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外国人・なぜ起訴されない?

外国人・なぜ起訴されない?

外国人が起訴されない理由はあるのか? 日本の刑事司法における真実

「外国人は起訴されにくい」「外国人だと不起訴になりやすい」——。このような話を耳にすることがありますが、これは日本に暮らす外国籍の方々や、日本の刑事司法に関心を持つ人々にとって、非常に気になる疑問ではないでしょうか。

なぜ外国人は起訴されないのか?という疑問を持つ方も多いようすが、果たして、この言説は真実なのでしょうか? 日本の刑事司法において、外国人の起訴・不起訴はどのように扱われているのか、その実態と背景について深く掘り下げてみましょう。


「外国人だから起訴されにくい」は本当か? 法の下の平等の原則

まず、この疑問に対する直接的な答えから述べます。「外国人だから起訴されにくい、不起訴になりやすい」という明確な傾向は、統計データや日本の刑事司法の原則からは確認されていません。

日本の憲法は「法の下の平等」を謳っており、これは国籍、人種、性別、信条などによる差別の禁止を定めています。刑事司法においても、この原則は厳格に適用されます。つまり、事件が発生し、被疑者が特定された場合、その人物が日本人であろうと外国人であろうと、等しく捜査の対象となり、証拠に基づいて起訴・不起訴が判断されることになります。国籍が起訴・不起訴の判断基準になることは、原則としてありません。

では、なぜこのような「誤解」や「都市伝説」が広まってしまうのでしょうか? その背景には、いくつかの複雑な要因が絡み合っていると考えられます。


誤解を生む可能性のある複数の要因

「外国人は起訴されにくい」という誤解が生まれる背景には、個別のケースや、刑事手続きの特性、あるいは情報の受け取られ方が影響している可能性があります。具体的な要因を深掘りしてみましょう。

1. 言語の壁とコミュニケーションの課題

被疑者が日本語を理解できない場合、捜査機関(警察や検察)とのコミュニケーションに大きな困難が生じます。通訳を介した取り調べは必須となりますが、直接的な会話に比べて時間がかかり、言葉のニュアンスや文化的な背景が十分に伝わりにくいという課題を抱えています。

例えば、被疑者が自分の主張をうまく伝えられなかったり、逆に捜査側の意図を誤解してしまったりする可能性があります。また、通訳の質のばらつきもゼロではありません。このような状況は、捜査の進行を遅らせたり、被疑者の供述を得るのを難しくしたりすることがあります。結果として、捜査が長期化する、あるいは供述以外の客観的証拠の収集により多くの労力を要する、といったケースは考えられます。

しかし、これは直ちに「不起訴になりやすい」に繋がるわけではありません。むしろ、捜査機関はより慎重に、より客観的な証拠(物証、状況証拠など)を固める傾向にあるでしょう。供述が得にくいからといって、罪を犯した者が起訴されないということはありません。

2. 在留資格の問題と入管法との関連

不法滞在者や在留資格に問題がある外国人が事件を起こした場合、刑事手続きとは別に、出入国管理及び難民認定法(入管法)上の問題が生じます。刑事事件の被疑者となった外国人は、勾留中に在留資格の有無や退去強制の対象となるかどうかの審査も並行して進められることがあります。

軽微な事件や、被疑者が深く反省しており、かつ再犯のおそれが低いと判断された場合、検察は起訴猶予処分とすることがあります。しかし、その場合でも、在留資格のない外国人や在不法滞在の外国人は、刑事手続きの終了後、入管法に基づいて退去強制(強制送還)されるのが一般的です。

このようなケースにおいて、「刑事事件としては不起訴になったが、その後、強制送還された」という結果だけがクローズアップされ、「外国人は起訴されにくい」と誤解される原因となる可能性があります。実際には、刑事司法上の判断と、入管法上の行政処分は別個のものとして進められているのです。

 

3. 証拠収集の国際的困難性

外国人に関わる事件、特に被疑者や証人が国外にいる場合、証拠収集に困難が生じることは否定できません。例えば、海外にいる証人への聴取、海外の銀行口座情報の照会、国際的な組織犯罪における情報共有など、他国の司法機関との連携が不可欠となるケースがあります。

国際捜査共助の手続きは、時間と労力がかかります。また、各国の法制度や文化の違いから、必ずしも期待通りの証拠が得られない可能性もあります。このような事情により、捜査が長期化したり、最終的に十分な証拠が得られず、「証拠不十分」による不起訴となるケースも、ごく稀に発生する可能性はあります。

しかし、これはあくまで「証拠収集が困難であること」が原因であり、国籍そのものが不起訴の理由ではありません。日本の捜査機関は、国際的な協力体制を構築し、このような困難にも対応しようと努力しています。

4. 不起訴処分の多様な理由

不起訴処分には、嫌疑なし(犯罪の事実がなかったと認められる)、嫌疑不十分(犯罪の嫌疑はあるが、立証するに足る証拠が不十分)、そして起訴猶予(犯罪の嫌疑は十分あるが、諸般の事情を考慮して検察官の裁量で起訴しない)など、様々な理由があります。

これらの不起訴理由は、日本人であろうと外国人であろうと、等しく適用されます。例えば、被害者との間で示談が成立した場合、被疑者が深く反省しており、前科・前歴がないなどの情状酌量の余地がある場合、事件が極めて軽微である場合などには、起訴猶予処分となることがあります。これは、刑事司法における「可塑性」や「更生可能性」を重視する考え方に基づくものであり、国籍は関係ありません。

外国人に関わる事件で、たまたまこれらの不起訴理由に該当するケースがあったとしても、それが「外国人だから不起訴になりやすい」という法則を意味するものではありません。


検察統計から見る実態:データが示すもの

法務省が毎年発行している「犯罪白書」には、検察統計に関する詳細なデータが掲載されています。これらのデータを紐解くことで、「外国人は起訴されにくい」という言説の真偽をより客観的に検証することができます。

犯罪白書によると、来日外国人の刑法犯の起訴率は、日本人を含めた全終局処理人員と比較して、若干高い傾向にあることが示されています。例えば、近年では来日外国人の起訴率は30%台後半から40%台で推移しており、日本人の起訴率(30%台前半から中盤)と同等か、やや高い水準にあります。

一方、特別法犯(麻薬特例法、入管法など)においては、来日外国人の起訴率は日本人より低い、あるいは同程度の水準であるとされています。これは、入管法違反などの特別法犯の場合、悪質性や反復性がないと判断されれば、刑事罰よりも退去強制などの行政処分が優先されるケースがあるためと考えられます。

これらのデータは、「外国人は起訴されにくい」という一般的な認識とは逆の、**「むしろ同等か、場合によってはより厳しく処理されている」**という実態を示唆しています。日本の司法当局は、外国人の被疑事件に対しても、日本人と同様に、いや、むしろより慎重かつ厳格に証拠に基づいた処理を行っていると言えるでしょう。

ただし、ごく一部の例外として、日米地位協定の適用を受ける在日米軍関係者など、特定の国の軍人に関しては、日本の捜査権が一部制限される場合があります。その場合、事件の性質や状況によっては、日本の司法手続きではなく、米軍内部の司法手続きに委ねられることがあります。しかし、これはごく限定された特殊なケースであり、一般的な「外国人」全体に当てはまる話ではありません。


まとめ:公正な日本の刑事司法

「なぜ外国人は起訴されないのか」と思う人も多いようですが、「外国人は起訴されにくい」という言説は、日本の刑事司法の実態を正確に反映しているとは言えません。日本の司法は、国籍を問わず法の下の平等を原則とし、証拠に基づいて公正な判断を下しています。

誤解が生まれる背景には、言語の壁、在留資格の問題と入管法との関連、国際的な証拠収集の困難性、そして不起訴処分の多様な理由といった要因が複雑に絡み合っていると考えられます。しかし、これらの要因は、日本の司法が国籍によって不公平な扱いをしていることを意味するものではありません。むしろ、困難な状況下でも、適正な手続きと公平な判断を保障しようとする努力が払われています。

もし、そのような話を聞いたとしても、それは一部の誤解や、特殊な事例が拡大解釈されたものである可能性が高いでしょう。日本の刑事司法は、外国人に対しても、日本人と全く同じように、適正な手続きと公平な判断を保障しているのです。

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