広告やデザインに関わる方であれば、一度は耳にしたことがあるであろう「トンマナ」という言葉。しかし、はじめてこの用語に触れる方や、なんとなく使っているけれど具体的な意味や活用法をよく知らないという方も少なくありません。
本記事では、トンマナ(トーン&マナー)とは何かという基本的な意味から、実際のビジネスやデザインにおける重要性、具体的な設定方法や事例に至るまで、詳しく丁寧に解説します。また、実際の制作現場での失敗例や成功事例も取り上げながら、実践に役立つポイントを紹介します。
「トンマナ」とは、「トーン&マナー(Tone & Manner)」の略語です。もともとは広告業界やデザイン業界で使用されてきた言葉で、現在ではWeb制作やマーケティング、SNS運用など幅広い分野で活用されています。
これらを合わせた「トーン&マナー」は、対象となる商品・サービス・ブランドが持つ世界観や伝えたいイメージを、視覚や言語を通じて一貫したかたちで表現するための方針やルールのことを指します。
例えば、企業が出す広告やSNS投稿、商品パッケージなどの「見た目」「言葉づかい」「雰囲気」に統一感があると、ブランドとしての信頼感や印象が高まります。逆に、バラバラな印象を与えると、消費者の混乱や不信感を招く恐れもあります。
トンマナは決してひとつの要素ではなく、いくつかの表現要素が組み合わさって形成されます。代表的な構成要素は以下の通りです。
トンマナは特に以下のような業務や制作物で活用されます。
また、最近では採用活動や社内報など、社内コミュニケーションでもトンマナの統一が重要視されるようになってきました。
例えば、ある企業がパンフレットでは丁寧語を使っているのに、Webサイトでは砕けた表現を使っていたら、受け手は「同じ会社なの?」と混乱する可能性があります。トンマナを統一することで、ブランドの「顔」をしっかりと覚えてもらえるようになります。
複数の媒体で発信していても、トンマナが統一されていれば、「あの会社の広告だ」とすぐに分かるようになります。
統一された印象は、信頼性やプロフェッショナリズムを高めます。特に金融や医療、教育分野では重要です。
デザイナーやライター、マーケターなど複数人が関わるプロジェクトでも、トンマナが明文化されていれば、作業にブレが出にくくなります。
一貫したデザインや言葉づかいは、ユーザーにとってもストレスが少なく、快適な利用体験につながります。
後から修正や手直しが発生しづらくなるため、トンマナの整備は長期的にはコスト削減にもつながります。
トンマナを実際に定める際は、以下のステップを踏むとよいでしょう。
実務では、トンマナを「ブランドガイドライン」「トーン&マナーガイド」「ビジュアルガイドライン」などの形でドキュメントにまとめておくと便利です。以下のような情報を含めると良いでしょう。
A. トンマナは、ブランディングを実現するための手段のひとつです。ブランディングが企業や商品の「価値づけ」や「個性作り」だとすれば、トンマナはその個性を「どう表現するか」という具体的なルールです。
A. 消費者に不信感や違和感を与えたり、ブランドとしての印象が弱くなったりする可能性があります。また、社内でも制作物の修正や手戻りが増えるなど非効率に。
A. 必須ではありませんが、InstagramやWebサイトなど複数チャネルを使う場合は、一定のトンマナがある方が印象が良くなります。個人でもガイドを簡単にまとめておくと役立ちます。
A. 「トーン・ボイス」は言葉づかいや発信する文章の調子に特化した概念で、トンマナの中の一部に含まれます。ビジュアル面も含むトンマナとはやや範囲が異なります。
トンマナは、見た目だけでなく、言葉や印象までを含めた「ブランドの表情」を作るための大切な指針です。現代では、オンライン・オフライン問わず多様なメディアを通じて情報発信が行われており、受け手の印象を左右する「一貫性」がより重要になっています。
だからこそ、企業やブランドはもちろん、個人事業主やチームでも「トンマナの明確化と共有」が求められているのです。