ユニバーサルデザイン・珍しい
ユニバーサルデザインの珍しい例集:世界の驚きのアイデアたち
今回は「ユニバーサルデザインの珍しい例」をテーマにお届けします。
ユニバーサルデザインと聞くと、段差をなくすスロープや多言語表記、大きな文字などを思い浮かべる方が多いでしょう。もちろんそれらも大切ですが、世界には「えっ、そんなことまで?」と驚かされるような、ちょっとユニークで面白くて珍しいユニバーサルデザインがたくさんあります。
今日は、日本だけでなく海外の例も含めて、珍しくて面白いユニバーサルデザインをじっくりご紹介します。普段の暮らしの中ではなかなか目にしないような例も多いので、ぜひ最後までお付き合いください!
ユニバーサルデザインとは?
まず簡単におさらいしておきましょう。
ユニバーサルデザインとは、障害の有無、年齢、性別、国籍などに関係なく「すべての人にとって使いやすいデザイン」を目指す考え方です。バリアフリーと混同されがちですが、バリアフリーが「障害者や高齢者が使えるよう障壁を取り除く」ことを目的にしているのに対し、ユニバーサルデザインは「最初から誰でも使いやすいようにする」点が大きな違いです。
珍しいユニバーサルデザインの世界へ!
それでは早速、ユニバーサルデザインの珍しい例を一つずつご紹介していきましょう!
① 音で色を伝える「色を聴くカメラ」
視覚障害者が「色」を楽しめるように作られたカメラがあります。
- カメラで撮影した対象物の色を解析し、それぞれの色を異なる音階に変換して知らせる仕組みです。
- 例えば赤なら高い音、青なら低い音というように、音で色を認識できるようになっています。
- 芸術活動にも利用され、絵を「聴く」という新しい体験が可能に。
② 匂いで案内する標識
海外の駅やショッピングモールで試みられているのが、「香り付きの案内板」です。
- 目が不自由な方が場所を判別できるよう、香りを使う取り組みです。
- たとえばA駅は柑橘系の香り、B駅はラベンダーの香り、という具合に匂いを変えることで、視覚以外の感覚で場所を特定できます。
- 視覚に頼らずとも「ここだ」とわかる工夫がユニークです。
③ 回転する点字ブロック
北欧などで導入されている試験的な取り組みです。
- 普通の点字ブロックはただ盛り上がっているだけですが、このタイプは小さなローラーが埋め込まれており、触ると軽く回転する仕組み。
- 進行方向を変える際など、ローラーの向きを変えることで、触覚情報として方向を強く伝えられるそうです。
④ カラーコントラストが変わる道路標識
夜間や雨の日、また霧の中では道路標識が見えづらくなります。
- 海外の一部では、光の量や天候によって標識の色合いを変える技術が導入されています。
- 晴天時は通常の色合い、夜間はLEDで強調表示、霧の日には文字を浮き上がらせるような色味に自動調整されます。
- 視覚に自信のない人でも安心して運転できる工夫ですね。
⑤ 触って分かるエレベーターボタンの形
一部の公共施設や高層ビルで導入されているのがこれ。
- ボタンの形状を階数ごとに変えることで、触るだけで何階かがわかる仕組みです。
- 例えば、偶数階は丸いボタン、奇数階は四角いボタン、最上階は三角のボタンなど。
- 視覚障害者に限らず、暗い場所でも便利です。
⑥ 音楽で手洗い時間をガイドする蛇口
新型コロナの影響で世界的に「手洗い」が注目される中で生まれたアイデアです。
- 水を出すと、20秒間音楽やメロディが流れる蛇口が開発されています。
- 小さな子どもや認知症の高齢者でも「曲が終わるまで洗う」というルールで自然に手洗いが習慣化できます。
⑦ ファッション性の高い補聴器
補聴器を「見えないように」ではなく「魅せるもの」と捉えたデザインもユニークです。
- スウェーデンやデンマークなどでは、補聴器をジュエリーやイヤーカフのようにデザインするブランドが増加。
- 若者の「つけたくない」という抵抗感を減らす狙いです。
⑧ 振動で障害物を知らせる靴
視覚障害者向けに開発された振動式靴も、ユニバーサルデザインの新たな一歩です。
- 靴の先端や側面に小型センサーが埋め込まれており、障害物を検知すると振動で知らせます。
- 白杖での探りきれない高所や頭上の障害物も検知可能なため、非常に革新的です。
⑨ 色なしで領域を示す地図
地図=カラフルなイメージですが、色覚多様性に配慮した地図が登場しています。
- 模様や線の太さ、点の密度などで領域を区別するため、色を使わずとも読み取り可能。
- 白黒コピーしても判読しやすく、行政や企業でも活用が進んでいます。
⑩ 違う手触りの階段
日本でも一部導入例が出てきている珍しい取り組みです。
- 各段の滑り止めの素材や凹凸を変えることで、階数や段数を感覚で把握できるようにしています。
- 特に夜間や停電時に大きな安全効果があります。
⑪ 高低差を音で知らせる横断歩道
ヨーロッパの一部の街では、横断歩道にこんな工夫が導入されています。
- 路面の凹凸や段差を、歩行者信号の音声アナウンスが具体的に知らせてくれるシステム。
- 「信号は青です。横断歩道に2センチの段差があります」と、視覚障害者だけでなく高齢者や旅行者にも安心です。
⑫ 点字付きのビール缶
オーストラリアでは、あるビール会社が視覚障害者にも手に取ってもらえるように、缶に点字を刻印しました。
- 「ビール」という表示だけでなく、ブランド名や種類(ラガー、エールなど)まで記載。
- 飲料だけでなく「お酒」だと明示することで、誤飲防止にもつながっています。
⑬ 多国語対応の話す薬袋
医療現場でもユニークなユニバーサルデザインの例があります。
- 調剤薬局で出される薬袋にICチップを内蔵。
- 袋を専用機械にかざすと、薬の飲み方や注意点を多言語で読み上げる仕組み。
- 日本でも少しずつ広がりつつあり、外国人観光客や在留者が増える現代ならではのニーズに応えています。
⑭ 絵文字で説明する公共サイン
文字だけでは伝わりづらい情報を、絵文字を使って表す公共サインもユニバーサルデザインの一環です。
- 例:空港の「機内持ち込み禁止物」案内に火の絵文字や液体をこぼす絵文字など。
- 言葉が読めなくても直感的に意味が分かり、子どもや外国人旅行者にも効果的です。
⑮ 地面が光る誘導サイン
韓国やドイツなどでは、歩きスマホによる事故防止策として、道路の縁にLEDライトを埋め込む取り組みが進んでいます。
- 歩行者信号と連動し、青なら地面が青く、赤なら赤く光る。
- 視線を下に向けたままでも信号を把握できるため、事故防止に役立ちます。
- スマホだけでなく、視覚に不安のある人にも有効。
⑯ 水平器付きのまな板
北欧で開発された面白いキッチン用品です。
- 片手しか使えない人や手が不自由な人が、まな板を水平に保てるように、まな板の下に水平器を内蔵。
- 斜めになっていないかを確認できるので、調理が安全かつ効率的です。
⑰ スポーツ用触覚ジャージ
スポーツの分野でも珍しいユニバーサルデザインが活用されています。
- 視覚障害者のために、ラグビーやサッカー用のジャージに振動パターンを埋め込む試みが進行中。
- チームメイトの位置やパスの方向を、振動で知らせる仕組みです。
- 将来的には健常者と障害者が混ざったスポーツにも活用が期待されています。
⑱ 文字盤が逆さまの時計
聴覚障害者の学校で導入されている珍しい時計があります。
- 教室の前にいる先生から見て正しく時刻が読めるよう、壁掛け時計の文字盤が逆さま。
- 手話で説明しながら時間を伝えるとき、先生が振り返る必要がないのがメリット。
- 小さな工夫ですが、教育現場での大きな助けになっています。
⑲ 視覚障害者向けの「香りの絵画」
海外の美術館で生まれた取り組みです。
- 視覚障害者が「美術を楽しむ」ため、絵画の各部分に異なる香りを仕込む試み。
- 空や海には爽やかな香り、大地にはウッディな香りなど、香りで景色を「鑑賞」する新しい発想です。
- 視覚障害者だけでなく、全ての来場者に人気の企画になっています。
⑳ ハンドルの形で車種を判別
ドイツのある自動車メーカーでは、車椅子ユーザー向けに車種ごとに微妙に異なるハンドル形状を用意しています。
- 同じブランドの車でも、グリップの太さや表面の凹凸が違う。
- 視覚に頼らず、自分の車を触って判別できるというアイデアです。
珍しいユニバーサルデザインが生まれる背景
ここまでたくさんの珍しい例を紹介しましたが、こうしたアイデアが生まれる背景には、いくつかの大きな流れがあります。
① 技術の進化
センサー技術やAIの発展が、以前は実現できなかったユニバーサルデザインを可能にしています。例えば振動する靴や話す薬袋は、テクノロジーの進歩があってこそ実用化されました。
② 高齢化社会
高齢化が進む中、「高齢者にも使いやすいデザイン」はユニバーサルデザインの重要課題です。段差解消や大きな表示だけでなく、記憶を助ける仕組みや五感を刺激するデザインが増えています。
③ 多文化共生
訪日外国人の増加や海外旅行の活性化により、多言語対応や言葉を使わないピクトグラム、絵文字などがますます重要になっています。
④ 障害のある人自身の発信
かつては「健常者が考えるユニバーサルデザイン」でしたが、近年は障害のある人自身がアイデアを発信する機会が増えました。自分が本当に困っていることを解決するリアルなアイデアが形になり、より実用的でユニークなデザインが増えています。
今後のユニバーサルデザインはどう進化する?
珍しいユニバーサルデザインは、今後ますます増えていくでしょう。
- バーチャル空間対応
→ メタバースの中でも障害者が使いやすいUI設計が進んでいます。
- AIによる個別対応
→ その人の障害特性や年齢に応じて、自動で最適化されるデザインが登場しつつあります。
- サステナビリティとの融合
→ 環境負荷の少ない素材を使いながら、ユニバーサルデザインを実現する取り組みが進んでいます。
まとめ
ユニバーサルデザインは「誰でも使える」という優しさだけでなく、使う人をワクワクさせる面白さも秘めています。
珍しい例を見ると、「不便さを解消する」だけでなく、人間の可能性を広げるデザインであることがよく分かりますね。
今後も、さらに驚くようなユニバーサルデザインが世界中で生まれることでしょう。