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ギッフェン財の例

ギッフェン財の例

ギッフェン財の謎を解き明かす!本当に存在するのか?~例とともに徹底解説~

経済学の世界には、私たちの日常感覚や直感を大きく裏切る、不思議な現象が数多く存在します。その代表例の一つが「ギッフェン財」です。

通常、商品の価格が上がれば需要は減り、価格が下がれば需要は増えるというのが経済の基本ルール(これを「需要の法則」と呼びます)。しかしギッフェン財は、この常識を真っ向から覆す存在です。

ギッフェン財とは、価格が上昇すると、逆に需要が増えるという、一見すると矛盾した性質を持つ財のことを指します。

「値段が上がったのに、みんなもっと買うようになる」──この摩訶不思議な現象はいったいなぜ起こるのでしょうか?そして、ギッフェン財は本当に現実に存在するのでしょうか?ギッフェン財の例としてどのようなものがあるのでしょうか?

本記事では、ギッフェン財の定義や理屈、歴史的事例、さらには現代におけるギッフェン財の研究例まで詳しく解説します!


ギッフェン財とは何か?

ギッフェン財と呼ばれる財には、次の2つの厳格な条件があります。

1. 劣等財(Inferior Good)であること

  • 劣等財とは、所得が増加すると需要が減少する財のことです。
  • たとえば、所得が低いときは安い食パンを頻繁に買うけれど、所得が増えればパンではなく高級なお米や肉を選ぶ…といった場合の食パンが劣等財の例です。

2. 所得効果が代替効果を上回ること

  • 商品の価格が変わると、「代替効果」と「所得効果」という2つの影響が生じます。
    • 代替効果:価格が上がった財の代わりに、他の相対的に安い財に乗り換える動き。
    • 所得効果:価格が上がったことで、実質的な購買力(所得)が下がり、安価な商品しか買えなくなる影響。

ギッフェン財の場合、所得効果が代替効果を上回るため、価格が上がった結果、他に買えるものがなくなり、むしろその財をより多く買わざるを得なくなるのです。


なぜギッフェン財は直感に反するのか?

私たちの感覚では、価格が上がれば「他のものに変えよう」と考えるのが普通です。これは代替効果によるものです。

しかし、ギッフェン財では、所得効果が圧倒的に強く作用します。つまり、価格が上がると、その分、生活全体の余裕が奪われ、他のより高価な商品を買う余地がなくなり、結局その財に頼らざるを得ないのです。

まさに「高くなったのに買う量が増える」という奇妙な現象がここに起こります。


ギッフェン財の有名な例:ジャガイモ飢饉

ギッフェン財の最も有名で、しばしば唯一のギッフェン財の「実例」として語られるのが、19世紀のアイルランドのジャガイモ飢饉です。

  • 当時、アイルランドの貧しい人々にとってジャガイモは主食であり、所得に占める割合が非常に大きかったと考えられています。
  • 1840年代、ジャガイモの不作で価格が高騰しました。通常なら高くなったジャガイモの購入を控えるはずですが、むしろジャガイモの消費量が減少せず、増えたのではないかという説があります。

理由
ジャガイモの価格が上昇した結果、貧しい家庭の実質所得が大幅に減少し、それまでかろうじて買えていた肉やパンなどの他の食料品を買う余裕が完全になくなったためです。

結果、生き延びるためには、ますます高くなったジャガイモを食べざるを得なくなり、消費量がむしろ増加したのではないか、とされています。

ただし、この事例も実証的に確定されたわけではなく、**「本当にギッフェン財だったのか?」**という議論は経済学者の間で続いています。


ギッフェン財は本当に存在するのか?

ギッフェン財は理論的には存在しますが、現実世界で明確に確認された事例は非常に稀です。そのためギッフェン財の例は数的に限られています。

ギッフェン財が現実に観察されにくい理由は次の通りです。

  • 所得に占める割合が大きい劣等財でなければならない
    → 現代では生活水準の向上や社会保障制度の整備により、こうした財が少なくなっています。
  • 代替財が存在する
    → ほとんどの商品には代わりになる商品があり、価格が上がれば乗り換えが起きやすいです。

そのため、経済学者の多くは「理論上は存在しうるが、現実世界では極めてまれ」という立場を取っています。


ジャガイモ以外のギッフェン財の例は?

ギッフェン財とされる例は非常に少ないものの、いくつかの興味深い事例や研究があります。


中国の主食(米・麺)

近年、ハーバード大学の経済学者ロバート・イェンセンとノーラン・ミラーが、中国の一部の貧困地域における米や麺(小麦粉)がギッフェン財の挙動を示すという研究結果を発表しています。

  • 調査結果によると、貧しい家庭では米や麺がカロリー摂取の主な源。
  • 米の価格を下げる補助金を実験的に与えたところ、かえって米の消費量が減少したという意外な結果が得られました。
  • 浮いたお金で、より多様な食品(肉や野菜など)を購入するようになったためです。

これは、米が値下がりすると、むしろ消費が減るというギッフェン財的な挙動の強力な証拠とされています。


戦時中や飢饉時の粗悪な主食

極度の貧困や食糧難の状況下では、他の食品に代替できない粗悪な主食がギッフェン財となる可能性があります。

  • パン(特に粗悪な品質のもの)
    貧しい人々にとって、粗悪なパンが主食であり、他に安価な選択肢がない場合、高価な肉や野菜を買う余裕はなく、価格が上がってもパンの消費を減らせないことが考えられます。
  • サツマイモやカボチャ
    戦後日本の食糧難の時代には、サツマイモやカボチャが重要なカロリー源であり、価格が上がってもむしろ消費が増えたのではないかという研究もあります。

その他の理論的な可能性

他にも、理論的にギッフェン財になる可能性が指摘されている例があります。

  • ケロシン(灯油)
    過去には、貧しい家庭の暖房用燃料としてケロシンがギッフェン財になる可能性があると議論されました。
  • 政府債
    特殊な金融市場の条件下で、政府債がギッフェン財的な動きを示す可能性も理論上考えられています。

ギッフェン財が現代社会で観察されにくい理由

改めて整理すると、ギッフェン財の例が現実世界で稀な理由は以下の通りです。

  • 現代の生活水準が向上し、特定の単一の主食に強く依存する層が少ない。
  • 代替財が多様化しており、価格上昇に対して他の商品への乗り換えが容易。
  • 社会保障や支援制度が整っており、飢饉のような極端な状況が少なくなっている。

つまり、ギッフェン財はあくまでも「極度に貧しい環境」でこそ起こりうる現象と言えるのです。


まとめ:ギッフェン財が示す経済の奥深さ

  • ギッフェン財とは、価格が上がると需要が増えるという珍しい財。
  • 条件を満たすのは、所得に占める割合が大きい劣等財かつ代替財がほとんどないもの。
  • ジャガイモ飢饉が最も有名だが、実証は難しく、現実世界ではほとんど確認されない。
  • 近年の中国の米や麺の研究が、現代における貴重な観察例となっている。

ギッフェン財は、経済学が単純な「価格と需要」の話にとどまらず、人々の生活や社会状況、貧困問題などの深い要素と密接に結びついていることを示しています。

まさに経済の奥深さを象徴する存在といえるでしょう。みなさんもニュースや歴史を目にするとき、「もしかしてギッフェン財的な現象が起きていないか?」と想像してみるのも面白いかもしれません!

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