や人々と協力して作ったもの」です。特定の一国や政治家が単独で作ったものではありません。
もう少し詳しく見てみましょう。
SDGsは、国連の総会において全会一致で採択されました。つまり、世界の国々が集まる最高の意思決定機関で、193の加盟国すべてがこの目標に賛同したということです。
このように、SDGsは世界共通の目標であり、先進国も発展途上国も関係なく「全員が参加するべきもの」として作られました。
SDGsの前身には、2000年に策定された「MDGs(ミレニアム開発目標)」がありました。こちらは8つの目標が掲げられ、主に開発途上国を対象に、貧困や教育、保健などの課題解決を目指したものでした。
MDGsの期間が終了する2015年を目前に控え、世界は新たな開発目標を作る必要に迫られていました。
このとき、単に「次の目標を立てよう」というだけではなく、
という理念のもとで、新たな目標「SDGs」が生まれたのです。
SDGsは、ただ国連が一方的に決めたわけではありません。むしろ、「世界中のあらゆる立場の人たち」が意見を出し合い、合意を築きながら作られていきました。
SDGsの草案を練ったのは、「持続可能な開発目標に関する政府間オープン・ワーキング・グループ(Open Working Group: OWG)」というチームです。このグループは、国連加盟国から選ばれた70か国の代表が集まって構成されました。
このOWGは、2013年から2014年にかけて13回にわたる公開会合を実施し、各国の政府、市民団体、学者、企業関係者などの意見を取り入れながら、SDGsの草案をまとめていきました。
当時の国連事務総長である潘基文(Ban Ki-moon)氏は、SDGsの策定を強く後押ししたリーダーの一人です。彼は韓国出身で、2007年から2016年まで事務総長を務めました。
彼は、気候変動、貧困、人権などの問題に積極的に取り組む姿勢を見せ、SDGsの制定において重要な調整役となりました。
SDGsの特徴の一つは、「多様な立場の声を反映していること」です。OWGの会合や国連主催のフォーラムでは、以下のような人々の意見も集められました。
このように、政府だけでなく、市民の声もSDGsに取り入れられていることがわかります。
SDGsは、2015年9月25日〜27日に**ニューヨークの国連本部で開催された「国連サミット」において、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」**の一部として採択されました。
このとき、193か国すべての国連加盟国が賛成し、全会一致で合意されたのです。
SDGsは国連が作ったものですが、それは「国連のため」ではありません。地球に住むすべての人々のために作られた目標です。
そのため、SDGsは次のような全員に関係しています。
私たちが普段の生活の中でできる小さな行動──たとえば「マイバッグを持ち歩く」「フードロスを減らす」「公正な労働で作られた商品を選ぶ」なども、SDGs達成への貢献につながっています。
日本も、SDGsの策定に積極的に関与し、その後の実施にも取り組んでいます。
内閣府には「SDGs推進本部」が設置され、企業や自治体、学校などと連携して、さまざまな政策や教育活動が行われています。最近では、小学校や中学校でもSDGsについて学ぶ授業が増えており、子どもたちが未来を担う主体として育っていく環境が整いつつあります。
SDGsを作ったのは、国連という国際機関ですが、その背後には世界中の国々、市民、若者、企業、学者たちの意見と願いが込められています。まさに、「世界のみんなで作った未来の地図」と言ってもよいでしょう。
この地図が示しているのは、「誰も取り残さない」世界の姿。貧困や差別、環境破壊のない、よりよい社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが関われる余地があります。
2015年に国連総会で採択されたとき、193か国すべてが賛成しました。つまり、地球上のすべての国が「協力して持続可能な未来を目指そう」と誓った歴史的な瞬間なのです。
SDGsはできるだけ多くの人に理解してもらうために、視覚障がい者向けの点字資料や、子どもでも理解できるようなマンガ・絵本版も制作されています。
SDGsは「国際的な目標」ではありますが、達成を義務づける法律があるわけではありません。それでも、企業や自治体、学校などが自主的に取り組むのは、それが「未来の生き残り戦略」になるからです。
SDGsのカラフルな17色のアイコンには色の意味や心理的効果が考慮されています。たとえば、「貧困をなくそう(目標1)」は赤色で、緊急性と命を象徴しています。
SDGs策定時には、「文化」「スポーツ」「メディア」などを含めた第18の目標案がいくつか出されましたが、最終的には「17個」に統一されました。
SDGsのロゴ(カラーホイールや目標アイコン)は国連の所有物で、勝手に改変・使用してはいけません。企業が使う際にはガイドラインに従う必要があります。
日本では、SDGsの達成に積極的な自治体を国が「SDGs未来都市」として認定しています。2024年時点で100以上の都市が選ばれています(例:横浜市、札幌市、北九州市など)。
2020年度以降の中学・高校の教科書では、社会・理科・家庭科・公民など複数の教科でSDGsが登場します。すでにSDGsは「常識」としての知識になりつつあるのです。