アメリカ南部に位置するアラバマ州の都市、タスカルーサ(Tuscaloosa)。その名前を聞いてピンとくる人は少ないかもしれませんが、実はアメリカ南部の歴史、教育、スポーツ、自然、文化が凝縮された、非常に魅力的な街なのです。本記事では、そんなタスカルーサについて、歴史的背景から見どころ、グルメ、生活環境、現地での体験談まで、詳しくご紹介します。
「タスカルーサ」というユニークな地名は、ネイティブ・アメリカン、チョクトー族の言葉に由来しています。チョクトー語で「tushka」は「戦士」、「lusa」は「黒い」を意味し、合わせて「黒い戦士」となります。この言葉は、16世紀にこの地を治めていたミシシッピ文化の酋長、「タスカルーサ酋長」にちなむものです。
タスカルーサ周辺には、古くから先住民族(ミシシッピ文化の人々)が定住しており、マウンド(人工の小山)などの遺跡も見られます。
1861年に始まった南北戦争では、南軍(アメリカ連合国)の一部としてアラバマ州は参戦しました。タスカルーサにあるアラバマ大学も南部の軍事学校として機能しており、1865年には連邦軍の攻撃によって大学の大部分が焼失しました。
20世紀に入ると、鉄道と高速道路の整備、工業化、教育機関の拡充によってタスカルーサは発展。現在では、教育と自動車産業(メルセデス・ベンツの工場など)を柱とする都市へと成長しました。
タスカルーサの象徴と言える存在が「アラバマ大学(University of Alabama)」です。
レンガ造りの伝統的な建物と緑豊かな芝生が印象的なキャンパスは、まるで映画のワンシーンのよう。観光客も自由に散策可能で、特に春や秋にはフォトスポットとしても人気です。
アラバマ大学の「クリムゾン・タイド(Crimson Tide)」は、全米でも屈指のアメリカンフットボール強豪校。ブライアント=デニー・スタジアムは10万人以上を収容でき、試合日には街全体が熱狂に包まれます。
アメリカンフットボールの試合がない日でも見学ツアーが開催されています。巨大なスタジアムを間近に見られるチャンスです。
地元アーティストの作品が展示・販売されるギャラリー。年に一度の「ケントック・フェスティバル」も大盛況。
夏場は地元の人々がボートや釣りを楽しむ人気のレジャースポット。
恐竜の化石やアラバマの地層、鉱物、動植物の標本が展示されており、子どもから大人まで楽しめます。
アラバマ州タスカルーサでは、アメリカ南部ならではの「ソウルフード(Southern Comfort Food)」を味わうことができます。素朴ながらも滋味あふれる料理の数々は、地元の人々の生活と密接に結びついており、訪れる者にとっても忘れられない味となるでしょう。
以下はタスカルーサでぜひ味わってほしい南部料理の代表格です:
アメリカ南部の川魚である「ナマズ(キャットフィッシュ)」を、コーンミールでカリッと揚げた一品。レモンやタルタルソースとともに提供されることが多く、外はサクサク、中はふっくらとした食感が特徴です。アラバマ大学の食堂でも週替わりメニューに登場します。
とうもろこしの粗挽きを煮込んだクリーミーな料理。朝食によく出され、チーズやバターを加えた「チーズグリッツ」や、エビと合わせた「シュリンプ&グリッツ」は絶品。大学キャンパス内の「Fresh Food Company」や「Lakeside Dining」などで提供されています。
完熟前の青いトマトにパン粉をつけて揚げた料理。外はカリッと、中はしっとり。軽い前菜やサンドイッチの具として人気です。タスカルーサの家庭料理レストラン「Five Bar」や「Southern Ale House」などで食べられます。
刻んだオクラに衣をつけて揚げた、南部の定番サイドディッシュ。オクラ特有の粘りとサクサク感のバランスが絶妙。ファミリー向けダイナー「City Café」や学生向け食堂にもあります。
ケールのような濃緑の葉野菜を、豚肉やベーコンとともにじっくり煮込んだ料理。味付けはシンプルですが、噛むほどに旨味が広がります。コーンブレッドと一緒に食べるのが定番スタイル。
甘じょっぱい味のコントラストが楽しめる、朝食とディナーが融合したような一皿。サクサクのフライドチキンにシロップをかけたワッフルが添えられます。大学周辺のブランチカフェ「Another Broken Egg Cafe」で人気。
南部料理(サザン・フード)の本場として、以下の様な人気レストランがあります。
大学近くには、インスタ映えするカフェやピザ屋も充実。スターバックスの数も驚くほど多く、留学生も馴染みやすい環境です。
住宅費が安く、学生用アパートから一軒家まで選択肢が豊富。大学キャンパス周辺は治安も比較的良好です。
市内は車社会ですが、大学周辺は徒歩や自転車でも生活可能。市バス(Tuscaloosa Transit System)も運行しています。
アラバマ大学には、日本人の学生も一定数おり、日本語クラスや国際交流イベントも充実しています。日系企業(あるいはメルセデス関連)で働く日本人駐在員も少なくありません。
ドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツはタスカルーサ郊外に大規模な工場を構えています(Mercedes-Benz U.S. International, Inc.)。
この工場の存在によって、地元のインフラ整備、雇用、そして教育機関との産学連携が進み、タスカルーサの発展に大きく貢献しています。
春〜初夏にかけて、竜巻が発生することがあります。特に2011年には大規模な竜巻が市街地を襲い、多くの犠牲者が出ました。現在では警報システムも整備され、備えはしっかりしています。
タスカルーサ市は、千葉県習志野市と1986年に姉妹都市提携を結んでいます。この姉妹都市関係は、単なる形式的なつながりではなく、教育や文化を通じた実質的な交流が長年にわたって続けられてきました。
提携のきっかけは、日米の教育交流プログラムを通じた市民レベルの交流であり、両市の市民・学生が互いの文化を理解し合う機会を持つことを目的としていました。特に、タスカルーサが「教育の街」としての一面を持ち、習志野市も教育機関が集まる文教都市であるという共通点が、自然な結びつきにつながったと考えられています。
このような姉妹都市関係は、政治や経済だけでなく「人と人との交流」によって国際理解を深めていく貴重なモデルです。グローバルな視点を育むうえでも、若い世代にとってこうした経験はかけがえのない財産となるでしょう。
近年では、オンラインを活用した交流の試みも行われており、物理的な距離を超えてつながる国際都市として、タスカルーサと習志野市の関係は今後も発展が期待されています。
タスカルーサという地名は、アメリカ映画に登場することで世界中の人々に知られる機会もありました。中でも有名なのが、1994年のアカデミー賞作品『フォレスト・ガンプ/一期一会(Forrest Gump)』です。
トムハンクス主演のこの映画で主人公フォレスト・ガンプがアラバマ大学にアメリカンフットボールの奨学金で入学するシーンがあります。彼は驚異的な足の速さでスカウトされ、アラバマ大学のチーム「クリムゾン・タイド(Crimson Tide)」に入団。実際に映画の中では、彼がブライアント=デニー・スタジアムで活躍する様子が描かれ、大学のロゴ入りのジャージを着た姿も印象的です。
フォレストが「アラバマ州のフットボールで全米を制した」と語る場面では、アラバマ大学の実際の強豪ぶりが物語の中でも象徴的に扱われています。タスカルーサが誇る大学とスポーツ文化が、映画を通じて全世界に紹介された瞬間でした。
なお、映画のほとんどのシーンは他州(主にジョージア州など)で撮影されていますが、「タスカルーサ」や「アラバマ大学」は物語の設定上登場し、フォレストが南部の誇りとして大学生活を語る場面は、タスカルーサの文化的存在感を象徴するものといえます。
タスカルーサは単なる大学町ではありません。歴史的背景、南部文化、豊かな自然、世界的企業の工場、活気ある大学生活、そして温かい人々。小さな街ながらも、多様な魅力にあふれています。
アメリカ南部の暮らしを体験したい方、留学や就職を検討している方、あるいはアメフト好きの方にもおすすめしたい都市です。
Q. アラバマ州は危険ではないの?
A. 州全体で見ると一部治安の悪い地域もありますが、タスカルーサ市内は大学周辺など比較的安全です。
Q. 日本からのアクセスは?
A. 最寄りの国際空港はバーミングハム空港(BHM)。アトランタ経由で日本からのアクセスも可能です。
Q. 英語が苦手でも大丈夫?
A. 大学周辺では留学生が多く、サポート体制も整っているため安心です。ただし、日常会話程度の英語力は必要です。