メジャーリーグ(MLB)のニュースを見ていると、「ウエーバー措置にかけられた」「ウエーバーを通過してFAへ」といった表現が登場することがあります。特に日本人選手が関係する場面では注目されがちなこの「ウエーバー」とは、いったい何なのでしょうか?
本記事では、MLBのウエーバー制度の基本から、なぜ選手がこの手続きにかけられるのか、そしてその後の流れまで、わかりやすく解説します。また、実際にウエーバー措置を経験した選手の具体例や、制度が持つ戦略的意味まで踏み込んでご紹介します。
ウエーバーとは、簡単に言えば「他球団にこの選手を獲得するチャンスを与える制度」です。日本のプロ野球には存在しないMLB独特の制度であり、選手の去就や球団の戦略に大きく関わる仕組みです。選手をメジャーの40人ロースターから外す際には、単に外すだけでなく、他球団に通知し、獲得の意思を募る手順が必須となっています。
MLBでは選手を40人のロースターから外す場合、**DFA(Designated for Assignment)**と呼ばれる手続きをまず経ます。これは直訳すると「指定解除」という意味で、チームが選手の登録を一時的に保留し、その間にトレードやマイナー降格、ウエーバー公示などの処遇を決めるというものです。多くの場合、ここからウエーバーにかけられる流れが続きます。
選手がDFAされてからウエーバーを通過するまでの流れは以下のようになります:
この一連の流れは、球団にとってはロースター整理のための重要な手段であり、選手にとっては再スタートや別チームへの移籍のチャンスでもあります。
また、選手が10年近いキャリアを持っていても、成績不振や故障によって戦力外通告を受けることは日常茶飯事です。そのため、この制度は実力主義のMLBならではの厳しさを象徴しているとも言えるでしょう。
球団が選手をウエーバーにかける理由は主に以下の3つです。
たとえば、年俸1000万ドルクラスのベテラン投手が好成績を残せず、若手と比較してパフォーマンス面で見劣りしている場合、コストと将来性を天秤にかけてウエーバーにかけるという判断がなされることがあります。
また、40人ロースターに枠を空ける必要がある場合、例えば新たな有望選手を昇格させたい時などにも、既存選手をウエーバーにかけてスペースを確保します。これはシーズン中でも頻繁に行われており、チーム戦略の一環です。
たとえば、ある選手がまだ25歳で防御率は高めでも三振率が良いというようなケースでは、「化ける可能性がある」と判断され、クレームされやすくなります。特に再建中の球団や投手陣に課題を抱える球団にとっては貴重な補強の機会です。
日本人選手も例外ではありません。近年では、
など、多くのケースで話題になりました。特に日本国内では、ウエーバーという言葉に馴染みが薄いため、「戦力外」というネガティブな印象だけが先行しがちですが、実際には選手が自ら望む新天地へ移るための前段階であることも多いです。
さらに、ウエーバー通過後に日本復帰を決断する選手もいます。これは、契約の自由度が高まることでNPB球団との交渉がしやすくなるためです。
MLBには、出場日数に応じて支給される年金制度が存在します。例えば、通算10年を満たすと終身年金の資格が得られるため、ベテラン選手にとっては「あと少し」の出場機会が命運を分けることもあるのです。
そのため、たとえ今季の成績が芳しくなくとも、残りシーズンでロースターにとどまることで将来的な経済的保障を確保しようとする選手も少なくありません。
また、選手と球団との契約によっては、ウエーバー通過後にマイナー契約へ移行する提案が行われることもあります。選手はこれを拒否して完全FAとなることもできますし、逆に「再起を目指すための再調整」としてマイナー契約を受け入れる場合もあります。
メジャーリーグのウエーバー制度は、単なる戦力外ではなく、他球団にチャンスを与えたうえで選手の行き先を決める仕組みです。
📝 要点まとめ:
MLBを深く理解するためには、選手の移籍情報や成績だけでなく、こうした制度の仕組みを知っておくことが不可欠です。ウエーバー制度は厳しさの象徴である一方、選手と球団双方にとって新たな可能性を広げる制度でもあります。
今後もウエーバーの行方が、日米の野球界において大きな関心事となるでしょう。