日本では結婚すると、夫婦が同じ姓(苗字)を名乗ることが法律で定められています。多くの人が当たり前と受け入れているこの制度ですが、「夫婦別姓」を求める声も年々強まってきました。
「なぜ、夫婦別姓にそこまでこだわるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。この記事では、夫婦別姓にこだわる理由と、その背後にある思いや社会的背景について解説します。
夫婦別姓とは、結婚後もそれぞれが結婚前の名字を名乗り続けることができる制度です。現在の日本の民法では、夫婦は同じ姓を名乗ることが義務とされており、その9割以上が「夫の姓」を選択しています。一方で、多くの国では、夫婦が同姓か別姓かを自由に選ぶことができるのが一般的です。
例えば、アメリカでは結婚後も旧姓を名乗る人は多く、フランスでは夫婦別姓が法的に保障されています。これらの国々では「姓」は個人の権利として扱われており、日本のように「家」を単位にする考え方とは異なる文化的背景があります。
では、なぜ夫婦別姓にこだわる人達がいるのでしょうか?
以下のような理由から、別姓を望む人々は少なくありません。
結婚して姓が変わることで、自分がこれまで築いてきた名前・キャリア・人間関係がリセットされてしまうと感じる人がいます。特に、仕事上の名前や肩書きが浸透している場合、姓の変更は大きな障害になり得ます。
例:弁護士、医師、研究者、作家など、名前が「信用」や「実績」と直結する職業の人ほどこの影響は深刻です。
また、SNSや学術論文、資格証明書などにも旧姓が使用されていることが多く、変更による煩雑さも見逃せません。
日本の同姓制度は、戦前の「家制度」からの名残という面もあります。結婚=どちらかの家に「入る」という考えに反発を感じ、夫婦は対等であるべきだと考える人たちが別姓を選びたいと望みます。
このような家制度的な価値観が、現代の多様な家族観とずれてきているという指摘もあります。事実婚や同性婚を含む多様なパートナーシップが社会に広がる中、選択肢のなさは不自然に映るのです。
日本では、結婚後に「夫の姓」を選ぶ割合が圧倒的に高く、女性のほうが改姓するケースが多いです。これは、男女平等の観点から問題視されています。姓の選択を自由にすることで、性別に基づく不均衡を是正できるという主張です。
実際、「夫の姓を選ばないと周囲に不自然と思われる」「義両親からの圧力がある」など、女性側に心理的負担がかかるケースが多く報告されています。
外国人との結婚や帰化したパートナーなど、姓の取り扱いが複雑になるケースでは、夫婦別姓の方が自然な選択肢となる場合があります。
たとえば、外国籍の配偶者の姓を選ぶことで手続きが煩雑になったり、国によっては戸籍との整合性に問題が出たりすることもあります。そのため、柔軟な対応が求められているのです。
もちろん、夫婦別姓には反対意見もあります。
といった声があり、特に保守的な価値観を持つ人々からは根強い反発があります。
しかし、既に別姓で暮らしている事実婚家庭や、名字の違う親子を育てている家庭も多く存在し、大きなトラブルは起きていません。絆や信頼は姓ではなく、日々のコミュニケーションと関係性によって築かれていくものだという理解も広まりつつあります。
多くの国(アメリカ、フランス、ドイツ、韓国など)では、夫婦が同姓か別姓かを選べるのが一般的です。一方で、日本はG7で唯一「夫婦同姓」が法律で義務づけられている国となっています。
2015年には最高裁が「夫婦同姓は合憲」との判断を下しましたが、国会では「選択的夫婦別姓」の導入を求める議論が続いています。世論調査でも、特に若い世代を中心に、別姓を選べるようにしてほしいという声が年々増えています。
夫婦別姓を求める人たちの多くは、「全員が別姓にすべき」と言っているわけではありません。ただ、「同姓か別姓か、自分たちで自由に選べるようにしてほしい」と願っているのです。
この「選択の自由」が保障されることで、家庭の在り方や結婚に対する多様な価値観がより尊重される社会に近づいていくのではないでしょうか。
Q: 子どもの姓はどうするの?
A: 選択的夫婦別姓が導入されれば、子どもの姓についても夫婦で協議して決める形になると想定されています。国によっては、子どもが成長後に自分で選ぶことも可能な制度もあります。
Q: 夫婦別姓にすると家族の絆は薄れる?
A: 絆は姓ではなく、日々の関係性や信頼によって築かれるものです。名字が違っても絆を深めている家族はたくさんいますし、名字が同じでも関係が希薄な家庭もあるのが現実です。
家族の形や価値観が多様化する現代、夫婦別姓という選択肢があることは、より豊かな生き方の実現に向けた第一歩かもしれません。