中東情勢が再び緊迫しています。アメリカによるイランの核施設攻撃という衝撃的なニュースが飛び込んできた今、世界中の注目はホルムズ海峡に集まっています。この海の道は、私たち日本の生活にも直結する「生命線」とも言える重要なルート。もしホルムズ海峡がイランによって封鎖されたら、日本にどのような影響があるのでしょうか?その可能性と、私たちにできることを考えてみましょう。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とアラビア海を結ぶ非常に狭い海峡です。世界の原油輸送量の約20%、そして液化天然ガス(LNG)の約3分の1がここを通過すると言われています。
特に日本は、原油輸入の約8割、LNGの約2割弱を中東に依存しており、この海峡が封鎖されれば、文字通り「死活問題」となります。
イランは過去にも、自国への経済制裁などへの対抗措置として、ホルムズ海峡の封鎖を示唆してきました。そして今回のアメリカによる核施設攻撃は、イランが報復に出る可能性を大きく高めています。
イランがホルムズ海峡を封鎖する事はあるのでしょうか?
ホルムズ海峡が完全に封鎖されるという事態は、イラン自身も経済的に大きな打撃を受けるため、可能性としては低いという見方もあります。しかし、状況によっては以下のようなシナリオが考えられます。
外交的な緊張が高まり、散発的な威嚇行動が見られるシナリオです。この場合でも、市場の不安から原油価格は高騰する可能性があります。
一時的に航行が妨げられたり、特定の船舶が攻撃の対象になったりする可能性です。機雷の敷設や小型艇による嫌がらせ、あるいは対艦ミサイルによる攻撃なども考えられます。この場合、原油価格はさらに上昇し、世界の経済活動に大きな影響を与えます。
最悪のシナリオです。ホルムズ海峡が完全に閉鎖され、中東からの原油・LNG輸送がストップします。これは世界の経済に壊滅的な影響を与え、国際社会全体が大混乱に陥る可能性があります。
イランがホルムズ海峡を封鎖すれば中東からの原油やLNGが届かなくなり、国内のエネルギー供給が滞ります。ガソリン、灯油、電気、ガスなど、あらゆるエネルギー価格が急騰し、私たちの生活に直接的な打撃を与えます。
1973年の第一次石油危機では、原油価格が4倍に高騰し、日本経済は大混乱に陥りました。
エネルギー価格の高騰は、企業の生産コストを押し上げ、物価上昇(インフレ)を引き起こします。工場は操業を縮小せざるを得なくなり、物流も混乱します。結果として、日本全体の経済成長は大きく鈍化し、GDPは大きく押し下げられるでしょう。
物価上昇により家計の負担が増大し、生活必需品も値上がりする可能性があります。場合によっては、エネルギー使用の制限といった措置がとられることも考えられます。
現在、日本は石油備蓄法に基づき、約225日分の石油を備蓄しています。これは短期的な供給途絶には対応できる量ですが、長期的な封鎖となれば、この備蓄もいずれは底をつきます。
今回の事態は、日本のエネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。中東情勢の安定化に向けた外交努力はもちろん重要ですが、同時に私たち自身も、以下のような課題に真剣に取り組む必要があります。
「ホルムズ海峡封鎖はイランにとって“最後の切り札”であり、使えば自国にも致命的な影響を与える。よって『脅し』として使われても、実行される可能性は低い」と見ている有識者もいます。
今回のホルムズ海峡の緊迫は、遠い中東の出来事では済まされない、私たち自身の問題であることを改めて認識させてくれます。
日々のニュースに目を向け、世界の動きに関心を持つことが第一歩です。そして、私たち一人ひとりがエネルギーを大切にし、持続可能な社会の実現に向けて行動することが、日本の未来を守ることにつながるのではないでしょうか。